厳しい現場でも、続いた理由は何か?
3月10日の『1日で"辞めたい"と思う理由』の続きを書く予定が、大震災の影響で書くタイミングを逸していました。今日は、続きとして新入社員(或いは若手社員)を育成する際のヒントをご紹介します。震災後で、上司や先輩自身も多忙を極め、OJTがしっかり出来ない環境にあってもできることに焦点を当てます。
新しいアルバイト先
ファミレスを1日で辞めてから、それでもレストランでアルバイトをしたくてあちこち探していました。その中で見つけたのが、1駅離れた駅前にある、某ホテルのレジャー施設に付随するレストラン。レストランは、道路に面した部分が全てガラス張りで、レストラン内は海をイメージした内装で、明るくオシャレな感じでした。
ホテルの社員が運営しているレストランのため、制服はホテルと同じ仕様。マネージャークラスは黒服で、パリッとした印象。女性の制服も清楚でかわいらしいものです。一目で気に入ったので、早速応募することにしました。すると、レストランのマネージャーと、総務担当の(まるでアイドルのように美人)女性に面接をしていただきました。面接でお会いしたお二人ともが穏やかだったことにとてもほっとし、何としてもそこで働きたいと思っていました。その後、採否の連絡をいただき、「それでは、~日から来てください」と言われた時、飛び上がるほど嬉しかったことを今でも鮮明に覚えています。
アルバイト初日の厳しい現実
アルバイト初日は、サブマネージャー(黒服)の方が、言われた時間よりも早くから現場に居て、「今日は、オープン前の準備の仕方と、ランチタイムの水出し、食べたお皿などを下げるのをお教えするので、それを覚えて下さい」と言い、テキパキと伝えて下さいました。ファミレスの時にビデオで教えていたようなことは、1つ1つ説明しながら伝えてくれます。その際、「1日で覚えられないと思うので、最初は出来ることだけしっかりやってくれればいいですよ。ただ、先輩の動きを見て、覚える努力だけはしてください」と言いました。
その言葉に、"1度で覚えなきゃ"と緊張していた気持ちもほぐれ、「頑張ろう」という気持ちが湧いていました。
11時になると、ランチタイムのために働く先輩たちが続々と出勤し、内心、「このレストランにこんなに人が必要なの?」と思うほど、フロアーに人が沢山いました。
しかし、11:30を過ぎたあたりから続々とお客様が来店され、12:00すぎには満席に。正直、あまりの忙しさに、自分が何をやっているのか認識できないほどです。そんな時、人手が薄くなっていたので、お皿にご飯を盛るのを手伝っていると、女性の先輩が「誰これ盛っったの?こんなに汚い盛り方で、お客様に出せないでしょう!ご飯は、こう盛るのよ!」といって、私が持っていたお皿を取り上げ、もくもくとご飯を盛りはじめました。
その勢いと口調の強さに呆然としていると、「そこでぼーっとしてるなら、他にやること探して!できることあるだろ!お客様を待たせるな!」と、サブマネージャーが私を叱責します。もう、頭がいっぱいになり、とりあえず言われていた"お皿を下げる仕事"に集中することにしました。
そして、気がつくとアルバイト終了の14時。その時にはもうへとへとになり、朦朧としながら帰り支度を済ませ、帰路につくことに。帰りながら感じたことは、"レストランで働く人達って、何で言葉がキツイんだろう?"ということでした。前回のファミレスでもそうでしたが、お客様への接し方と、社内のメンバーに対する接し方があまりにも違うのです。それに違和感を覚えたのかもしれません。
厳しくても"辞めたい"とは考えなかった理由の考察
しかし、ファミレスは"1日で辞めたい"と、思ったものの、今回は"頑張ろう"といった気持ちが芽生えていました。その違いが何から生まれたものか・・・その時に認識していたわけではなかったのですが、あらためて考えてみると次の違いがありました。
それは、彼らは私を厳しく注意したり、叱ったりしましたが、私の人格を否定していたのではなく、"お客様にとって"という姿勢が常に一貫していたのでした。また、お客様がいらっしゃるフロアーと、準備をするバックヤードでは、彼らの動きも言葉の厳しさも全く違っていましたが、お客様に接する際は、実に丁寧で、常に"お客様のご要望を満たして差し上げたい"という言動に溢れていたのでした。
今思うと、わからないながらもその姿勢は伝わり、"何かを学びたい"と、思う気持ちが芽生えていたのかもしれません。
この日をスタートに私はこのレストランで学生時代のほとんどを過ごし、"プロとしての仕事"の基本を学ぶことになります。
新入社員に伝えておくこと、先輩社員がやるべきこと
新入社員研修で、「今は震災の影響で、しっかり仕事を教えてあげたくても、上司や先輩も教える時間がないかもしれない。そんな時は、上司や先輩の仕事を見ながら覚えて、出来ることを探して、"~~やっておきましょうか?"みたいな感じで確認して、上司や先輩を助けてあげてね」と伝えると、澄んだ目で明るく「そうします!」と答えてくれます。
彼らも世の中が大変なことは良く分かっているのです。だからこそ"役に立ちたい"という気持ちは明確に持っています。
丁寧に教えることが出来なくても、見てほしいポイントを伝え、真剣に取り組む姿を見せることが、OJTの第一歩かもしれません。"教えるゆとりがない"と感じていらっしゃる方、試してみてくださいね。