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日本や日本人って何だろう。改めて「海外」を考えるヒントを身近な話題から

事業仕分けがイマイチなのは、日本人にとって相対評価のフレームワーク活用が苦手だからか?

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事業仕分けの第3弾(特別会計編)が、先週終了した。

「スーパー堤防」の話など、新聞やTVのニュースで見聞きしただけだが、「突っ込むほうも守るほうも、もっと定量的な議論ができるだろう。。」と言いたくなってしまった。

各論に関してはここではコメントしないが、そもそも「ムダの判断」に関する判断基準やフレームワークはどうなっているのだろうか?

「判断基準」など実はどこにもないような気がして、怖さ半分、勿体無さ半分。

善し悪しはさておき、フレームワークをベースにした議論を行うことで、もっと納得感・公平感・スピード感が出てくる。
同じことを感じている人も学者評論家の方々など結構いるようだ。ただ、これらを見ても、学者の方々の反応は、まだまだ定性的な基準しか考えられていないようにも見える。

それはそれで必要条件なのだが、そもそもこの種の仕分けを、コンサルティング会社が民間企業の中でやると、「選択と集中」という議論になる。

具体的な方法論としては、ポートフォリオ・マトリクスとか、事業単位のROIで判定するような手法になってくる。GEは、かって「世界でNo1、No2以内になれないものは撤退」という基準を設けた。

ここで重要なのは、最終的には相対評価である。

この事業とあの事業と一体どちらが優先度が高いのか。。
これは「経営の意思」すなわち「国家戦略や自治体戦略」の反映である。

「歳出 xxx億円カット」という目標値に対して、絶対評価だけで評価していると、客観的には見えるものの往々にして目標値には届かない。第3弾ともなると、その辺の限界点が見えてきてしまい、「どうせ今度も。。」的な空虚感も漂い始めている。

本気で目標に届かせるには、「優先度に則り、目標値に届くまで淡々とカットする」という冷酷さが必要になる有名大学の入学試験では、センター試験は絶対評価で足切りに用いられるが、「予算」とか「定数」で決まっている中にはめ込むのは相対評価だ。そういう意味では、事業仕分けについても、個別事業の是非を定性的な絶対評価だけで行っている状況では、「まだまだ予選レベルをいつまでやるのだろう」という気がする。

一つの典型例が、意思決定ツールとしてのポートフォリオの使い方に見られると感じる。コンサルティング会社に入社直後、仕事の段取りや時間配分、プロジェクトにおけるスタッフ配置などにまで使える単純な普遍的フレームワークとして教えられたのが、「緊急度と重要度」のマトリクスである。

緊急度・重要度ともに高いものが最上位、ともに低いものが最下位という優先順位付けには誰もが納得するであろう。「緊急度=高、重要度=低」と「緊急度=低、重要度=高」の優先度は、現実的には散々先送りした結果、残り時間が少なくなって緊急度が優先しがちである。

 

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現実的な問題は、目の前に溜まっている様々な案件を、この2X2の箱に振り分けていく仕分け作業での「思い切り」である。このマトリクスは、優先度に白黒をつけて意思決定することが目的であるため、単純化して、「高いか低いか」の二者択一を問うことに意味がある。そうすることで、少なくとも、最高重要度、最低重要度、中間の3段階くらいに全体を仕分けることが可能になる。

細部にこだわる完全主義者的な日本人に対しては、もう少しアナログ的に、どのくらいの重要度か緊急度かを3段階評価、5段階評価などで細分化すると、より精度の高そうな優先順位付けが可能になる。さらに、この段階的評価の判断基準として5段階×5項目くらいを設定し、「21-25点がAクラス、16-20点がBクラス」などと評点していく方法論に発展していく。

元々は主観的な判断でも、分解して積み上げれば客観性が産まれてくる」という発想に欧米的な論理性を感じる。こういう手法を用いることで、先にルールや手法を決めると「自動的に意思決定がいやでも進む。少なくともデフォルトの優先度が決まる」ようになる。

ここで注意しなければいけないのは、日本人がこの種の評点作業をやると、「わざと区別を避けるように点数をつける」というケースが出てくることだ。

セミナーのアンケートなどでも「非常に良い、やや良い、普通、やや悪い、悪い」という5段階評価にすると、奥ゆかしき日本人は「やや良い」の4点に分布が偏る傾向がある。その結果、緊急度と重要度のマトリクスの中央からやや右上に全てが固まってしまうことになる。仕分けるためにやっているのに、仕分け難いように評点をつけるのは”抵抗勢力”がやることである。

事業ポートフォリオの優先度判断において、コンサルタントがこの種の議論の仲介役や対面インタビューを行うことがある。このとき、彼らは、全体のバランスを見ながら、「この業務とあの業務と重要性が、本当に同じ4点の評価ですか?」と見直しを迫ることがある。「そもそも優先度を分類するためにやっている」という目的意識がはっきりしているので、1点から5点満点まで、できるだけバラけて分布した評価になるように、意識を働かせているのである。

ここらで、事業仕分けの方法についても、もう一歩切り込んだアプローチが取り入れられないものだろうか。

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