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日本や日本人って何だろう。改めて「海外」を考えるヒントを身近な話題から

Global Executive MBAコースのあれこれ

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日経ビジネスの9/13号に以下のような広告が出ていましたが、9/29 Chicago 大学 Executive MBA コース の 説明会が日本で開催されます。

Chicagobooth_2010_info_session これ、実は私が通っていたコースの日本における入学希望者向け説明会です。

例年は日本の初回が11月くらいであったのだが、今回は1回目が9月末、2回目が1月末と随分前倒しにされています。

リーマンショック後、「暇になったので、これを機会にお勉強」という流れで、世界的には入学希望者が増えているらしいです。円高の今、日本人にはチャンスなので、早めに決心してもらおうという親切心も働いているようです。

ご興味ある方は、是非ご参加ください。

私自身も経験談を語る卒業生として、おそらく参加することになると思います。

興味が湧くかどうか決めるには、以下を読んで見てやってください。















======= 私がシカゴ大学Global MBAコースを選んだ理由 ==========

実は、最近、欧米のビジネス・スクールが「海外進出」して(日本以外の)アジアに分校を設置する動きが増えてきている。

私が通っていたコースも、その流れに沿ったものだ。
なぜシカゴ大学を選んだか?という観点から、ちょっとご紹介をしてみたい。

理由1): カリキュラムのスケジュールがフレキシブルで、仕事との両立が最も可能に思われた

ホーム・キャンパスはシンガポールにある。時差が少ないおかげで、週末に夜行便で飛んでいき、5週間に一度、月曜から土曜まで現地にいるだけで対応が可能だ。
会社を休むのは連続5日間まで。
これなら、有給休暇や休日などをやりくりしたり、会社の定例会議も電話会議で出席するなどしてなんとかやりくりできた。
科目ごとの合否(単位の取得)は、Executiveコースには珍しくペーパーテストでの結果が中心である。
したがって、出席を強要されることなく、最悪授業に出なくても試験さえ得点をとれば単位が取れるというのも、多忙なExecutive向けであった。

さらにロンドンにも分校があり、本校のあるシカゴと合わせて、世界の3拠点で同じカリキュラムが少しずつ時間をずらして展開されている。そのため、どうしても会社の業務と都合がつかないときには、同じ内容の授業や試験を、別の地域で振り替え受講できるというflexibilityがある。

シンガポールと日本とは1時間の時差があるため、朝の授業前=日本の朝イチ会議、昼食時=日本の午後イチ会議という感じで、電話会議を最大限に利用した。

また、キャンパス内部には100Mbsでインターネットに出られる無線ブロードバンドが行き渡っているので、授業に出ながら会社のメールやインスタントメッセージで連絡を取り合うことも頻繁であった。


理由2): 英語以外のスキルでサバイバルできる可能性が高かった

シカゴ大学は、金融工学・マクロ経済、政策立案などで有名だが、そのベースになっているのは数学である。もちろん英語は必須であるが、数学は英語に負けず劣らず「グローバルで生き抜くための武器である」ということを痛感したのも、ここでの経験である。

「non-nativeには英語力は多くを期待しない」という明確な方針のようで、diversityを重視した学生の採用が行われており、エンジニア系の知識を持った方にはオススメである。

私の同級生では、IT関係の企業だけでも、IBM、Microsoft、Oracle、Symantec、DELL、HPなどの社員が参加しており、「SAPがいたら、IT industry all starsだな」などと冗談を言っていた。

なお、こちらのサイトによると、「non-nativeに対してTOEFLスコア不要」と明確に記述されている。これは、ここ数年の傾向だ。

  • 参加して英語力に不自由しそうかどうかは、入学審査の面接で判断する。
  • Diversityという観点からも、授業に参加して付加価値をつけられる人物であれば(生徒は授業料を払ってくれるお客様でもあるので)、拒否はしない

という姿勢が貫かれている。

理由3):カリキュラム内容が時代に合致してタイムリー

入学後に実体験してわかったことだが、カリキュラムの内容そのものについても、向こうの大学はflexibleだ。

ちょうど私の在学中にリーマンショックに見舞われたのだが、「緊急講演会」と称してノーベル経済学賞受賞者からバブルの反省と想定される対策を聞くチャンスがあったり、授業内容が実物経済の比重を高めるなどダイナミックに変化していく様を体験した。

中間試験や期末試験の問題も、事業会社への投資と金融資産への投資で事業会社を優先させるケースが増えたり、倒産した会社の更正法適用に伴う資産処理などの話が急激に増えてきた。

最近は、金融以外の分野として「行動経済学とかLeadership」のような、心理学とか組織論を大きな柱に育てようとしている意気込みを感じる。

例えば、Situational Leadership という分野で有名なポール・ハーシーはシカゴ大学のOBでもあり、彼の授業を、直接、生で受講することができた。

他には、マッキンゼー賞を受賞しているChristopher Hseeの「幸福論」に関するコースも、顧客満足度・従業員満足度を考えるにあたって、とても有意義なものであった。
条件付き確率論、リスク回避論などから始まって、先入観がもたらす期待値と満足度の影響を授業中の実体験で理解させる手法など、非常に新鮮な体験であった。

振り返ってみれば、私にとっては実にマッチしたカリキュラムだったと思う。

あまり自分の出身校の話ばかりでも申し訳ないので、自分が学校を選ぶにあたって調べてみた他のコースについても、最近の事情を触れておこう。

他にも幾つか正式に学位が取れる Global Executive MBA コースが存在するが、大雑把に分類すると以下のような3つのタイプに分類されるだろう。

タイプ-1) 地元住民優先で週末中心型 

アジア地区で有名なものは、香港工科大学とケロッグの合弁型大学であるKellog-HKUSTであろう。カリキュラム的には「金土日を毎週」のような形になることが多く、出張ベースでの通学は困難である。

たまたま、その地域に赴任したような人にとっては向いているであろう。
米国の大学で行われている多くのWeekendMBAも、このパタンになる。

タイプ-2) 欧米とアジアで実施するが。1回のモジュールが長いパタン

INSEADのGlobal Executive MBAコースが、これに該当する
ホームキャンパスは、シンガポール、アブダビ、フランスの3ヶ所。

最近はシカゴ大学に似せて、かなり改善が図られているようだが、ここは1課目に対する授業が、1週間を超えて長期になることが多い。

私が入学を考えていた2006年当時には、四半期に1回2週間の集中コースになるので、会社勤務を続けながらというにはちょっと厳しかった。
何かのプロジェクトに入っているようなヒトは、2週間ずつ年4回、仕事を定期的に離れるのは会社から難色を示されるであろう。

内勤型の勤務形態で比較的まとまった休暇の取れる方で且つ、欧州、中東関連のビジネス従事者にはオススメかも知れない。

私自身は第2候補にここを考えていたが、当時は、「第二外国語必須」のようなことを言われていて、正直、尻込みしていた。
最近は、そういうこともなくなったらしいが。。

また、INISEADは、オリジナルのGlobalMBAコースとは別に、清華大学とINSEADの共同でのコースも持っているようである。
こちらのほうは、タイプ-1)の地元住民優先型ではないかと思う

3) ネットワーキング中心、e-Learning混在型

これに該当するのは、Duke大学のカリキュラムだろう。

人脈と見聞を広めることに重点が置かれているためなのか、米国、欧州、中東・インド、中国・シンガポールなど、四半期ごとに各地を転々とする。

e-Learningが入るためか費用が高いことと、現地へ赴く期間が毎四半期毎とはいえ長期になるので、通勤ベースではやはり難しい。

中小企業の経営者の方など、自分でスケジュールをコントロールできる人には、心身のリフレッシュも兼ねて良いかも知れない。

=== 私がシカゴ大学Global MBAコースを選んだ理由(ここまで) ========

さて、このようなグローバルなビジネススクールは、特に最近は日本を「素通り」していくようで、寂しい傾向である。

シカゴ大学以外は、日本での入学応募者向け説明会すら、開催れた話をあまり聞かない

INSEADでは、地元のパリや欧州企業の拠点が集まるチューリッヒ、香港、韓国では説明会を開催するが、日本には来ない

Duke大学も、香港、北京、上海、ロシア、シンガポール、ウクライナ、アゼルバイジャンなどでは説明会の開催予定があるが、やはり日本には来ない。

ギリシャ経済危機の余波だと思われるが、アテネでの開催予定がキャンセルされていることから見ても、「客=生徒の来ないところは無視」ということが徹底されているようだ。日本は、本当に「ついでに立ち寄る」ことすらなく、”out of 眼中” にされつつあることを痛感する。

一方で、日本の社会人大学院が登場し、「日本人による日本人のための日本国内の学校」というスタンスで、カリキュラムだけを輸入して似たような授業を開催している。
時間的・費用的には明らかにこちらの方が楽だが、「現地に赴き、多国籍人種の中に飛び込み、Awayの空気でないと鍛えられないことがある」という点で、勿体無さを感じるのである。

しかも、卒業後の転職における有利性という点では、「どういうレベルの学生と切磋琢磨したかを問う」という観点から、外資系の中途採用では、いわゆる有名校であるかどうかも重要視される。
細かいランキングなどにこだわる必要はないが、Top10とかTop20でないと、「わざわざ日本人がAwayに出て行って。。」という投資対効果の観点では元が取れない。

そういう意味で、BusinessWeekなどに掲載される各学校の評価などは時々チェックしておいたほうがいいだろう。

そう思って久しぶりにランキングのページをみてみると、グロービスのインターナショナルコースへのリンクが貼ってあり、リンク先は全て英語で記述され、日本発で海外に出て行くビジネススクールを目指している心意気を感じた。

Globisinbw

実際に日本在住の外国人が、欧米有名校の出先ではなくグロービスを選ぶかどうかは私にはわからないが、「教育機関も日本から海外へ出て行く」という意気込みには拍手を送りたい。

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