【前編】kintoneで連携して子どもの成長を見守る! フリースクールDX事例「ぴおねろの森」
こんにちは。葉月へちまです。
今回のkintone取材記では、千葉県印西市のフリースクール・「非営利型一般社団法人ぴおねろの森」(以下、「ぴおねろの森」)のkintone活用事例をご紹介します!
(kintoneのサービスについてはこちら)
ぴおねろの森とは
ぴおねろの森は「すべての子どもに居場所を」という思いから立ち上げられた、小学1年生〜18歳までを対象としたフリースクールです。学習カリキュラムはなく、ぴおねろの森での子ども達の過ごし方は自由。毎週月・火・金の10:30〜15:00に開放され、子どもたちは来たいときに来て帰りたいときに帰り、思い思いの時間を過ごします。
ぴおねろの森のスタッフは、あだ名で呼ばれています。今回取材に応じてくださったのはこちらの方々。
向かって左から、
- サイボウズ株式会社のりゅうたさん
- 子どもの入退室管理を行う、あっちゃんさん
- 会計担当のかさあさん
- 代表のもりっちさん
- 保護者フォロー担当のしのっちさん
- 食事担当のたっちゃんさん
です。
ぴおねろの森のスタッフたちはkintone導入以前、
- 全部、リーダーに仕事が集中する!リーダーのボトルネックを解消したい!
- いろんな子ども!増えるいっぽう!子どもとの寄り添う時間を増やしたい!
- 保護者とのコミュニケーションを大切にしたい!
- スタッフが少ない!フルタイムは難しい!
- スタッフ間での意思疎通を大切にしたい!
- 在籍校とのコミュニケーションにコストがかかる!
- お金がない!
などの悩みを抱えていました。
はたして運営メンバーの皆さんはkintoneによって、どのように問題解決をはかっていったのか。順を追ってご紹介します!
子どもたちが楽しく入室!入室記録システム
まず、子ども達はぴおねろの森にやってくると、入口でQRコードの印字された入室証をかざします。すると、kintone上にどの子がいつ入室したかが記録されるのです。
あっちゃんさんはやってきた子ども達を出迎え、入室記録を取る担当です。スマートフォンでkintoneを開き、紙の記録用紙と照らし合わせながらその場でダブルチェックします。デジタルとアナログのあわせ技で抜け漏れを防いでいるんですね。あっちゃんさんによると、
「ぴおねろの森は、子どもたちが来たい時に来られる場所。そのため入室日数が人によってちがうので、kintoneを通して正確な日数が記録できるのはありがたいです」
とのことでした。
ちなみに入室のためQRコードをかざしたあと、
なにやら「小吉」という表示が出ました。それを見て子どもたちは、「小吉か」「凶だった!」などと大はしゃぎ。どうやら入室記録システムには、おみくじ機能もついているようです。
ぴおねろの森の入室記録システムをつくったのは、自身もぴおねろの森に在籍する中学生・しょうたろうさんです。しょうたろうさんは8歳のときにゲーム「Minecraft」でコードを組んだことをきっかけにプログラミングに関心を持ち、自らすすんでぴおねろの森のIT担当となったそうです。
「将来はWeb系の仕事に就きたい」というしょうたろうさん。kintoneの魅力について、
「kintoneは自由度が高く、見た目に凝る必要がないところが気に入っています」
と語ってくれました。
現在は、毎週月曜日にぴおねろの森に訪れる龍太さんからアドバイスをもらいながらkintoneのアプリを開発しています。入室の際のおみくじは、そんなしょうたろうさんがぴおねろの森に通う子どもたちが少しでも楽しめるようにと遊び心で付け加えた機能です。
おみくじの結果に一喜一憂する子どもたちの様子からも、しょうたろうさんが開発するシステムの魅力が伝わってきました。
見やすい管理で負担軽減!「ぴおランチ」の食費管理アプリ
ぴおねろの森では「安心できる場所と温かいご飯を!」という思いから、ランチも提供しています。調理担当はたっちゃんさん。元々はぴおねろの森に在籍するお子さんの保護者の一人でしたが、大人数向けの調理経験があったことと、送り迎えの時間を持て余していたことからスタッフに加わったそうです。
たっちゃんさんは食材を調達してからやってきて、10時半頃から調理を開始します。11時頃、あっちゃんから共有された本日の入室人数を参考にしつつ、作る量を調整。子ども達に食事当番の割り振りはなく、調理に興味ある子(つまみ食い目的含む)に手伝ってもらいながら、12時頃にランチが完成します。
たっちゃんさんが食費管理に使用しているkintoneのアプリは「たっちゃん銀行」です。ぴおねろの森の全体の収支を管理する会計アプリとは別に、前月の出席人数の平均×250円で割り当てられた食費のやりくりを記録する、食費特化の収支記録アプリです。
食材の購入は毎日行われています。細かくお金が動くため、食費だけの独立したアプリがあると、見やすくて便利ですよね。もちろん、「たっちゃん銀行」は全体の会計アプリとも連動しています。
たっちゃんさんにkintoneの画面を見せてもらうと、「たっちゃん銀行」以外のアプリにもピン留めがされていました。他のアプリもチェックしやすいように並べ替えているようです。
「使用するのは食費関連のアプリだけではなく、kintone上にある情報はすべてチェックするようにしています。代表のもりっちが紙で日誌を書いていた頃はなかなか目を通せなかったのですが、kintone上に保管された日誌なら気軽に読めます。他のスタッフが保存した記録を読むことで、子どもたちを見守りやすくなりました」
とおっしゃっていました。
学校との連携による「出席認定」
お子さんの不登校をきっかけにぴおねろの森を創設したもりっちさん。2023年2月に印西市に住む龍太さんがスタッフに加わったことをきっかけに、同年4月からkintoneの使用を開始されたそうです。もりっちさんによると、
「これまでスタッフ間の情報共有ツールはLINEだけでしたが、kintoneと使い分けることで情報を一覧しやすくなりました」
とのことで、ぴおねろの森では
- 緊急性が高い・一時的な情報⇒LINE
- 蓄積したい・見逃してほしくない情報⇒kintone
という使い分けがされています。kintoneは文字情報だけではなく写真もアップできるので、子どもたちの活動を記録するうえで便利なアプリですよね。
フリースクールに通う子ども達の多くが、何らかの事情で学校へ通えなくなってしまった不登校児童生徒です。しかし中にはフリースクールへ通う子ども達に対して、文部科学省の定める「出席認定」を行う学校もあります。通学していない日も、代わりにフリースクールへ行った日は出席日数として認められるというものです。
さらに、ぴおねろの森では現在、子どもの入室記録情報を学校にkintoneの閲覧権限を付与して安否確認システムとして提案しています。
学校の先生もkintoneを通して学校に登校していない日も生徒の様子を知り、コミュニケーションをとることができます。ぴおねろの森と学校が連携して安否確認を行っているんですね!
「学習指導要領に沿っていなくても、ぴおねろの森に通う子ども達は日々さまざまなことを学んでいます。【出席認定】が重要なのではなく、ぴおねろの森や学校、広くは地域全体で大人が子どもの安全と成長を見守ることが大切です」
とのことで、もりっちさんは引き続き出席認定を行っていないもしくは保護者が出席認定を希望していない学校ともkintoneで連携をはかっていきたいとおっしゃっていました。
不登校児童生徒が増える中で、まだ対応が追いついていない学校も多くあります。フリースクールと学校の連携は急務といえるでしょう。
kintoneは、書面でのやりとりといった学校側のコストや負担を軽減し、リアルタイムでの情報共有を可能にします。ぴおねろの森の事例が、学校とフリースクールの関係性のスタンダードとなっていくことに期待したいですね。
ぴおねろの森のkintone活用方法はまだまだあります。次回、引き続きぴおねろの森の事例をご紹介します!
後編はこちら!