子どもだけではない! GIGAスクール環境で変わっていく先生の働き方 ―これからの学校ICTと働き方改革を考えるkintone実証事業成果報告会―
こんにちは。葉月へちまです。
2019年から始まった北海道釧路管内でのkintone実証事業。
1年目、2年目と続けて成果報告会に参加させて頂き、その変化を見守ってまいりましたが(導入の経緯や第一回、第二回成果報告会の模様はこちら)、3年目の今年はいったいどのような変化が起こっているのでしょうか?
3年続けて参加されていらっしゃる先生や、その間に学校を移動された先生もおり、この3年での活用方法の変化や、学校間でのkintoneの使用方法のちがいなどをお伝えしていきます!
(kintoneのサービスについてはこちら)
〇成果報告会に参加された先生のご紹介
今回、登壇者は釧路会場、参加者はオンラインから参加という形式で開催されました。
左から
- 「一般社団法人学校地域協働センターラポールくしろ」の代表であり、釧路市立春採中学校で校長先生も務められている幸村仁先生
- 釧路市立鳥取西小学校・石川達明先生
- 釧路市立春採中学校・番匠徹先生
- 釧路市立武佐小学校・鳴野雅之先生
- 釧路町立遠矢小学校・大山淳子先生
です。
3年目の報告会ということもあり、
- kintoneを利用した業務改善を振り返って
- GIGAスクール構想の導入に関わるICTの現状
- 今後の業務改善に必要なシステム
という3つのポイントに沿って、幸村先生の進行で実証事業に参加された先生からお話を伺っていきました。
〇GIGAスクール構想による先生たちの変化
「まずは1年目から実証事業に参加いただいている石川先生にお話を伺いたいのですが、kintoneは校務において役立っていると思いますか?」
「役立っています。GIGAスクール構想が始まったことで先生たちの意識がずいぶん変わってkintoneを積極的に活用いただけるようになり、出席簿もkintoneを通してクラウド上で管理しています」
「先生たちは現在ひとり一台タブレットを持っているので、いつでも確認できるところが便利です。たとえば、職員室で電話で出欠席の連絡を受けたときもkintoneで共有いただくことで、担任の先生は教室からリアルタイムで出欠状況を把握することができます」
「それからオンラインでの授業も増えたため、kintone上に必要なページのリンク集を作成しました」
「URLの確認が不要なので、時間短縮に繋がっていますね。googleクラスルームとの連携ができたらもっと使いやすいかなと思っています」
「GIGAスクール構想が始まるまでは、クラウドという言葉にピンときていない先生や、セキュリティ面を心配される先生も多かった印象ですが、kintoneの使用を続けることで壁がなくなってきましたよね」
〇情報の保存場所が職員室からネット上に
「番匠先生は今年の4月から春採中学校に配属となりましたが、西中学校で使用していた昨年までと比べて、なにか変化はありましたか?」
「西中では掲示板的な使い方がメインだったんですよ。連絡事項載せたり、ファイルの場所を示したり。職員室にある黒板と似た使い方をしていました。しかし春採に来て、もっと深い使い方をしているなと感じましたね」
「深い使い方とは、具体的にどういったところが?」
「gooleドライブと連携してアドレスを共有したり、職員会議の資料が開催日ごとに整理されていたりといったところですね。より使い方が洗練されていると感じました」
「先生たちの間で、なにかあったらkintoneに報告をあげるということが徹底されているのも素晴らしいですね」
「たしかにみなさん、こまめに共有されてますよね」
「朝礼のときも、kintoneに書いてあること以外に連絡事項ありますか? と確認してほとんど追加連絡なし。学校の情報はkintoneをみればわかるという環境が整っています。みなさん積極的で、必要に応じてアプリもどんどんつくっていらっしゃいますしね」
「難点としては、少々アプリが作成されすぎているということでしょうか笑 現在20〜30ほどありますからね。使ってないものもたくさんあるので、知りたい情報に行き着けるようアプリを整理していくことが課題だと感じています」
「先生の積極性という面において、西中学校と春採中学校でちがいが生じた要因はなんだと思いますか?」
「西中学校のときは導入したばかりということもあり、スタンダードな使い方をしようという思いがみんな強かったからでしょうか。あとはGIGAスクール構想が始まり、各先生の意識がこの1年ほどで大きく変わって、保存場所がネット上というのが当たり前になってきたことも大きいと思います」
「いまや学校に行かなければ情報が得られないということはなくなりましたからね」
〇情報共有ツール導入の有無による学校ごとの比較
「鳴野先生は巡回指導教員(拠点校から巡回校に出向き、対象児童に対して「通級による指導」を行う教員のこと)として、kintoneを使用している学校とそうでない学校を同時に見られたと思いますが、いかがでしたか?」
「3つの学校を週単位でまわっているのですが、kintoneを導入している武佐小学校では、ほかの学校にいる間も連絡事項を確認したり、メッセージ機能で簡単な打ち合わせができたりと便利だなと感じました。学校外にいる時でも、リアルタイムで校内の様子がわかるよう、今日明日の予定だけでなく、月間/年間予定も表示しています」
「あわせて、ちょっとしたことでも掲示板で情報を共有するよう先生たちにお願いしてます」
「今年はkintoneを授業改善に活用できないかなと考え、教科書手引きやプリントなどをクラウドからリンク引っ張ってkintone上にまとめてみました」
「自宅で教材研究される先生などに活用いただいてますね。主に情報の蓄積型の使い方をしています」
「ほかの2校ではなにかkintone以外の情報共有ツールを導入されてますか?」
「1校は職員室で電子掲示板を活用していますが、もう1校は昔ながらの黒板と朝夕礼時の口頭の情報共有のみという状態です。情報伝達のスピードがkintoneの有無で全くちがいますね」
「kintoneを通じて学校間の情報連携がとれたら、巡回指導教員の負担軽減にも繋がるかもしれませんね」
〇kintoneと他ツールの組み合わせによる情報の棲み分け
「ICTの現状に関して、大山先生いかがでしょうか?」
「昨年はパソコンからkintoneにアクセスしていたので、結局職員室に行かなければ情報の確認ができないという状態でしたが、今年は先生たちが一人一台タブレットを持つようになり、kintoneの活用頻度が上がりましたね」
「先生たちはタブレットを使いこなしてますか?」
「今はもう、なにかあればすぐタブレットを見るということが習慣化されましたよ」
「かなり有効活用されてるんですね」
「特に導入効果を実感しているのが、朝礼に参加していない学校支援員ともkintoneを通していつでも情報共有ができるようになった点ですね。ほかにも教育主任が教科書のPDF化してkintone上に保存してくれたので、プロジェクターで拡大表示したりなど授業でも活用しています」
「タブレットを活用するようになったことで先生たちの働き方は変わりましたか?」
「校務の時間がかなり短縮されました。紙の印刷量も減りましたし。生徒の関わるものはgoogleクラスルームなどのアプリで、生徒に見せられないものはkintoneで、というように棲み分けもできてます」
〇kintoneでさらなる業務改善を
「現状どのようなシステムがあれば、さらなる業務改善に繋がると思いますか? 大山先生、小学校の立場からいかがでしょうか?」
「まずは校内だけでなく、学校間だけでも情報を共有できたらいいなと思いますね。会合の手間が省けるので、大幅な業務改善に繋がると思います」
「しかしその場合はやはり、セキュリティ面の強化が必要ですよね。アカウントを分けるだけでなくもっと気軽に鍵のかけ外しができたら良いなと思います」
「小学校、中学校の連携を強め、気軽に情報を入れられるスペースがあると良いですね。いきなり個人情報でなく、まずは教材などを共有するところから段階的に進めていくのが良いのではないでしょうか」
「番匠先生、中学校の立場からいかがですか?」
「業務改善の話とは少し異なりますが、子どもたちの先々のことを考えると、汎用性の高いgoogleツールがこれから重要になっていくのかなと思います。子どもたちがはやく慣れるよう、我々もgoogleミートで会議をしたり、googleフォームで定期テストをつくったりと、普段から積極的にgoogleツールを活用する必要性を感じています」
「ありがとうございます。セキュリティ面で心配の声もありましたが、3年前、kintoneを導入する際もやはりみなさん気にされていました。しかしkintoneに限らずどのツールも信用のうえで使用しますよね。googleツールに関してもgoogleを信用して使用しているわけで、セキュリティはもちろん大切ですが意識改革も必要なのかもしれません。サイボウズの中村さん、本日参加されていかがでしたか?」
「みなさん、ご協力いただきありがとうございます。私たちとしても、報告会のたびにたくさんの学びを得ています。いろんなツールがありますが、kintoneの最大の魅力は情報の本棚であることです。実際みなさんにそういう使い方をしていただいて、効果をご報告頂けたことが嬉しいです」
「先生方の話の中で気になったことなどはありましたか?」
「棲み分けというキーワードが出ていたと思いますが、先生が扱う情報と、生徒が閲覧できる情報は共有する目的がちがう、目的がちがう情報はkintoneとその他のクラウドで分けたほうが良いと、こちらとしても気づきがありました」
「業務改善において、アドバイスがあれば教えて下さい」
「情報の共有に関してですが、kintoneを入り口として各学校が必要な情報を保存したページに飛べるようにするというのも良いかもしれません。情報の保存場所はkintoneでなくても良くて、情報の入り口としてkintoneを活用頂けたらと思います。鍵のかけ外し自体はサイボウズの社内で利用するときは使っている機能でもあるのですが、実際ニーズがあるのだとわかりました」
「中村さん、ありがとうございました。参加者の方でご質問のある方はいらっしゃいますか?」
「サイボウズマーケティング担当の深澤です。学校間での情報共有に関してですが、ゲストアカウントを発行することで共有するという手段もありますが、そちらは検討されましたか?」
「質問ありがとうございます。ゲストアカウントを活用するという方法も考えたのですが、セキュリティ面でどこまでを共有するかを決めかねておりまして。たとえば教育委員会さんが入ってくれたら一括で管理できるのですが、なかなか難しい現状です。まずは部活動や教頭校長用スペースから徐々に広げていくなどを検討しています」
「アカウントに関してなのですが......本日参加させていただいた、島根の教育委員会のひのきだにです。googleアカウントを直接kintoneに入力してログインする方法もありますよ。IDとパスワードを気にする必要がなく、許可したgoogleアカウント以外から入られることもないので、安心して使えるかもしれません」
「アドバイスありがとうございます。それは非常に良いですね。教育委員会の管理下のもと、釧路管内のすべての学校にkintoneが入った際は、その使用方法を提言してみます」
「これから予算化できるかというお話にもなっていくかと思いますので、営業チームも一丸となって、成果報告会の効果を広めていきますね」
「ありがとうございます。まずは1年やってみようで始まった事業が3年経過しました。今年度で一旦区切り。今後は釧路管内すべての学校がひとつのシステムを使い、どこの学校へ異動になってもストレスなく校務にあたれるようkintoneの導入を進めていきたいと思います」
〇おわりに
3年目ということもあり、それほど過去の報告会とちがいがないのではないかと思っていましたが、1年目に取材したときと比べ、先生たちの意識が大きく変わり、みなさん積極的にkintoneを活用しようと動かれていました。
GIGAスクール構想のスタートでICTの必要性と、使用するツールをまずは信用して使ってみようという意識が芽生えたことは、取材を続けてきた私としても嬉しい驚きでしたね。
一旦実証事業はひと区切りとのことですが、本格的に釧路管内にkintoneが導入された際にはまた新たな変化があると思います。
引き続き、変わりゆく学校現場の様子を見守っていきます。
今回の記事でkintoneの実証事業に興味を持たれた方は、ぜひ第一回/第二回成果報告会と見比べてみてください。