活動も情報もオープンに―NPO法人ゆめ・まち・ねっとのkintone活用事例―
こんにちは。葉月へちまです。
今回のkintone取材記では、NPO法人ゆめ・まち・ねっと(以下、「ゆめ・まち・ねっと」)さんが隔週土日に開催している冒険遊び場たごっこパーク(以下、「たごっこパーク」)の活動を見学させていただきました。
いざ、サイボウズ株式会社のもっちーさんとともに静岡県富士市へ!
むかって左から、
- ゆめ・まち・ねっと代表の渡部達也さん(以下、たっちゃん)
- たっちゃんの愛妻であり、ゆめ・まち・ねっとの共同運営者のみっきぃさん
- Kintoneのメイン運営担当のスタッフのみっこさん
以上の三名からお話を伺いました。
ゆめ・まち・ねっとの取り組みはどのようなものか。kintoneの活用事例とともにご紹介します!(kintoneのサービスについてはこちら)
自由な遊び場・たごっこパーク
「たごっこパーク」とは、ゆめ・まち・ねっとが隔週土日に富士市島田公園と田子の浦港に流れる小潤井川で開催している、子どもたちのための遊び場です。
その特徴は、
- 参加費無料
- 親の申し込み不要
- 子どもの足でこられる場所
- 子どもたちがどう遊ぶかを大人が決めない
子どもを対象としたイベントとしては、ここまで自由なのも珍しいですよね。けれどたっちゃんいわく、
「だって、僕らが子どもの頃の遊び場ってそういうものだったでしょう?」
たしかに思い返してみると私が子どもの頃は、近所の公園で友達と遊ぶのにいちいち親の許可をとっていませんでした。お金をかけなくても遊ぶことができたし、当然、遊び方も自分たちで決めていました。
「いまの子どもたちにも、僕たちと同じ体験をしてほしいんですよ」
たごっこパークは、かつて子どもにとって当たり前だった束縛のない遊びを体験できる場所なんですね。
失敗こそを楽しむ遊びの場
こちらは、たごっこパークの中心に置かれていた看板です。
「遊びには失敗が付き物」
子どもたちが自由に遊ぶことによって危険があるかもしれない。しかしそれすらかつては当たり前のものでした。子どものうちに危険な失敗をたくさんして、その中で多くのことを学び、成長する。それこそが遊びの面白さであり、醍醐味でしたよね。
たごっこパークは子どもたちが自由に遊んで失敗しながら多くのことを学べる場だからこそ、居場所のつくりづらい現代の子どもたちにとっての居心地の良い場所になっているのだとわかりました。
今を受けとめて、未来につなぐ
「子ども、若者、親が持ち込む痛み、苦しみ、悩み、怒り......そうした負の感情を少しでも軽減させてあげたいというのがこの活動を20年続けられた原動力になってきました。小さな活動ですが、社会的問題の解決の処方箋を示したいですね」
たっちゃんから伺ったエピソードの中で特に印象的だったのは、不登校のまま卒業式の日を迎えた子に卒業式の意味を尋ねたとき、返ってきたという言葉です。
「明日から『不登校』と呼ばれなくなる日」
ゆめ・まち・ねっとは子どもたちを取り巻くつらい現状を否定せず、ありのままを受け止めて、そっと寄り添っています。そのことを「希望の先送り」と呼んでいるそうです。
つらく苦しい今をゆめ・まち・ねっとともに乗り越えた先にある希望。かつてたごっこパークに通っていた子どもたちの多くが大人になった現在も、たっちゃんたちと交流を続けているとのことでした。
共感に支えられた活動だからこそ、kintoneで【見える化】を
ゆめ・まち・ねっとでは年に一度、支援者の方に向けて事業報告書を発行しています。一年間の活動の中で寄付金や差し入れがどのように活用されたのか、常に【見える化】を意識されているそうです。
Kintoneの導入により、さらに可視化されたとのことなので、詳しくみていきましょう!
たっちゃんは昨年5月にkintoneを導入。たごっこパークをはじめとした各施設の利用者の記録や日誌、寄付金や差し入れの管理などをkintone上で行うようになりました。
「市民団体や行政の視察、メディアの取材で質問されたときにも、kintoneからすぐに情報を引き出せるので、説得力が増しました」
細かな数字も、kintoneで集計したグラフを見たら一目瞭然ですよね。さっそくたっちゃんたちがkintoneを使いこなしていらっしゃることがわかりました。
アナログとデジタルの使い分け
kintoneの導入前は日々の利用者のカウントや日誌をすべてノートに記録していたそうです。
「一日の終わりにみっきぃとふたりで読み上げて、ダブルチェックしながらカウントしていました。これがなかなか数字が合わないんですよ」
たっちゃんとみっきぃさんは数字がずれるたびに数えなおし、年間の集計の際は、正確な記録ができるまでに何時間もかかることがあったのだとか。
kintone導入後はたごっこパークへパソコンを持っていき、その場で入力するようになりました。
「一瞬で集計できて助かっています。正確に入力しないとという意識も働いて、ノートのときより慎重になったかも」
と、みっきぃさん。もともとおふたりともデジタルツールへの抵抗感があったとのことですが、使っていくうちにだんだんと慣れてきたそうです。
しかし慣れてきたからこそ注意したいことも。たっちゃんは、
「デジタルツールを使ううちに、思考までデジタルにならないように気を付けています。参加者ひとりひとりの顔を見ないまま、記号や数値化してしまわないように。改めて「この子は最近よく来てくれてるな」、「あの子は少し慣れてきたみたいだな」と意識して子ども達を見つめるようになりました」
と気を抜くと数字ばかりに目がいってしまう思考のデジタル化に言及。kintoneに限らず、気をつけたいですね!
差し入れや寄付金のお礼状にはリマインド機能を活用
たごっこパークの会場に並べられた駄菓子や飲み物。これらはすべて支援者さんたちからの寄付なのだそうです。
これまでExcelで記録していた寄付金名簿や、ノートにメモしていた差し入れもすべてkintoneにデータを集約しました。
「差し入れや寄付金などをkintoneに入力するようになってから、誰がどのぐらいのペースで寄付してくれているのかを正確に把握し、より丁寧なお礼状が送れるようになりました」
と、スタッフのみっこさん。
お礼を伝えたかどうかはその都度kintoneに記録。チェックのつけそびれやお礼状の送りそびれがあった場合はリマインドメールが届くよう設定されていました。
「支えてくれている人たちが可視化されたことの意味は大きい。この活動はプライスレスな支えによって成り立っていますから」
情報共有ツールとしてのkintone
ミーティングのときにはTODOリストも活用されているそうです。といっても、みっきぃさんによると取り組むべきことをまとめたリストというより、「取り組まなかったことを確認するリスト」だそうですが。
「TODOリストに入れたものの半年経っても実行されないものは削除するようにしています。これはこれでひとつの判断基準になって助かっています」
一緒に暮らす夫婦のたっちゃんとみっきぃさんとちがい、帰宅したあとや活動に参加しなかった日は「情報の共有に時差があったり、詳細がわからなかったりということがあった」というスタッフのみっこさんは、ノートに日誌を残していた頃、
- 事務所に行かないと確認できない
- 誰かが読んでいるときは読めない
- 複数冊にわたる場合、情報の保管場所がバラけてしまう
ということに悩んでいました。
kintoneに記録を残すようになってからは、
「出勤していない日もスマホから情報がチェックできて、次回の出勤時に戸惑うことがなくなりました。LINEで共有していた頃のように情報が流れてしまうことがなく過去の日誌も振り返りやすいので、事例集としても活用しています」
さまざまな事情を抱える参加者たちが集うゆめ・まち・ねっとの活動において、過去の記録は特に重要なんですね。kintoneのようなスタッフ間で簡単に情報共有できるツールが、福祉の現場で重宝されている理由がよくわかりました!
おわりに:少子化が進む今だからこそ大切な「居場所」
(渡部達也著『子どもたちへのまなざし』)
今回たごっこパークを見学させていただいて感じたのは、子どもたちがとにかく生き生きしているなあ、ということです。みんな誰に指示されるでもなく自発的に行動し、かつ、協力しあっていました。自由に好きなことをしているのに争いがない。理想的な空間がそこにありました。
正直、最初に「居場所づくり」と聞いたときはうまくイメージができなかったんですよね。さまざまな事情を抱えた人たちがいる中でどうやったら誰にでも当てはまる居場所がつくれるんだろう? って。
けれど実際に見学してみて、「ここは参加者自身が居心地の良い場所を見つけ、自分たちで居心地の良い場所をつくっていくところなんだ」ということがわかりました。自分で選んでつくりあげた場所だから居心地が良い。人との距離を自由にとれるから衝突もない。そしてゆめ・まち・ねっとがそっと見守ることで誰ひとり孤立することなく、ゆるやかな連帯が生まれていく。
そんなすてきな瞬間を垣間見ることができました。
ゆめ・まち・ねっとの皆さん、取材のご協力ありがとうございました!