「量は質を凌駕する」就職活動を振り返る
就職氷河期と言われて久しい昨今、2003年に修士卒で就職した私はまさに、第一次就職氷河期と呼ばれる時期に当たります。縁あって大手食品メーカーの研究員として働くことになりましたが、それまでの就職活動においてはかなり多くの業界・業種を経験させてもらったことがその後の職業観を養うのに有効だったと感じています。
2001年に大学院に進学した私は、その年の夏から大手重工メーカーのインターンシップに参加しました。まだまだインターンシップというものが一般的ではなかった頃に、そのメーカーとしても初めて学生を受入れるというタイミングで、横浜みなとみらいにおいて勤務を開始いたしました。
当時私が配属されたのが知的財産部門ということで、特許や実用新案といった知的財産権を取り扱う部署において就業体験しました。とはいえ企業秘密に関わるような案件を担当するわけにもいかず、もっぱらコピーを取ったり書類や報告書を作成したりといった作業がメインでした。工場や取引先との商談にも同行させてもらい、全体目線での社会人生活のロールプレイングを経験させてもらったのは良い想い出です。
そのメーカーでのインターンシップが終わる頃に、今度は大手シンクタンクでのインターンシップが始まりました。環境系の大学院生が多く参加して、他校とのネットワークも構築できたという意味においては有意義な機会となりましたが、実際に働くといったシーンを考えたときには、昼夜問わず不夜城のようにPCに向かっている働き方は当時の私にとってはワーカーホリックすぎると感じました。
今で言うワークライフバランスという概念において、シンクタンクやコンサルティングという働き方はどうやら私にとって向いていないと考え始めたのも、このインターンシップの経験があったからこそです。むしろメーカーのように、成果物が製品として世の中に出てくる方がリアルに社会と繋がっている感覚が得られると思うようになりました。
一方で、サラリーマンという働き方自体にはどうしても馴染めない自分がいたことも事実です。基本的に誰かに指図されることが嫌い、人と同じことはやりたくないという性格の人間にとって、社会に出る=企業に就職するということに直結することに関しても違和感を持っていました。いずれは自分でビジネスをしてみたいけれども、その経験もノウハウも持っていない、そんな中でどうやって働いていけばよいのかを模索するようになりました。
まだまだ企業活動において環境やCSRといったテーマが重要視されていなかった時代に、敢えて環境をテーマに就職活動することで、オトナはどう反応するのだろう?そんな天の邪鬼な考えで就職活動をはじめようと決めました。まだまだ青かったんでしょうね、採用担当に環境のことを質問したところで明確な答えが帰ってくるわけでもなく、それでも様々な企業の環境報告書などを取り寄せて読みふけりました。
結果的に、こんなヘンな奴でも採用してみたい、環境のことをやってみればいいじゃないかという企業に採用していただき、案の定組織のなかで馴染むこともなく数年で辞めてしまったので、自分に適した職を見つけるという意味においては、私の就職活動は失敗に終わりました。
でも、この当時に100社を超える企業の業務内容を分析したり、50社を超える企業で面接させていただいたりした経験は現在の私にとってはかけがえのない財産となっています。さらに、この就職活動のなかで出会った戦友たちは、30代を迎えて独立起業したり社内でのエースになっていたりと、当時としては珍しいインターンシップという制度に集まった仲間たちはやはりそれなりに活躍を始めています。
私がこれから就職活動を迎える学生たちに言えるアドバイスとしては、「数は質を凌駕する」ということです。ほんの20年そこら生きてきた人生のなかで自分に合った職業に出会える確率は宝くじと同じくらいでしょう。なぜなら、人は自分の経験のなかでしか得手不得手を判断できないわけですから、その絶対数が学校教育のなかでは担保できないのです。
だから、就職活動自体をその経験のストックを拡大させる機会にするぐらいに捉えて、なるべく多くの企業の話を聞いたり人と会ったりすればよいと思います。自分に合った仕事なんて無くて当たり前、それならば自分が仕事を創ってその企業の1つの事業を立ち上げるといった意気込みであれば、そんな血気盛んな若者が好きな余裕のある企業経営者ならば採用してくれると思いますよ。
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