日本の限界集落が必要な理由
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多くの地域において、過疎高齢化は深刻な問題となっています。高速道路や新幹線を整備しても、それは逆に都会に人を吸い出す「ストロー効果」となって人口減少に拍車をかけ、小中学校の統廃合や診療機関のパンクといった教育や福祉の仕組みが立ち居かなくなる現象まで起こっています。
限界集落と呼ばれる、社会的共同生活が困難となった過疎地域においては、地方中核都市などへの移住を進める政策であったり、雪深い地域などでは冬の間だけ都市に"疎開"するといった方法で現実的な対応を行なっているところも多いようです。
実際に大都市圏に人口を集約することで効果を挙げていた時代とは、第二次産業が勃興して労働者を集め、労働集約的な富国強兵を進める必要があった明治〜昭和時代にかけての話です。一方で終戦間際になると、東京都心部の人口は300万人足らずに過ぎず、大部分が地方に疎開していました。
東京のような平野部の大都市は、工業製品を集約的に生産するためには優れた機能を発揮しますが、より生命維持に近い第一次産業を行なうためには水や土壌を供給する森林が少ないこともあって、ダムや高速道路をつくって地方からの資源供給に頼るほかありません。
日本列島改造論の時代には、このような大型公共事業を行ないながら第二次産業を振興することが国益に適っていたのですが、新興国の成長による交易条件の悪化であったり、人口減少社会に転じた際の社会コスト負担という新たな課題に直面して、もはやこれらコンクリートで造る人工社会を維持することは困難となっています。
参考:交易条件の悪化と経済動向--みずほリサーチ(PDF)
http://www.mizuho-ri.co.jp/research/economics/pdf/report/report08-0728.pdf
むしろ、資源循環の拠点としての中山間地域の価値を見直して、自然資本を有効活用しながらエネルギーや食料といった生命維持に必要な最低限のライフラインを確保する暮らしを実現していくことこそが、日本が今後採るべき処方箋なのではないかと個人的には考えています。
折しも中東では政情不安が各国で顕在化し、原油などのエネルギー供給が滞るのではないかという憶測も出ています。歴史を振り返れば、中東で政情不安が発生すれば必ずエネルギー価格が上昇しています。また海上輸送によって地球を半周するためのシーレーンの確保を米軍に頼っている日本は、安全保障費の負担も馬鹿になりませんね。
一方で限界集落と言われる中山間地域は実はエネルギーの宝庫であり、急峻な地形を利用した小水力発電、国土の7割を占める森林資源を活用した木質バイオマス、そして無限に降り注ぐ太陽光などを活用すれば、人口が減少した限界集落におけるエネルギー自給は実はカンタンにできてしまいます。
限界集落はライフラインが長い分コストがかかり、税金の無駄だから切り捨てた方がよい、という意見を耳にすることがあります。むしろ現在の政権中枢の意見としては、都市機能の集約を志向していると言えるでしょう。でも、日本は昔から地域において自治機能が働いていた国であり、税金を投入して中央集権的な管理を行なっていたのは、ほんのここ数十年の話です。
教育や福祉医療にかかるコストすらも、自分たちで賄うほどに強い集落は実際に日本各地に出現しはじめており、そういった地域においてお話を伺うと必ずエネルギーを自給するプランが話題に上ります。デフレの原因が交易条件の悪化であり、それはほとんどエネルギー価格に起因するということを身を以て理解しているということでしょう。
豊かさとは何か、という議論があります。20世紀は物質的な豊かさを追い求め、その結果あまり幸せにはなれなかった現実がありました。いま、改めて問う豊かさとは何か、その答えは「選択肢があること」なのではないかと思います。選択肢とはつまり多様性、様々な価値観が認められ、必要最低限の生活が担保されている社会を豊かと呼ぶのではないでしょうか。
私は、日本各地の中核都市に"ミニ東京"を造ることが豊かさだとは思いません。むしろ、各地域が自治と自立を獲得して、そこの住民が自由に自分の意志で選択できる社会こそが、豊かさだと考えています。日本の限界集落の数は、意志の数なのです。
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居住地域の2割が過疎で無人化 国土審2050年推計
国土交通省の国土審議会長期展望委員会は21日、2050年の日本の国土の姿について、過疎化や少子高齢化の傾向が継続した場合、05年に人が住んでいた国土の約20%で、住民がいなくなるとの推計を盛り込んだ中間報告をまとめた。過疎化が進む地域では人口減少率が61%と、全国平均(26%)を大幅に上回っており、大都市と地方の人口格差が過度に進むことになる。
限界集落と呼ばれる、社会的共同生活が困難となった過疎地域においては、地方中核都市などへの移住を進める政策であったり、雪深い地域などでは冬の間だけ都市に"疎開"するといった方法で現実的な対応を行なっているところも多いようです。
実際に大都市圏に人口を集約することで効果を挙げていた時代とは、第二次産業が勃興して労働者を集め、労働集約的な富国強兵を進める必要があった明治〜昭和時代にかけての話です。一方で終戦間際になると、東京都心部の人口は300万人足らずに過ぎず、大部分が地方に疎開していました。
東京のような平野部の大都市は、工業製品を集約的に生産するためには優れた機能を発揮しますが、より生命維持に近い第一次産業を行なうためには水や土壌を供給する森林が少ないこともあって、ダムや高速道路をつくって地方からの資源供給に頼るほかありません。
日本列島改造論の時代には、このような大型公共事業を行ないながら第二次産業を振興することが国益に適っていたのですが、新興国の成長による交易条件の悪化であったり、人口減少社会に転じた際の社会コスト負担という新たな課題に直面して、もはやこれらコンクリートで造る人工社会を維持することは困難となっています。
参考:交易条件の悪化と経済動向--みずほリサーチ(PDF)
http://www.mizuho-ri.co.jp/research/economics/pdf/report/report08-0728.pdf
むしろ、資源循環の拠点としての中山間地域の価値を見直して、自然資本を有効活用しながらエネルギーや食料といった生命維持に必要な最低限のライフラインを確保する暮らしを実現していくことこそが、日本が今後採るべき処方箋なのではないかと個人的には考えています。
折しも中東では政情不安が各国で顕在化し、原油などのエネルギー供給が滞るのではないかという憶測も出ています。歴史を振り返れば、中東で政情不安が発生すれば必ずエネルギー価格が上昇しています。また海上輸送によって地球を半周するためのシーレーンの確保を米軍に頼っている日本は、安全保障費の負担も馬鹿になりませんね。
一方で限界集落と言われる中山間地域は実はエネルギーの宝庫であり、急峻な地形を利用した小水力発電、国土の7割を占める森林資源を活用した木質バイオマス、そして無限に降り注ぐ太陽光などを活用すれば、人口が減少した限界集落におけるエネルギー自給は実はカンタンにできてしまいます。
限界集落はライフラインが長い分コストがかかり、税金の無駄だから切り捨てた方がよい、という意見を耳にすることがあります。むしろ現在の政権中枢の意見としては、都市機能の集約を志向していると言えるでしょう。でも、日本は昔から地域において自治機能が働いていた国であり、税金を投入して中央集権的な管理を行なっていたのは、ほんのここ数十年の話です。
教育や福祉医療にかかるコストすらも、自分たちで賄うほどに強い集落は実際に日本各地に出現しはじめており、そういった地域においてお話を伺うと必ずエネルギーを自給するプランが話題に上ります。デフレの原因が交易条件の悪化であり、それはほとんどエネルギー価格に起因するということを身を以て理解しているということでしょう。
危機に追い込まれた住人は立ち上がった
こういった危機の先端にいる地域では、早期に課題に直面しているだけに、新しい胎動が次々と起きている。その大半は追い込まれて踏み出した一歩に過ぎない。だが、その足跡をつぶさに見れば、次代に通じる仕組みや価値観が浮き彫りになる。
今から見ていこう。逆境に置かれた人々が始めたことを。抗しがたい次代の荒波にもまれながらも、存続のために知恵を尽くして立ち上がる。その姿を見れば、人間が持つ根源的な強さを感じるだろう。
豊かさとは何か、という議論があります。20世紀は物質的な豊かさを追い求め、その結果あまり幸せにはなれなかった現実がありました。いま、改めて問う豊かさとは何か、その答えは「選択肢があること」なのではないかと思います。選択肢とはつまり多様性、様々な価値観が認められ、必要最低限の生活が担保されている社会を豊かと呼ぶのではないでしょうか。
私は、日本各地の中核都市に"ミニ東京"を造ることが豊かさだとは思いません。むしろ、各地域が自治と自立を獲得して、そこの住民が自由に自分の意志で選択できる社会こそが、豊かさだと考えています。日本の限界集落の数は、意志の数なのです。
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