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私を育ててくれた「重い本」 - ほんと重〜いよ。

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私は、お誘いを断らないタイプである。おごってあげるよ、と言われたら、万難を排しておごって貰うタイプである。ばんちょ〜が、「遊ぼう!」と書いている 以 上、遊ばない訳がない。でも。遊ぶときでも真剣な私としては、「私」自身を形成するに至った大切な本、三冊を挙げたいと思う。

自分を形成する時期は、やはり中学生や高校生の時分だと思うので、三冊のうち、二冊はその当時のものだ。すでに絶版となっているので、Amazon でも、その他のオークションサイトでも、入手が難しい。大きな図書館に行かれると、おそらく見つかるだろう。3番目の本はAmazonでは、米国からのお取り 寄せになるようです。

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1.世界教養全集 別巻4 「語録 永遠の言葉」 大内兵衛編 平凡社発行 1971 年 18 版

Img_0324_2 発行人は、かの下中邦彦氏だ。当時 450 円だったが、この厚みを見て欲しい。この本は古今東西の 300 名ほどの哲学者、文学者、科学者などの著書や講演から抽出した、すばらしい言葉や文を、ひとりあたり見開き2ページで掲載してある。人類にとって、至宝と も呼べる言葉である。

 

 


 

Img_0327_2 この本を買ったのは、中学 2 年生のとき。世界中の偉人たちの人生のエキスのような言葉を読んだのだ。ホメロス、ヘロドトスに始まり、湯川秀樹や朝永振一郎まで。この見開きのページ は、その中から、ロシア未来派(ロシア・アバンギャルド)と呼ばれる詩人の代表者である、ウラジミール・マヤコフスキーのページだ。私はこの本でマヤコフスキーを知っ たのだが、ここに掲載されている詩(自殺前に書いた、遺作である)が好きだ。このブログの一番下に抜粋しておく。

 

ちなみに大内兵衛氏は、大正・昭和時代のマルクス経済学者だ。法政大学総長を1950年から1959年まで勤めている。終戦直後、大蔵大臣・渋沢敬三に日 銀顧問に迎えられたり、高度経済成長にも影響を与えたひとだ。経済学の泰斗であると同時に、当然の事として教養高く、古今東西の古典に精通されていた。

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2.「論語の講義」 諸橋轍次著 大修館書店発行 1973 年初版

Img_0329 諸橋轍次博士は、「大漢和辞典」全 13 巻を 30 年かけて編纂した事で有名だ。東京高等師範学校卒業であり、東京帝国大学ではないことが理由なのか、異端扱いされる場合があり、特にこの「論語の講義」が やり玉に上がっていた、と記憶する。

巧言令色鮮矣仁(こうげん、れいしょく、すくなし仁)とか、吾日三省吾身(われ、日にわがみを三省す)など有名な言葉がちりばめられた、人類の宝物の本で ある。三省堂の「三省」はここから取られた、というのは、常識ですよね。

    

Img_0330 この本を買ったのは、高校 1 年生の時。当時の私の漢文の先生は大学の教授だったのだが、学生紛争で「学生にも理がある」、と言ったために罷免され、高校の先生で糊口をしのがれてい た。おそらく、若くてスポンジのように知識を吸収する高校生に教えることも楽しかったのではないか、と思う。悪ガキだらけのクラスだったが、この先生の時 は、みな、背筋を伸ばし、無駄口をきかず、真剣に授業を受けた。どんな馬鹿でも、りっぱな人は区別できるのだ。

この先生の影響を受けて、この「論語の講義」を買ったのだが、論語は、親に孝を尽くすこと、人を裏切らないこと、常に学ぶこと、君子足るべき事を目指して いるので、論語読みの論語知らずではあるが、その方向を目指し、そういった人間になろうとした。

その後、老子も勉強したのだが、大海にたゆたうような生き方が老子の方向なので、「ああ、先に老子を勉強しておけばよかった」と悔やんだ事もある。まあ、 時間は前後しないので、しかたあるまい。私の中には論語的人格と老子的人格が混在するようになってしまった。

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3.An Introduction to database systems / C. J. Date - 6th Edition , 1995 Addison-Wesley Publishing Co. Inc.

Img_0321 リレーショナル・データベースの教科書の頂点。聖書と呼んでも良いと思う。これを読んでいないRDBの専門家は、「もぐり?」。クリス・デートは、イギリ ス生まれ。エド・コッドと共に IBM でリレーショナル・モデルの研究を行い、1983 年に独立して、リレーショナル・データベースに係わる著書や講演を行っている。

この本は、現在第 8 版になっており、世界で 70 万冊以上も売れている。IT の本としてはベストセラーのひとつと言えるだろう。

 

 

Img_0323_2 この本は 1995 年に購入した。1989 年から、DB2 などの IBM のリレーショナル・データベース製品のアジア・太平洋地域の(いちおう、最高)責任者だったので、データベースの事は良く勉強していたつもりだった。しか し 1990年も中盤を迎えると、増永先生、喜連川先生などの学会の方々や、業界の方々とお会いするようになり、もう一度初心に帰って、じっくりデータベース を勉強し直してみようと思い、この本で勉強した。こっそりソーッと、会社の設備を使って、データベースを導入 し、本に書かれている内容をDB2 を使って確認したりした。

システムは優良な教科書と実験環境を準備することにより、深い理解が得られるので、なんとか時間を作って勉強することをお勧めする。それをしないエンジニ アは、エンジニアではない、と言われてもしかたがない、と思う。



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マヤコフスキー遺稿の一部を抜粋
1930年に、女優ポローンスカヤとわかれた直後、この詩を書き、ピストル自殺した。

ぼくは知っている、ことばの力を、ぼくは知っている、ことばの早鐘を。

・・・・・ 中略 ・・・・・・・・・

もう一時すぎ。きっと、きみはやすんだね。
夜ふけの銀河は銀いろのオカ川。
ぼくは急がない、電報の稲妻で
きみをゆりおこし、かきみだす理由もない。
世に言うところの、これが一巻の終わりです。
恋のボートは世間と衝突してこなごな。
ぼくときみとは清算だ。数えてあげてもなんにもならない。
お互いの痛みを、不幸を、そして侮辱を。
ごらん、世界はなんというしずけさだ。
夜は空いちめんに星の貢物。
こんな時間に起きあがって語る相手は
世紀、歴史、そして宇宙。

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