「ムーアの法則」の次ぎに来るもの
永井さんが「資本市場もムーアの法則の終焉を織り込みはじめた?」というブログを投稿されたのだが、ITの半導体の市場を見る限り、本家の Intel も含め、すでに本来の意味での「ムーアの法則」は凌駕している、と私は見るので、この投稿をしたいと思う。
「ムーアの法則」とは、元々は集積回路におけるトランジスタの集積密度は約2年ごとに倍になる、というものだ。これをひとつ大きな観点で見ると、2年間で半導体が処理できる能力は2倍になる、となる。しかし、永井さんのご指摘のように、半導体の集積度にはどうしても限界があり、「原子の大きさは超えられない」のである。
ところが、Web2.0のように、大量のタスクが予想できない状況で飛び込んでくる時代になると、処理能力は2倍どころか、もっと高い能力が必要となった。当初はクラスタリングなど、とにかく横にサーバを並べて対処したが、コスト面、電力の消費面で、莫大な費用となってきた。
これを大きく変えていく、原動力となっているのが、チップのマルチコア・マルチスレッディングだ。Intel では Xeon、AMDではOpteronがそれにあたり、サンでは、CoolThread シリーズだ。これらマルチコア・マルチスレッディングのチップの特徴は、ひとつの半導体チップに複数の演算集積回路が乗っている、ということだ。
これは、サンのCoolThread T2 の写真だが、真ん中の黄色の線で囲まれた回路ひとつひとつが、独立した回路(CPU)である。サンの場合このひとつの回路に8つのスレッドが稼働する。
これのなにがうれしいかというと、ひとつのタスクがCPUを使った後メモリーを見に行く間、通常ならその間CPUは稼働していない。しかし、別のスレッドを稼働させれば、CPUの空き時間を減らし、全体としてのスループットを向上させる。
このCoolThread T2 を搭載したサーバは「SPARC Enterprise T5120 / T5220」として販売している。
きょう、DELLとサンはSolaris のOEM契約をかわした。8月にはIBMが同様にSolaris のOEM契約をサンと結んでいる。なぜ、いま Solaris が人気なのかというと、Intel がXeon チップを出し、マルチコア化しているのに、それを稼働させる OS が Solaris 以外にはないからだ。Linux で例えば4ウェイのマルチコア環境をサポートしているだろうか。
Solaris は市販のサーバではT5220など64ウェイをサポートしているし、実験では128ウェイまで稼働済みである。Windows も Linux も Xeon のスペックを十分に活用できない以上、Solaris にたよるしかない。
IBMの Powerチップはどうだろうか。いったんマルチコア化するという動きは見せたものの、まだ、集積度をあげようとしているように見える。17年前、メインフレームのチップを、バイポーラをやめてCMOS で行く決断をしたIBMなのだから、きっと良い方向に進むことを祈念したい。