Vista も Mac ももういらない?! その2
デジャヴとか、「歴史は繰り返す」とか「昔来たこの道」というように、以前起こったことが繰り返されるという事がよくある。Vista の発表と携帯のモバイルコンピューティング普及の状況は、私にとって、昔見た景色のようだ。
90年代の初め、メインフレームは岐路に立たされていた。その頃のメインフレームのCPUは、バイポーラと呼ばれていたチップで、CMOS(インテルなどのチップの設計方法)に比べ、格段の集積度で、高々密度集積回路、すなわち、たいへん処理時間の短いチップであった。高々密度はしかし、同時に高温を発生させてしまうという一大問題点があった。その発熱量を抑えるために、IBMでは水冷の装置を機械につけた。メインフレームの技術はいかにチップの熱を逃がすかにかかっていた。
90年の初め、IBMはバイポーラを諦め、CMOSのチップを使い、しかも全体のスループットを下げないために、シェアード・ナッシングアーキテクチャのMPPマシンと新しいOSであるS/390を発表した。日本では当時の専務、三井さんが発表を行い、日経新聞の一面トップを写真入りで飾った。その三井専務の後ろに映っている説明のチャートを作ったのは、私だ(結構、自慢です)。
IBMのメインフレームのOS、MVSは資源管理能力が高く、ひとつの物理スレッド上で仮想化して複数の処理を実行する能力に長けていた。問題は、複数の物理スレッド(たとえば、複数CPU)上で稼動させようとすると、3つ目以降から極端にスループットが落ちた。物理スレッドに対するスケーラビリティが低かった。これは、資源が極端に乏しい60年代のコンピューティング環境を継承し続けていたことを考えれば、無理のないことだ。
さて、新しいMPPマシンでは、複数のMVSが稼動し、処理能力を向上させた。RDBMSのDB2がこの上で最適に稼動し、IBMのダブリン研究所のデブリン博士が発明した「データウェアハウス」の発表に伴い、情報系システムの展開が可能となった。ビル・インモン氏をデータウェアハウスの父と呼ぶ、間違った考えがあるが、データウェアハウスは、IBMダブリン研究所のデブリン博士の論文をビル・インモン氏が紹介しただけだ。アジア太平洋地区でこのデータウェアハウス(正しくは、インフォメーション・ウェアハウスだが)を発表する幸運を得たのも、私だ(結構、威張ってます)。そして、メインフレームは大いに売れた。おそらく、90年代10年で5倍以上になったはずだ。
えっ、Vistaとなんの関係があるのかって。このS/390を発表した頃、ちょうど Windows 3.1 のプロモーションが始まっていた。当時は、私はPC/AT(MS-DOS)を使っていたり、日本初 Lotus Freelance とHP社製の「プロッター」でグラフィックスを駆使してプレゼンを作っていたが、Windows 3.1については、まあ、おもちゃの延長上と思っていた。晴海のビジネスショウで、各社のパソコンでWindowsが稼動しますという、プロモーションをやっていて「かわいいじゃん」とか思っていた。
いまや、日本の企業でも大してデータウェアハウスを駆使していない会社のデータウェアハウスなら、Windowsマシンの処理能力で事足りてしまうようになった。一方、メインフレームは過去のものになった(文句は受けますよ!あとでね)。
Windows の特徴は、グラフィクス・インターフェースをOSが管理している部分で、Macの方が進んでいたのだろうが、インテルチップ(もしくはIAチップ)を搭載しているPCならどの会社のでも動くのが、良かった。特に、同じ規格のディスプレイ上でね。GUIは人々の感覚にマッチし、米国でのMoneyなどの税金用アプリの展開とも相まって、売れた。
VistaもWindowsの基本設計上にある製品で、3D Windows などの成熟したOSとなっている。さて、マイクロソフトさんとしては、とにかく、Vistaを売りたいのだろうから、宣伝をじゃんじゃんやって、思いっきりプロモーションするだろう。
しかし、IBMがメインフレームの滅亡を止められなかったように、PCの売り上げの伸びは鈍化していくだろう。代わって表舞台に立つのは、どう考えても携帯だ。携帯には様々なOSがあるが、どこがひとり勝ちすると言うのではなく、OSはHWとアプリをつなげる裏方に後退する。代わって、JavaやRDBMSといったミドルウェアが中心になってくるだろう。
ユーザインターフェースも、規格通りのディスプレイではなく、様々なサイズ・形のディスプレイに、さらに音声が加わるだろう。あと10年以内に、あなたはこういった体験をするのではないか。
夕方、ガールフレンドと駅前で待ち合わせをして、つぶやく。
「コンピュータ。この辺の、うまくて安い、和風居酒屋で、マリエの好きそうなところを予約して。。。。」
「了解いたしました。2.5秒お待ちください。。。。」