過ぎ去っていくもの
以前も書きましたが、私はホテルジャンキーでもあり、特に、都市型のホテルが好きです。大阪や京都、その他の日本の都市にあるホテルや、アメリカやヨーロッパの都市にある、素晴らしい、伝統あるホテルに一生懸命お金を貯めて泊まる趣味があります。
都会のホテルには、人生の縮図があり、衣食住、恋愛、喜怒哀楽がそこにあります。ホテルパーソンの控えめで、しかも的確なサービスを受けるとき、サービス業の真髄を感じます。たとえば、ウィーンの5ッ星のホテルに宿泊したとき(会社の出張でしたが、招待側の担当マネージャがこのホテルを指定してくれました。)、チェックインした翌朝にレストランに朝ごはんを食べにいったら、「Mr. Takahashi」とちゃんと名前を呼んでくれました。日本人が私だけだったからか、ルームキーをチラッと見て名前を確認したのか。とにかく、名前で呼ばれるという事だけで、関心しました。
そんなホテルが世界中にはたくさんあり、プロのホテルパーソンのサービスを受けるとき、うれしくなります。たまにはプロでないひともいますけど。日本のホテルも素晴らしいホテルがたくさんあり、私は、東京のホテルもたまに泊まります。そんな中で好きなホテルのひとつだった「キャピトル東急ホテル」が今年11月30日をもって、営業を終了することとなりました。
東京オリンピックが開催される前の年、1963年に、東京ヒルトンとして誕生したキャピトル東急ホテルは、ビートルズが来日したときに泊まったホテルとして有名です。そのほか、国会議事堂に近いため政党の会議が行われたり、海外の有名人も多く泊まっています。
ここの李白バーには、李白の漢詩「月下の独酌」の一部分が大きく書かれたバックバーがあり、中華料理の「星が岡」はもともと北大路魯山人の「星が岡茶寮」の名前を継いでいます。そんなキャピトル東急ホテルが、営業を終了してしまうのは、寂しいことです。
東急ホテルは、東急ホテル、エクセルホテル東急、東急インと日本中にホテルを持ち、リニューアルを繰り返して、お客様の満足度を向上させる努力をされています。一方で、たとえば、札幌には、東急ホテル、エクセルホテル東急、東急インの3種類のホテルがったのですが、札幌東急ホテルを営業終了させるなどの企業としての経営上の英断もされています。札幌東急ホテルは、建物も古かったし、立地条件の問題からか人で込み合う状況ではなかったようです。
キャピタトル東急ホテルは43年でその歴史を閉じるのですが、あまりに短すぎます。また、思い出の場所がなくなるのはつらいですね。この前も、私の両親の「金婚式」をキャピトル東急ホテルの「星が岡」で祝いました。なんとか、もっと継続して欲しかったと思います。このホテルは鳥が翼を広げたような形をしており、外観も好きなのです。
4年後までに新しいホテルを建設して、ふたたび営業を再開するようですが、建物をつくりなおすにしろ、無機質なデザインではなく、優雅な外装や内装、そして、素晴らしいサービスを継承して欲しいものです。