ネイティブアプリからクラウドアプリへ
スマートフォンなどのスマートデバイス向けの技術で注目されているのが「HTML5」です。HTML5とは、Webの次世代の標準仕様で、インターネットブラウザを通じて様々なデバイス向けに、従来のHTMLと比べ格段に表現力が高く、格段に使い勝手の良い操作性を実現し、ネイティブアプリに近いレベルでウェブアプリを提供できます。開発者にとっては、一度の開発で様々なデバイスに対応できるため、開発コストを大幅に節約し、アプリ開発そのものに注力することができます。
HTML5普及の背景には、ブラウザの高速化、クラウドサービスの普及、そしてスマートフォンなどスマートデバイスの普及があげられ、調査会社のIDCでは2012年に全モバイルアプリの15%でHTML5を使用すると予測しています。また、IDC社と米Appcelerator社の合同調査「モバイル開発者向けの調査報告書」によると、2012年にHTML5を採用する開発者は78%にのぼると予想しています。アドビシステムズが、スマートフォン向けのFlashを撤退したのもスマートフォンにおいてHTML5の採用が進んでいることも背景としてあります。
スマートフォン向けのアプリストアの場合、iOSやAndroid、Windows Phoneといった各種のOS向けに別々にネイティブアプリとして開発する必要がありました。HTML5を採用すすることによって、OSに依存せずに、マルチデバイス対応のアプリケーションを開発することが可能となります。つまり、HTML5の仕様に従いウェブアプリケーションを開発し、クラウドのサーバーにアップロードすれば、アップルのApp Storeなどのアプリストアの審査を通さず、デバイスの種類を気にすることなく、アプリを配布することができます。
iOSやAndroid OSなどのエコシステム間の競争は、市場競争を促し、ユーザーに魅力的なアプリやコンテンツを提供できる環境を創っています。その一方で、アプリケーション開発者の負担を招くことになっており、開発者はOSフリー、デバイスフリーに対応する開発環境を求めるようになっています。
一方、HTML5は、音声認識や加速度センサーなどネイティブアプリと比較して機能面で劣る部分があり、標準化されていない部分もあります。そのため、採用に慎重になっている事業者も少なくありません。今後もアプリストアのネイティブアプリの市場は引き続き成長する中、ネイティブアプリがクラウドサービスと連携しHTML5技術を使ったウェブアプリ、つまり、クラウドアプリに置き換わることで、デバイスとクラウドが融合しHTML5のアプリが利用できる「モバイルクラウド」の潮流が加速していくことになるでしょう。
スマートフォン向けに開発したHTML5のコードを応用し、タブレットやPCだけでなく、電子書籍やスマートテレビなどでも活用の対象が広がりつつあります。電子書籍やスマートテレビなどの分野においても、iOSやAndroid OSなどのスマートデバイス向けのOSやHTML5の採用が進みクラウドサービスと連携することになれば、大きく産業構造が変化し、新たなイノベーションを生み出す機会を創造していくことになるでしょう。
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担当キュレーター「わんとぴ」
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