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ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

クラウドで変わる産業構造

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前回の「データセンター立地に関する各国の支援状況と日本の状況について」に続き、今回も、経済産業省が8月16日公表に公表した「クラウドコンピューティングと日本の競争力に関する研究会」報告書の内容について、少し整理をしてみたいと思います。

本報告書では、クラウドコンピューティングの経済効果について触れられており、需要創出効果や生産性上昇によって、2020年までに累計40兆円超の新サービス市場を創出が期待できる、としています。

また、産業構造の影響についてもユーザ側とベンダー側の視点で整理がされています。ここでは、ベンダー側の視点に少しフォーカスをあててみたいと思います。本報告書では、これまでの受託開発型の多重下請け構造から、大きく構造転換がはかられる点が、指摘されています。

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サーバやネットワーク機器等を提供するハードウエア事業者は、クラウド事業者の規模の経済(スケールメリット)からの価格交渉やIaaS事業者との協業によって、価格低下圧力が働き、また、汎用化が進行する点が指摘されています。ハードウエアがミドルウエアの領域までパッケージ化させて差異化をはかる可能性もありますが、差異化が他の環境との連携を阻害することによって、競争低下を招く点も指摘されています。

データセンター事業者は、手厚い運用・保守サービスにより高収益を確保するビジネスモデルから、規模の経済を働かせた薄利多売のビジネスモデルへの転換が求められるようになるとしています。そのため、日本においても大規模データセンターを運用するノウハウや建築技術の重要性が指摘されています。

また、システムインテグレーション事業者は、これまでの受託開発システム市場が標準化され、クラウドサービスに代替されることによって大きな構造変化に直面するとしています。受託システム市場の減少分を、クラウドとオンプレミスの連携やPaaSの提供、コンサルなど、様々な事業機会を生み出し、市場を創出することが重要となっていくでしょう。

地域の中小SI事業者は、クラウドの活用を含めた上流/カスタマイズ・サービスや運用・保守の展開、そしてSaaSの提供に活路を見出していく必要があるとしています。これまで地域でソフトウエア開発などをしていたものから、ユーザ目線でのコンサルティングを含めた全体最適化の対応が求められるようになるでしょう。

そして、パッケージ開発事業者やSaaSベンダは、様々なレイヤの事業者と連携を強めて事業を展開していくとしています。

クラウドが今後、本格的に展開していくことになれば、ベンダは市場での生き残りをかけて、事業構造の転換をはかるために、クラウドを前提とした、サービス開発、組織体制の再編、投資計画の見直し、そして、協業やM&Aなど、様々な検討が必要となってくるでしょう。クラウド時代は、規模の経済が働き、ベンダの勝者と敗者の優劣がはっきりとし、淘汰される時代となっていくかもしれません。

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