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人事領域(上流/elearing/ERP)コンサルでの人材開発/人事の一歩先の動向を考えます!

「睡眠不足」は、もはや働き方そのものの問題になっている

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マイナビ転職の「睡眠と仕事に関する実態調査」が非常に興味深い内容だった。
https://tenshoku.mynavi.jp/knowhow/careertrend/29/

調査によると、正社員の約4人に1人が「6時間未満睡眠」。さらに、約3割が「週5〜7日寝不足」と回答している。

特に興味深かったのは、寝不足の原因として、
・仕事時間の長さ
・通勤時間
・仕事や人間関係のストレス
・スマホや動画視聴

などが上位に並んでいた点だ。

つまり、睡眠不足は単なる"生活習慣"の問題ではなく、「働き方」「情報環境」「ストレス構造」とかなり強く結びついている。

個人的に特に印象的だったのは、「年収が高い人ほど、睡眠の重要性を認識している」という傾向である。

これは非常に示唆的だと思う。

かつては、「長時間働ける人」が優秀とされる時代があった。

しかし現在、特に知的労働の世界では、長時間労働そのものよりも、
・どれだけ高い集中力を維持できるか
・どれだけ複雑な意思決定ができるか
・どれだけ創造性を発揮できるか

の方が重要になっている。

実際、トップアスリートやグローバル企業では、睡眠は「休息」ではなく、"パフォーマンス戦略"として扱われている。

Google、Microsoft、Nikeなどでは以前から睡眠・回復・ウェルビーイングと生産性の関係が研究されてきた。

さらに近年は、WHOやOECDでも「睡眠不足と生産性低下」「メンタルヘルス」「事故率増加」などの関係性が繰り返し指摘されている。

RAND Europeの有名な研究では、日本の睡眠不足による経済損失は年間15兆円規模とも推計されている。
https://www.rand.org/pubs/research_reports/RR1791.html

これはかなり衝撃的な数字である。

しかも、この問題はAI時代になるほどさらに重要になる気がしている。

なぜなら、AIによって定型業務が自動化されるほど、人間側には、
・判断力
・創造性
・対人関係能力
・感情制御
・複雑な意思決定

といった"脳の高次機能"が求められるからだ。

つまり今後は、「長く働ける人」より「高い認知パフォーマンスを維持できる人」の価値が高まっていく。

これは、人的資本経営の観点でも非常に重要だと思う。

最近は、人的資本開示の中で、
・エンゲージメント
・ウェルビーイング
・健康経営
・ストレス指標

などが扱われるケースが増えている。

しかし、本来そこに「睡眠」がもっと入ってきても良い気がしている。

実際、睡眠不足は、
・離職率
・プレゼンティーイズム
・事故率
・メンタル不調
・医療費
・創造性低下

など、企業経営そのものに直結する。

にもかかわらず、日本企業では依然として「頑張っている=長く働いている」という価値観が根強く残っている。

これはかなり危険だと思う。

特にコンサルティングやIT、スタートアップなどの知的労働領域では、「疲弊しながら働くこと」が必ずしも成果につながらないケースが増えている。

むしろ、疲労によって判断力が落ちることで、
・ミス
・コミュニケーション悪化
・創造性低下
・意思決定品質低下

が起きる。

つまり、"働きすぎることで、逆に価値創出が下がる"現象が起きている。

これは、AI時代の働き方を考える上でかなり本質的なテーマだと思う。

AIが普及するほど、人間に残る価値は「疲弊してもできる仕事」ではなく「人間らしい高度な認知能力を必要とする仕事」になる。

だからこそ、睡眠や回復は単なる健康問題ではなく、「競争力」になっていく。

働き方改革というと、制度や残業時間ばかりが議論される。

しかし本当に重要なのは、
「人間が持続的に高い価値を出せる状態をどう作るか」
なのかもしれない。

AI時代の人的資本経営は、「どれだけ働かせるか」ではなく、「どれだけ良い状態で働けるか」を競う時代になっていく気がしている。

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