40年後の娘から後輩への手紙:東大さつき会奨学金授与式にて
40年前、私は大学進学にあたって、父からエールのバトンをもらった。さて、40年たって今度は、私がそのバトンを次世代に渡す立場だ。
東京大学に地方から入学した女性に授けられるさつき会奨学金の授与式でのスピーチは↓
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東大入学、おめでとうございます。
そして、さつき奨学金も受給なされて、さらにおめでとうございます。
素晴らしいの一言につきます。
きっと、みなさん、地元でも大変優秀と評価され、ずっと優秀でい続けたのだと想像します。そして、東大でも、きっとみなさんそつなく勉学もこなされるのではないかと思います。
だからこそあえて言います。
東大に入学したからこそ、安心して失敗をたくさんしてください。
これが一体なんの役に立つのだろうと思うような、一見無駄なこともたくさんしてください。
失敗しない二つのこつをご存じですか?
まず一つ目。
それは、何もしないことです。
何もしなければ失敗することもありませんものね。
東大を受けなければ、東大に落ちる、ということもありません。
さつき会の奨学金に応募しなければ、落ちることもありません。
失敗をしないこつ二つ目。
今の自分の能力で十分できることしか、しないことです。
100mを15秒で走る能力のある人が、常に100mを20秒で走れば、息切れすることはありません。怪我をすることもないでしょう。
でも、そういう状態が長く続くと、全力で走っても15秒をきれなくなってしまうと思いませんか?
とてもつまらないコツですね。皆さんに決して実行してほしくないことです。
まだ学生という立場、そしてこの東大という、とても守られた、恵まれた環境にいるからこそ、思い切って、今までしたことのないことにチャレンジしてみてください。
「優等生」という呪縛から解かれて、思いっきりはじけてください。
また、時には目先の利益を考えず、これがなんの役に立つのだろう、ということも楽しんでください。
効率と言うのは、ムダを省くこと、ちょっとでも目的から外れたことをしないことでもあります。
効率が要求される場面も人生ではありますが、せっかく受験という効率が求められる勉強を終えたので、思いっきりすっとんきょうなことを楽しんでみてください。若い頃にした寄り道は、人生を豊かにしてくれます。
チャレンジして、自分をストレッチすること、寄り道をして様々な経験を積むことでで、どこまでも成長していきます。
そのチャレンジや寄り道に、さつき奨学金が役に立つのであればこれほど嬉しいことはありません。
勉強はもちろんのこと、課外活動や友達との交流、そして、恋もしてください!
色々新しいことにチャレンジして下さい。
そんな皆さんを、さつき会はいつも暖かい目で見守っていることをぜひ知っておいてください。
この度は、東大ご入学、奨学金を授与なさって、誠におめでとうございます。
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私からエールのバトンを受け取った東大女子学生たち。
彼女らが40年後に後輩に渡すバトンの内容はどういうものなのだろうか??