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40年前の父から娘への手紙:一生の仕事をするためには・・・・

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私が高校3年生の夏に父の転勤が決まったが、流石に私は転校できず、父が単身赴任をした。その父から11月に長い手紙をもらった。

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受験勉強をねぎらう文章の後、こう続いている。
「進路については共通一次試験の結果にもよると思いますが~中略~それまでに真理子さんの考え方をまとめておいて貰いたい事があります。それは真理子さんが女性として将来どう生きていくかという事です。」


「お母さん達の時代と違って女性の職場進出・キャリヤウーマンの出現等、女性の活躍の場が広がっているのは事実です。しかし、現実の社会は、お父さんが見る目では、真理子さんが社会に出る時代はまだまだ女性、大学卒の就職難は続き、特に自分の専門を生かせる職場は少ないと思います。」


「自分の専門を生かして、一生の仕事として社会に出るためには、東大級の学歴を持つか、自由業(医者・弁護士など)として独立できる技術・資格を持つか、既に門戸が開かれている公務員(特に先生)になるしかないと思います。」


「それに人生のもうひとつの節目である結婚を考えた場合、仕事を続けるためにはお互いに転勤出来ないという条件がつきまといます。~中略~夫婦で職業を両立させるためには真理子さんは薬学部か歯学部か医学部に入って、お医者さんと結婚したら良いと思って、理科系を進めたわけです」

当時父はあるセメント会社の工場長だった。当時の中でも、決して女性進出が進んでいる職場ではなかったろう。その父が、娘のことを考えて、医者になったら?(父の親族は医者が多かった)とアドバイスしている。40年たって、読み返すと父の心配とあふれる愛情を感じる。

じゃぁ、当時の女子高生の真理子さんがどう思ったかと想像するに・・・こんな長い手紙をもらったことに照れくさく、親心は感じるものの、なんか選択肢を狭められた気分がして、素直に嬉しい、ありがたい、とまでは思えなかったのではないかと思う。

おまけに別の個所には

「お父さんとしては考えが古いと言われるかも知れませんけど、やはり女性の幸せは立派な男性と結婚し、良い子供を立派に育てることだと思っています。」

と書いてあるので、女の幸せは結婚ではないとかっち~ん!と来た可能性すらある笑

娘のことを考え、「結婚して子育てをしても続けられる仕事を選べ」、というメッセージなのだが、私は反発して、医者になりたくない屁理屈を並べていたような気もする。

結びに「高校三年生では、まだ人生の構図を画くことは出来ないと思いますが、お母さんとも相談し、人生の先輩の意見も参考にして、自分で悔いのない道を選んでください。帰ったときにまた話し合いましょう。」とある。

何を話しあったのか、今や全く覚えていない・・・・

結局私は医者にも薬剤師にも歯医者さんにもならず、医者ではない人と結婚して、父の懸念通り、単身赴任をさせることになってしまった。でも、父の予想通り、大学卒業以来ずっと働き続け、株式会社アークコミュニケーションズを経営し、翻訳やWEBの企画制作サービスを提供している。

あと1週間で米寿になるところで、父が天命を全うした。実家に戻り、この手紙を数十年ぶりに読み返した。


父の心配は色々あたっているところもあるのだが、期待には応えられた気がしている。この父の元に生まれた幸運を心から感謝し、私は息子にどういうメッセージが送れるものかと思いを馳せている。

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