私だけは運が良い
「ブリュッセルには駅が3つあるからね。待ち合わせは○駅。絶対間違えないでね」と念を3回以上押された。ビジネススクールを卒業してヨーロッパへ旅行に行くとき、アメリカで知り合ったベルギー人の友達が嫌というほど念を押した。というのも、その直前、私は待ち合わせの飛行場を間違えるという大チョンボをやらかしたからだ。
「いや~、あの時はさぁ、まさか飛行機が途中で別の飛行場に立ち寄るなんて思いもしなかったし。今度は3つ駅があるとわかっているんだから、いくら私でも絶対間違えないよ」と笑って答えた。
さて、約束した日に、ドイツのケルンからブリュッセルに向かった。3つ駅があるから、間違えないようにと、○駅で降りた。そして、待ち合わせの場所に向かった。
「駅の構内に車が展示してあるから、その前」とのことだったが、いくら探しても「車」など見当たらない。駅の係員に聞いたら、「車?う~ん、そこのポップコーンを売っている屋台が車といえば車だけど・・・」
ポップコーンを売っている場所に行って、試しに待ってみた。流石の私も、まさかこの屋台を車と言っているはずがないと気付く。
つまり、、、あんなに注意をされたにもかかわらず、私は、また待ち合わせの場所を間違えたのだ。
恐る恐る友人の自宅に電話する。お母さんが出て、「あなたを迎えに行ったのに会えないの?ごめんなさいね、待ち合わせ場所を私は聞いていないから・・・」と言われた。1時間ほど待って、また電話したが、友人からのメッセージは入っていなかった。
お母さんに「どうやら私が待ち合わせの駅を間違えたみたいなの。連絡も取れないし、一人で観光します。申し訳なかったと伝えてください」とお願いした。
友達をあてにしていたので、観光プランも立てていなかったが、気を取り直して、「グラン・プラス」に行ってみる事に決めた。グラン・プラスは町の中心に位置し、壮麗な歴史的建造物に囲まれた大広場。ぶらぶらと歩いていて、さて次にどこへ行こう?と思っていたら、いきなり、「Mariko!」と叫ばれた。
なんと、その友人が目の前に走ってきた。
「君が電話したすぐ後に、家に電話したんだよ。一人で観光に行くと母から聞いたから、いかにも日本人が行きそうなグラン・プラスに来たんだけど、この広いグラン・プラスで君を見つけようとしたのは、愚かな行為だなぁと気付いたところだった。あきらめて帰ろうと思って、振り向いたら君がいるじゃない。我ながら、びっくりしたよ」
いかにも日本人が行きそうな観光地と言われて、なんだか不満。でも、私ってなんだかんだ言っても、待ち合わせで会えているよなぁ、と自分の運の強さと、あれだけ言われてもやっぱり間違えた私の方向音痴の両方にいたく感心した。
今なら携帯電話があるから、待ち合わせの場所を間違えても大丈夫なのだが、最近は間違えないようになった・・・・と思う。