2021年、日本企業のDXは進むのか?
コロナに明け、コロナに暮れた2020年でしたが、2021年もとりあえずはコロナで明けました。そのような中、12月28日、まさに仕事納めの日に、経産省からDXの進捗についてのレポートが公開されました。
2018年に「2025年の崖」についてのレポートを公開してから2年。崖を克服するための施策が企業でどの程度進んでいるのかを調査した結果をまとめたものです。(調査日は2020年10月)2025年まで5年、全体の1/3くらいが経過したわけですが、DXはどの程度進んだのでしょうか?
全然進んでいない!
結論からいうと、「全然進んでいない!」ということのようです。レポートの冒頭に「DXレポート発行から2年が経過した今般、DX推進指標の自己診断に取り組み、結果を提出した企業の中でも、95%の企業はDXにまったく取り組んでいないか、取り組み始めた段階であり、全社的な危機感の共有や意識改革のような段階に至っていない」とあるように、全体的にはまったく進んでいないと言って良い状況です。一方で着実な成果をあげている企業もあることから、経産省は「2極化」とも書いていますが、95:5では「2極」というのもちょっとなあ、と思います。
ただ、この結果はある程度予想はされていました。私が昨年2月に書いたエントリでは、
電通デジタルの調査を引いて、DXが「完了した」と答えた企業が8%だと書いています。(「完了するのか?」という問いは置いておいて、8%というのは5%とそれほど離れてはいません)そして、
では、Dellの調査から
「DX推進により財務的な貢献ができている」とした企業はわずか5.9%
という数値を引いており、これも5%に近いですし、44%のPoCは「取り組み始めた段階」にあたるために95%に含まれていると考えれば、かけ離れた調査結果ではありません。つまり、調査方法や設問は様々ですが、現状としてはDXに成功している(と自己認識している)企業は全体の5~8%くらい、ということなのでしょう。
ただ、問題はこれらの調査(2019年末)と2020年10月の調査で数値が変わっていない、ということでしょう。こちらのエントリにも書きましたが、
既存企業がDXへの道筋を掴みかねているということなのでしょう。「DX疲れ」などと言う言葉も目にするようになりました。
企業文化の刷新が要
今回のレポートで注目されるのは、「コロナ禍で明らかになったDXの本質」として「DXは、ITシステム更新の問題から企業文化刷新の問題へ」ということが上げられている点です。
「素早く」変革「し続ける」能力を身に付けること、その中ではITシステムのみならず企業文化(固定観念)を変革することの必要性が明らかに
とあり、これが「DXの要」であるとされています。前回の「2025年の崖」レポートは、主にレガシーなシステムの刷新を訴えていましたが、今回のレポートでは「企業文化の変革」が前面に押し出されたわけです。
しかし、これまで慣れ親しんだ企業文化を刷新するのは容易ではありません。また文化を変えていくことは、経営者と従業員が一体となって持続的に取り組まなければならない課題です。こちらにも書いたように、DXとは終わりのない改善のプロセスなのです。
経産省の中間報告の最後に、中長期の戦略として「DX人材の確保」があり、「変革を主導・けん引する人材をユーザー企業内に確保」することが求められています。そして最後に「恒常的なスキルのアップデート(リスキル)が推進される環境の整備」というポイントが挙げられています。DXに「完了」はありません。常に現状を疑い、スキルを磨き、改善を続ける。それこそがDXを前に進める方法なのではないでしょうか。
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