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10年目の答え合わせ ~AIに代替された職業は

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米Microsoftが「また」リストラを発表しました。今年3回目になるそうです。

米マイクロソフト、従業員9000人を削減 IT業界でリストラ進む

米企業でリストラが発表されるのは珍しいことではありませんし、Microsoftも過去に何度もリストラは行っていますが、今年のリストラはちょっと様相が違うようです。Microsoftの業績は全然悪くありません(むしろ過去最高)が、「変動の大きい市場で会社とチームが成功するための最適な態勢を整えるため、必要な組織改革を継続的に実施する」ということで、将来へ向けての変革であることが示唆されています。別の記事では、Microsoftはコストを削減してAI投資に充てる、と書いています。

そしてこれはMicrosoftだけではなくIT業界全体の動向でもあるようです。記事には衝撃的な数字も出ています。

マイクロソフトをはじめとするIT各社が人工知能(AI)を活用して業務効率化を進めている。マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は今年に入り、同社のコードの20~30%がAIによって生成されているとし、AIのインフラに巨額の投資を行っていると明らかにしていた。

Microsoft社内のコードの20-30%がすでにAIによって生成されている、ということは、単純に考えれば、プログラムを作る人が20-30%不要になる、ということでしょう。今年5月に行われたリストラでは、その40%がソフトウェアエンジニアだったということです。

また、その他のリストラ対象には、当然営業職なども含まれます。つまり、AIによって業務が効率化した結果、AIを提供している会社そのものの従業員がリストラされている、ということなわけです。

business_kubi.png今から10年前の2015年、ディープラーニングが世の中の注目を集める中、野村総研がひとつのレポートを発表しました。

日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に

この頃は第3次AIブームと呼ばれ、AIが社会を変える、という期待と共に、それによる社会変容によってビジネス環境が変わり、多くの職業がAIによって代替され、人間は失業してしまうのではないかという不安も高まっていた時期です。

こういった「予測モノ」が100%当たることはありませんし、思考実験のようなものですから、後から目くじら立てても仕方ないのですが、Microsoftのニュースを見て「えっ?そっち?」と思ったので、改めて見てみました。レポートは国内601種の職業について代替可能性を試算し、「人工知能やロボット等による代替可能性が高い業種」を100種、「可能性が低い業種」を100種挙げています。

結果、可能性の高い業種にも低い業種にも、「ソフトウェアエンジニア」や「プログラマ」は入っていませんでした。たまたまなのか、忘れていたのか、意図的なのかはわかりませんが、IT関係業種はそもそもリストされていないのです。

いかに未来予測が難しいかを示す例ではあるのですが、いかに生成AI(10年前には存在しなかった)のインパクトが大きかったか、ということを示してもいます。当時は私を含め「プログラミングのような知的な作業はAIには無理だろう」と漠然と思っていた人は多いはずです。それが、真っ先にリストラの対象になるとは、「不確実性の時代」を感じさせます。

 

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