【▼16%】 好調デジタル家電業界を覆う、サンドイッチ価格構造
デジタル家電が、このところの景気低迷で販売数が激減し、価格競争に陥っています。iPodに代表される携帯型デジタル音楽プレーヤー、ミニノートが引っ張るパソコン、また地デジ移行に背中を押されてきた大型液晶テレビなど、これまで販売を牽引してきた商品も、ここにきて低迷しているようです。株価がバブル崩壊後の安値を更新する現在、日本中で低価格化による消耗戦が展開されています。
家電量販店の価格調査を行っているGfKジャパンによると、2月のデジタル家電品の平均販売価格は、次のようになっています。
液晶テレビ(32型) ▼【16%】
デジタルカメラ ▼11%
パソコン ▼21%
音楽プレーヤー ▼15%
BDレコーダー ▼28% (数字はいずれも昨年2月期との比較)
たとえば大型液晶テレビ。地デジ移行+北京五輪で盛り上がった昨年夏をピークに、秋口から景気減速に歩調を合わせるように価格低下が進み、年末商戦では10万円の価格を割り込み、この2月には約94,000円まで下落したそうです(32型)。パソコンもミニノートが奮闘するものの、他製品に比べて低価格のため、販売単価を押し下げています。最近、厳しい数字にちょっと慣れてしまったような感もありますが、私が言うまでもなく、2ケタの落ち込みが事業に与える影響はあまりに大きいはずです。
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一方、景気減速の引き金を引いた円高で、原材料や部品価格の輸入原価も下がっています。これが利益確保の源泉となっていたのですが、ここにきて絶対的な販売数量の減少で在庫調整も進み、また部品メーカーも減産を本格化したことで、ここにきてパーツ原価の低下は下げ止まっているようです。
たとえば、デジタル音楽プレーヤーなどに使われているNAND型フラッシュメモリーは、2月に入って10ヶ月ぶりに上昇に転じ、主力品の大口出荷価格は、1月より20%も上昇(日経新聞2009年3月11日付けより引用)。パソコン向けのDRAMも半年ぶりに上昇に転じています(同)。
このように、最終製品の販売価格が低迷する中で、部品価格は底打ち感を強めており、価格構造として、利益を圧迫する状態に陥っています。原価は上昇しているのに、販売価格は低下するというサンドイッチ状況から、家電店や家電メーカーは、軒並み赤字決算を余儀なくされているわけです。販売価格の低下を販売数量の増加で補うという、これまでの方程式は、まだまだ成長過程にあったはずのデジタル家電品分野でも、すでに成り立たなくなっているのです。
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これまでのエントリーで、景気低迷や低価格化の話題を、いろんな角度から取り上げてきました。今年に入ってからだけでもこんなにありました(なんだか不景気特集みたいですが)。
・【4,500億円】 トヨタにインサイトは作れない…んだろうか
・【12年】 パイオニアのプラズマ完全徹底から何を学ぶか
・【57.4%】 このご時世に好決算…の企業に共通する、単純な法則
・【49,980円】 ミニノートはミニである、という原点
・【本体0円】 プリンターは、携帯電話と同じ道をたどるのだろうか
・【8,570円】 プリンターは毎年買い換える時代…かもしれない
・【500万台】 新年早々景気のいい話~新車が売れない恩恵で予約が殺到する店
共通しているのは、どの分野においても、勝者は限られているという厳しい現実です。低価格かつ高商品価値で、顧客の満足度を満たす少数の商品(販売店・メーカー)だけが、利益を独占するという図式が、まだまだ成長過程だと思ってきたデジタル家電の領域でも成り立ってしまうのでしょうか。そうだとすれば、デジタル家電業界全体としては、成熟する前に正念場を迎えていることになります。消費者にとって、低価格化はうれしい競争激化なのかもしれませんが、あまりに急激な経営環境の悪化は、持っているポテンシャルをも飲み込んでしまう危惧をはらんでいます。
今日、久しぶりに会った友人の金融コンサルタント会社COOは、「ピンチはチャンス、とはいうものの、それはある程度の収益基盤や利益構造があって成立する話。一番怖いのは、何より、挑戦する意欲を奪ってしまう空気だ」と、真顔で話していました。たとえば、商品構成を絞り込んでいるパイオニアのように、この先、あらたなる再編が巻き起こっても不思議ではないのかもしれません。。。
※追記 3月13日午前、ジャパネットたかたのTVショッピングで、32型液晶TV(東芝REGZA)が、69,800円で販売されてます。ちなみに47型で119,800円、42型で99,800円だそうです。低価格化が加速しちゃってますね。