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【12年】 パイオニアのプラズマ完全徹底から何を学ぶか

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 パイオニアが2月12日付けのプレス発表で、構造改革の一環として、プラズマディスプレー事業からの完全徹底を表明しています。

  • ホームエレクトロニクス事業について ― ディスプレイ事業からの完全撤退
    ディスプレイ事業については、現在販売している商品を最後として、今後の自社開発を中止し、平成22年3月までに撤退します。市場変化は想定を大きく上回っており、このままでは損益改善を見込めないとの結論に達し、撤退を決断しました。

   ※パイオニア発表2009年2月12日付け報道資料「構造改革についてのお知らせ」より一部抜粋

 同社が世界で初めて50型の大型プラズマディスプレーを発売して華々しく参入したのは1997年のこと。2004年にはNECからプラズマ事業を買収して体制を強化したはずでした。しかし2008年には生産終了を発表。結局わずか【12年】で完全撤退したことになり、あらためて市場の変化スピードの凄まじさを痛感します。

 同社は、この約1ヶ月前の1月14日、一時代を築いたレーザーディスクの生産終了をアナウンスしたばかり。矢継ぎ早に事業見直しを図り、選択と集中を決断したようです。プレス発表の席で撤退を表明したパイオニアの小谷社長は、今回の経営判断が苦渋の選択であったことを切々と訴えています。

  • 国内外で高い評価を持つKUROをはじめ、技術面では自信を持っている。技術者たちの思いも十分わかっているつもりだ。プラズマテレビ事業は、続けられれば続けたいと思っていた。なんとか続けられないかと手を尽くした。ただ、昨年10月から急激も経済環境が悪化し、薄型テレビの価格下落が、想定をはるかに上回るスピードで進展した。我々が進める構造改革のスピードでは損益改善ができないことが明白になった。パイオニアが再び立ち直り、光輝くにはこの判断しかなかった

   2009年2月23日付けのnikkeiTRENDYnetより一部引用

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 この記事には『黒にならなかった「KURO」、先駆者パイオニアがテレビ事業完全撤退』と表題が付けられています。同社のプラズマテレビ事業は、立ち上げ以来、結局一度も黒字化することなく撤退に至りました。この「KURO」というブランド名に、「黒」色が際立つという本来の意味に加えて、「黒」字化という願いを託したのかもしれませんが、残念ながらそれは叶いませんでした。

 元々、高い技術力で、それこそ「クロ」ウト好みの製品を送り出してきたパイオニア。今後は、包括提携を結んでいるパナソニック製品に、パイオニアの技術を注ぎ込むことしかできないのかもしれません。ただ昨今は、そのパナソニックでさえも赤字にしてしまうほどの厳しい環境下にあります。

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 低価格化という波は、今やテレビに限った話ではありません。これまでは、高い技術力で高付加価値を生み出せば市場に受け入れられるはず、というのが日本メーカーの戦い方でした。しかしながら今は、パイオニアの例を出すまでもなく、技術が高いだけでは生き残れない時代だということを認めざるを得ません。先のエントリー(【57.4%】 このご時世に好決算…の企業に共通する、単純な法則)で好決算企業の話題を取り上げましたが、そこには低価格をむしろ強みにし、一人勝ちを納める企業が名を連ねていました。どの企業も同じ戦略ということはありえませんが、好業績企業が好調な理由、不調企業がうまくいかない理由には、それぞれどこか共通点があるようにも思います。。。

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