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【本体0円】 プリンターは、携帯電話と同じ道をたどるのだろうか

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 先日、プリンターの価格低下を取り上げたエントリー 【8,570円】 プリンターは毎年買い換える時代…かもしれない において、いくつかコメントをいただく中で、いろいろ考えさせられました。そこでもう少し、プリンターのこれからを考えてみたいと思います。

 インクジェット方式のカラープリンターが10万円を切ったのは、私の記憶が正しければ、今から約15年くらい前のことで、HPのデスクライターシリーズだったと思います。その頃私は、はじめてのPCとなるMacintosh LCⅢを買い、勢いでカラープリンター99,800円を購入したので、よく覚えています。当時は「カラーが10万円以下なんて画期的!」と喜んでました。この後、カラー・A4・インクジェットプリンターは、家庭への普及期に突入。坂を転げ落ちるがごとく価格が下がり、上位モデルで4~5万円という時代がじきに訪れます。

 その間に、プリンター性能も大きく進化しています。まるで写真みたいな高品質・縁なし印刷可能なプリンターが登場したかと思えば、次はスキャナー機能を追加してコピー機としても使える複合機タイプが普及。こうした大きな進化を遂げつつも、プリンターの本体価格が5万円を超えることはありませんでした。そして高品質化と多機能化が一段落した昨年あたりから、ついに価格競争に突入したというのが、おおざっぱな流れだと思います。

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  • プリンターは格安でばらまいて、インクで儲ける商売と聞いたことがあります。そのうち0円携帯電話(通信料で儲ける)のように、プリンター【0円】なんていうことも起きるかもしれないですよね。

 これは前回のエントリーで、きょこさんからいただいたコメントです。確かに消耗品のインクでランニングコストを稼いでいるというのは、キヤノン・エプソンともに認めている話ですね。

 ただ、最近はリサイクルインクや充填式インクも多数登場しており、家電店のインク売場で、堂々と並んで販売されています。写真品質が必要なければ、また多少の手間を惜しまなければ、高い純正インクでなくとも問題ないと考える人も増えているのです。またリサイクルインクの品質自体も年々向上しています。

 こうして考えると、携帯と同じようにはいかないのではないでしょうか。つまり、たとえプリンター本体の価格を安く(極端にいえば0円に)しても、インクで稼げるかといえば、残念ながらそうは甘くないと思うわけです。

 もちろんプリンターメーカーもそこは承知。リサイクルが効かないような独自形状のインクカートリッジにして対抗する可能性もあるでしょう。

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  • ひげ剃りと替え刃の関係と一緒ですか。いわゆるジレットモデル。このビジネスモデルを打破するプリンターが出てこないと、ランニングコストはかさむ一方ですねぇ。

 こちらはcauldronさんからのコメントです。ジレットモデルといえば、マーケティングの定番モデルですね。確かにプリンターも、インクという消耗品でしか儲からない商品だと考えれば、ジレットと同じモデルだといえるのかもしれません。

 ただ、プリンターはキヤノンとエプソン以外にも競合がたくさんある商品。現に本体価格急降下の引き金を引いたのは、デルであり、HPであり、ブラザーでしょう。つまり、プリンター本体が安くなり、インクで儲けようと思っても、近い将来、安いインクで回せるプリンターをキヤノン・エプソンの競合他社が出してくる可能性が高いのではないでしょうか。禁断の果実をかじってしまう日が必ず来るような気がするわけです。こうなると、単なる消耗戦にしかなりません。

 当然、キヤノン・エプソンの両巨頭は、価格競争に巻き込まれるのではなく、高品質・高機能・高付加価値で、高い価格で売れるプリンターを出そうとするはずです。そうすると、今度は価格が下がって普及期に入りつつあるカラーレーザー機と競合する懸念がぬぐえません。

 そもそも家庭での印刷に、写真なみの印刷品質を求めない人は、本体が安くてインクも安いリサイクル品などに流れるでしょう。またどうしても写真品質を求めたい場合は、コンビニやDPEに行けば、1枚30円程度でプリントできちゃいます。この業務用プリンターも劇的に設置店が増え、利用者が急増しています。

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 こうしていろいろ考えてみると、高価格なプリンタを家庭で購入する必要性が低くなっている気がするんですね。ならば消耗品でランニングコストを稼げるかといえば、それも厳しい時代が来つつある。つまり、どうやっても、今のビジネスモデルでは限界があるということなんでしょう。

 携帯電話の世界では、ソフトバンクがビジネスモデルをベースから変えて成功し、他社が追撃。結果、携帯本体の価格0円時代に終止符を打ちつつあります(完全ではありませんが)。プリンターと携帯電話、ひげ剃りは、同じには考えられない部分もあるでしょう。でも、ビジネスモデルから変えないと、将来先細りになっちゃうような気がしてなりません。。。

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