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【500店舗】 巨人ヤマダ電機の未来予想図(3)~まさか…ドラッグに主婦が…

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 さて、ヤマダ電機のリニューアル店舗に日用品がずらりと並んでいる光景から、2回にわたって巨人ヤマダ電機の将来戦略を考えてきましたが、いろいろ調べていくうちに、やっぱりそうか、というニュースに行き当たりました。

 実は今年8月に定款を変更し、家電量販店として初めて、医薬品の販売参入を表明していると日経新聞が伝えています。

  • ヤマダ電機、大衆薬販売に参入…6月末の株主総会で定款を変更し、医薬品販売を事業分野に加えた…

     ※2008年7月17日 日本経済新聞より一部引用

 この背景には、2009年春に控えている改正薬事法の施行があると考えられます。今回の改正により、医薬品の分類が変わり、そのリスクによって第1類から第3類までに分類され、この内第2類・3類に属する一般医薬品(大衆薬ですね)については、薬剤師不在の店舗でも販売が可能になります。医薬品と一口でいっても、処方に留意し、詳しく説明を要するものから、副作用も限定され、販売に際して厳格な指導や説明が必要ではないものまであります。そこで改正薬事法では、これまで十把一絡げだった一般医薬品を3分類し、第2・3類に関しては、新たに設置された“登録販売者”を常駐させれば販売可能になります。この規制緩和により、スーパーやホームセンター、コンビニまでもが一般医薬品の販売に大挙して参入すると予想され、ドラッグストア業界は戦々恐々としているわけです。

 そこで、ヤマダ電機。すでに本社のある群馬県・高崎市の新店舗には、200平方mのドラッグ関連品売場を開設し、薬剤師が常駐して医薬品の販売を開始。また先回のエントリーでも紹介したように、既存店舗でも日用品やコスメなどドラッグストア的商品展開を始めています。これらはまだ試験販売の段階かもしれませんが、この先の戦略に、改正薬事法を見据え、家電店+ドラッグストアの展開を目論んでいると考えるのは、ごく自然な予想ではないでしょうか。

 ヤマダ電機の店舗数は、直近のデータで直営店315店舗+FC店185店舗の【500店舗】を数え、全国47全都道府県を網羅しています。ドラッグストア業界トップのマツキヨが690店舗ですから、約7割にも相当します。もし、ヤマダ電機の全店舗に“ドラッグヤマダ”が誕生し、医薬品や日用品の販売競争に加わることになったら…ドラッグストア業界の勢力図にも少なからず変化が出るでしょう。ヤマダ電機としては、お得意のポイント還元を武器に、家電品+ドラッグの強力タッグで、お父さんもお母さんも息子さんも娘さんも、みんなが欲しいものを低価格で品揃えして、一挙に集客することを狙っているわけです。狙い通りになれば、“テレビを買って、もらったポイントで化粧品と頭痛薬を買って(もらって)帰る”みたいな光景が見られることになります。

 さらに勝手な予測ですが、ヤマダ電機としては、ドラッグ関連品はあくまでも来店機会を増やすための商品であり、ポイント有効活用を促進するための商品であり、一家の主婦を呼び込むための商品だと位置づけているのではないでしょうか。つまり、本丸はやっぱり家電品であり、ドラッグストア的品揃えは、家電品の売上げを伸ばすための戦略ではないかと思うのです。だとすれば、ドラッグ関連品については、かなり低価格で勝負してくると予想します。これは消費者には魅力であり、また他のドラッグストアにはかなりの驚異となるでしょう。う~ん、これは予想というより希望、ですかね。

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 余談ですが、前のエントリーで紹介した近隣のリニューアル店舗で、日用品の売場責任者から、こんな話が聞けました。

  • 今回のリニューアルで日用品の売場に300平方mを使い、かなり戦略的な投資をした
  • リニューアル後の来店者は、女性比率が2割以上増えている
  • 首都圏の大規模家電店は、日用品などHC的な商品展開で集客を図るのは常套手段
  • ヤマダの他店舗では、自転車や原付販売、自動車買取など、いろんな実験をしている

 ひょっとしたら、ヤマダ電機という社名すら、数年後には変わっている…のかもしれませんね。。。(完)

  ※巨人ヤマダ電機の未来予想図(1) も是非ご覧ください
  ※巨人ヤマダ電機の未来予想図(2) も是非ご覧ください

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