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【1枚】 トヨタの「パワーポイント自粛令」に少し賛成、に私も1票!~削ることの大事さ

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 実はわたしもこのニュースでエントリーを書きかけていたところ、すでに山口陽平さんのエントリーでいろんな意見が出されているのを読ませていただき、お蔵入りを決め込んだわけですが…少し議論がそれるかもしれませんが、パワーポイントの使用については思うところがあって、やっぱりエントリーさせていただきます(優柔不断ですみません)。

「社内の意識はまだまだ甘い。昔は1枚の紙に(用件を)起承転結で内容をきちんとまとめたものだが、今は何でもパワーポイント。枚数も多いし、総天然色でカラーコピーも多用して無駄だ」と苦言を呈した・・・以上、2008年05月20日付けDIAMOND onlineより引用

 この発言にある【1枚】の企画書を、私は何度となくトヨタさんから頂いた一人です。そこには課題、解決の方向性、解決策、その検証法などがコンパクト(というより、ぎっしり)詰め込まれ、いつも感動していました。大事なポイントには囲み罫がついたり、文字が太くなったりと、限られた方法を駆使し、伝えたいことがまとめられていました。古くは企画書作りがワープロベースだったから、なのかもしれません。山口さんが書かれていたように、1枚の企画書に仕上げるのと、複数枚が連続したパワーポイントの企画書とは、まったく作り方が違います。1枚にまとめるということは、伝えたいことを整理し、優先順位をつけることを意味します。つまり、この提案で一番大事なことは何なのか、それを決めることがより大事になる。限られた1枚の中に、どんな情報を詰め込むのか。どこを太字にするのか。どこを罫線で囲むのか。言いたいことが絞られた提案には、強さがあります。つまり、企画書を作る作業は、いろんな情報から、一番言いたいことを絞る、“削る”作業だと思うのです。

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 一方でパワーポイントによる企画書の作成プロセスは、どうしても“加える”作業になりがちです。スライドをどんどん追加して、企画書を仕上げていくのが典型的な作業フローだと思います。こうなると、いつの間にか枚数がどんどん増える。力の入った提案になればなるほど、こうした傾向は顕著です(体験談ですが)。たしかにスクリーンを通したプレゼンテーションをイメージした場合、パワーポイントの視覚機能も効果的です。でも、少なくとも企画を練る段階では、何が言いたいのかを【1枚】にまとめることの大事さを忘れないようにしたいと。

 もっといえば、パワーポイントに慣れてくる(=依存する)と、無意識のうちに弊害が生まれてきます。たとえば、企画書を書こうとするときに、いきなりパワーポイントを立ち上げて、背景を決めて、レイアウトパターンを決めて、、、みたいな行動をする方が多いんじゃないでしょうか。こうなると、パワーポイントでできることを前提に、企画書を書くという作業になります。無意識の内にそうなっていると思うんです。パワーポイントは、本来、プレゼンという“仕事”の“道具”に過ぎないのに、いつの間にか、“道具”に“仕事”が規定されている。もちろん、これはパワーポイントに限った話ではありません。デザインをするときに、まずマックを立ち上げちゃうと、いつの間にか、イラストレータやフォトショップでできることしかしなくなってしまうのと同じです(すみません、広告出版業界限定の表現かも…)。

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 かつて私が師と仰いだコピーライターの仲畑貴志さんは、“削る”大事さをいろんなところで語ってくれていました。広告の世界は、1本のキャッチコピーで勝負するわけで、究極の“削る”作業をしています。私はこの方法をカラダにたたきこんできたつもりですが、未だに成就できません。でも、どんな業界にあっても、提案の企画書を作るということは、そういうことじゃないかと思っています。。。

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