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パワーポイント自粛令に少し賛成

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「トヨタグループが『パワーポイント』自粛令!?」というニュースを見かけました。

リンク先によると、トヨタの社長が「社内の意識はまだまだ甘い。昔は1枚の紙に(用件を)起承転結で内容をきちんとまとめたものだが、今は何でもパワーポイント。枚数も多いし、総天然色でカラーコピーも多用して無駄だ」と苦言を呈したそうです。

渡辺捷昭社長は愛知県豊田市出身ということで、1円をケチるという県民性を反映した発言のように感じなくもないのですが、主旨はおそらく「パワーポイントを使うと資料の枚数が無駄に増える上まとまりがなくなりやすい」ということなのだと思います。

パワーポイントの資料はプロジェクターで見るにしろ、紙で見るにしろ、スライドとスライドの間に何も無いということが重要です。漫画を読むときにコマとコマの間を連想するように、スライドとスライドの間にあるのが順接的なつながりなのか、逆接なのか等の情報を見る側で想像する必要が出てきます。

結果、自分の頭を働かせながら話を聞くことになるので心に残るものになるのでしょう。(もちろん完成度が低いと意味不明になって大変ですが。)ところが聞き手がそのような苦労をしなくて済むようA3の大きな紙にひとまとめにして1スライド分の要素それぞれを矢印でつなぐような構成にするとなると大変です。スライドとスライドのつながりは必ず1対1ですが、大きな紙の資料は2次元的な広がりがありますので要素がn対nのネットワーク状に相互作用を持ってきますし、つながりができたところには言葉でその説明をつける必要が出てきます。聞き手が楽になる分、作り手が努力をしなくてはなりません。

こういったことから難しいA3資料の作成を避けてパワーポイントに逃げる事例が多かったのではないでしょうか。もちろんパワーポイントで表現することが望ましい資料というのもあるでしょうから、今回の発言で咎められたのはパワーポイントそのものというよりは、そういった逃げの姿勢ではないかと思います。

また、発言の後半部分を見ると「カラーコピーを多用して無駄だ」と言われています。私がいるフロアには白黒プリンタとカラープリンタがありますが、白黒プリンタのほうが台数が多くて混雑しません。ですのでいつの間にか資料を作るときはまずモノクロで作成することが習慣になりました。図表の部分などはカラーで作ると強引なくらいに自分の主張を正しく見せる事がし易いのですが、白黒で作るとそういった無茶な説得力が弱まる気がします。

私は普段、こうして資料を作ることが多いです。

モノクロで図表を作り、自分で確認するレベルでは白黒プリンタを使う

完成度が高まればあっさりと着色してカラープリンタで確認する(液晶上の色合いとプリンタの色合いが乖離していることがあるので注意する)

という流れです。いきなり総天然色で作るとついつい色数が増えてしまいますが、後から色を載せる方式で絵作りを行うと3色塗り分け問題というわけではありませんが3色くらいに抑えられる事が多いように思います。で、元1円をケチる県民として「やった。無駄なカラー印刷を減らせた!5円得した。」という達成感も得られるという良い事尽くめです。

おまけに、名古屋系ブログを書いておられるTOPPYさんのサイトで、名古屋人のケチっぽさが昔からのものであることを感じるエピソードを見つけました。引用中の”清正”は賤ヶ岳七本槍の1人である加藤清正のことで、私と同じく名古屋市中村区の生まれです。

城主だった石川玄番頭は、遠くからわざわざ寄ってくれた清正に対して、2頭の馬を見せ「土産にどちらでもお気に召した方を1頭差しあけましょう」と言いました。

すると清正は「貴殿の目利きで取り立てた駒(馬)を、我らほどの目利きで選んでは誠に申し訳ない」と言い、

そしてなんと、「2頭とも申し受けるのが礼儀と心得る。」と言って、2頭とも持って帰ってしまった

TOPPYのくびったけ@名古屋 | 戦国と泰平が隣り合わせ・歴史の証人-国宝松本城
http://blog.toppy.net/?eid=789972

これは清正公もさぞかしニヤニヤしたことでしょう。もちろん色々な性格の人がいますけれども、愛知県の多くの人はこの「得した」という感じに弱いんですよね。

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