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― IT部門とマーケティング部門のハザマで ―

【Coffee Break】PIMと翻訳メモリとの連携で翻訳コストが劇的に下がることを知る人は少ない(今のところ)

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 40代に外資系IT企業に携わっていた頃、製品のドキュメントを日本語にローカライズする必要があり、本社と連携している翻訳会社に発注を行いました。ソフトウェアは前のバージョンの機能を引き継ぎ、新しい機能が付加されることが多いので、一度翻訳を行った語句は再び翻訳を行わないように「翻訳メモリ」で管理しています。正確には翻訳メモリが管理できる翻訳会社にグローバルに発注します。一般的に翻訳はWord単位の単価なので、何度も翻訳し請求されても困ります。翻訳メモリがあると、バージョンアップの際の翻訳料金は、初回より30%以上のコストダウンになることもあり、納得の合理性です。

 30代でイスラエルのテクノロジーを日本にビジネス展開していたときは、翻訳メモリの存在を知らず、マニュアル類は安価な翻訳会社に発注していました。当然、バージョンアップの際には以前に翻訳した語句も翻訳見積り金額に入っている訳です。これは私の無知が故の失敗で、翻訳メモリの存在を知っていれば、それを管理できる会社に発注したことでしょう。

 私のように翻訳メモリの存在を知らない人はいないだろう、と思っていましたら、実は意外とその存在が知られていないことに最近気が付きました。理由はいろいろあるのでしょうが、ドキュメントを作成する部門の人は翻訳メモリの存在を知っていたとしても、Webサイトを運用する部門の人にとり、グローバル化するニードは最近出てきたものなので、翻訳という業務をドキュメント部門のように連続的に行うことは今まで必要なかっためか、翻訳メモリのことをご存知ないのです。

 「MDMとPIMの違い(SoRとSoEの中間はPIM)を知る人は少ない(今のところ)」で、いわゆるWebサイトを運用する部門はマーケティング部門で、グローバルなPIMを構築する部門はIT部門の方が全体最適的にはスムースではないか、と示唆しましたが、この観点からすると翻訳メモリを司るシステムはPIMに連携していた方が、従来のマルチカントリーの展開からグローバルに最大パフォーマンスを追求する経営スタイルに変化しようとしてるグローバル企業(eg. 外国人役員や外国人CEOの登用、英語の公用化、欧米企業のM&A、ダイバーシティマネジメントの推進、これらの第一歩としての女性の活用など)のニードに合致します。

 現在はドキュメント部門が翻訳メモリの存在を知り、Webサイトを運用する部門に少しづつ広がり、IT部門はほとんど知らない、というのが一般的な現実です。しかし、グローバルなPIMを構築する際に当然ワークフローを定義し運用するため、その中に翻訳会社も入れ、多言語コンテンツのワークフローを定義できる仕組み(eg. SDL WorldServer)とPIMやCMSと連携しておけば、グローバルにもトータルの翻訳コストは激減できるはずです。

 さらに、グローバル製造業だけでなく、ドメステックなビジネスが主体の企業でも訪日インバウンドマーケティングを考えると、訪日前の顧客創造(Create a Customer)は非常に重要です。

  1. 訪日前
  2. 訪日中 ←通常はここを中心に考える
  3. 訪日後

 1. の段階で顧客創造(Create a Customer)を行うためには、その国の言葉でデジタルマーケティングが行われるべきですし、可能ならば訪日後のInfluencerとしても把握しておきたいものです(2. の段階を中心に考えていてはタイミングが遅い)。

  • Drupal(with PIMモジュール)
  • Agility Multichannel(with Drupal)
  • SAP Hybris(with Drupal)

 これらの代表的なPIM製品の中で、無料のオープンソースであるDrupal(with PIMモジュール)と翻訳メモリとの連携などは、訪日インバウンドマーケティングには最適ではないでしょうか。もちろん、グローバルPIMと組み合わせ、最近グローバル企業で新設されるグローバルな横断組織(eg. グローバルマーケティング組織)が扱うグローバル商品(グローバルブランド)などにも俊敏に活用することができるでしょう。

● CMSとPIMの違いを知る人は少ない(今のところ)
http://blogs.itmedia.co.jp/CMT/2015/08/_coffee_breakcmspim.html


● CMSやマーケティングオートメーションを全体から捉えたい方は、
【シーズン1】デジタルのマーケティング(全15話)をご参考ください。
https://blogsmt.itmedia.co.jp/CMT/1/

● 雑談のネタ【Coffee Break】
https://blogsmt.itmedia.co.jp/CMT/coffee-break/

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