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"ボツになった「テレビ産業壊滅 の真相」記事"を読んでいて考えさせられました。エントリを執筆された湯之上さんは、DRAMの凋落に関する"日本「半導体」敗戦"(面白いです)を書かれていています。

エントリ内ではDRAMの凋落もテレビ産業の凋落も技術があっても顧客のニーズに合った製品を作ることができなくて凋落したといっています(大雑把なまとめなので、詳しくはエントリのほうを読まれることをお勧めします)。

DRAMやテレビ産業は一時期成功していただけに陥りやすい事象になりましたが、現在進行形で進んでいるビジネスから似たようなこと、もしくは違った事象は見られないでしょうか。

今一番顕著なのはメディアタブレットの動向が面白いような気がします。

2010年にiPadショックでメディアタブレットの市場が形成されました。Gartnerは、2010年1,700万台、2011年6,300万台、2012年10,300万台、2015年32,600万台と予想しています。メディアタブレットの登場でネットブックの市場は崩壊したと言われているほどです。

現在のところメディアタブレット市場は多くのメーカが参入し、失敗しています。成功していると言われているのは、市場を作り上げたAppleと最近参加したAmazonだけではないかと言われています。

日本メーカではシャープがGALAPAGOSで2010年に参入しましたが、方針を大きく変更しています。NECもキーボード付きで参入しましたが芳しくないようです。東芝は2011年秋に参入しました。まだ結果は出ていないようです。

日本メーカ以外にもHPの失敗は記憶に新しいところです。webOSで参入し差別化をしましたが、あっさりと撤退しました。RIMも参戦しましたがあまりよくない事情のように見えます。

PCメーカも参入しています。Dellは早期に参加したメーカですが、Streakの販売終了し始めています。LenovoはPCメーカの中では後発組みですが、最も安価な製品を投入し始めていますし、自社の有名なブランドであるThinkPadを使って展開を始めてばかりで結果が出ていません。

出荷台数だけ見ればニーズはそこそこあるように思えますが、ほとんどのメーカがうまくいっていないように見えます。

Amazonはコンテンツ販売のよる売り上げを補完することで低価格製品で進めています。低価格なニーズをうまく引き出した典型的な例だと思いますが、家電メーカが同様な戦略を選択することを実質できません。

Amazonだけが成功しているならば、低価格は大きいと言わざるを得ないのですが、そうでもありません。それがAppleのiPadの高いシェアに現れています。GartnerはiPadの2011年のシェアを70%以上だと予想しています(2011.9の時点だからAmazonの勢いがすごいのでもう少し低くなっているかも知れませんが、60%は切らないでしょう)。

Appleのすごいところはニーズを調査するのではなく、市場を作り上げるところが出来るところです。AppleがiPadを発売する前にはメディアタブレット市場はほとんどありませんでした。

iPadの成功を見ていると以下のヘンリー・フォード氏の言葉を思い出します。

"もしわたしが顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らはもっと速い馬が欲しいと答えていただろう。by ヘンリー・フォード"

顧客のニーズは現在のものをベースにしか思いつかないものです。

iPadの成功はApp Storeがバックにあるからもあるのですが、iPhoneでiOSの基盤を作り上げたAppleの戦略は大きいともいえます。ただし、Appleは常に成功するわけではなくApple TVの様に成功できないケースもあります。

このように見ていると何も低価格と言うニーズだけではビジネスは成功しないように思えます。高品質でも値段相応の価値があれば売れたのではないと思いますが、テレビもDRAMも価格差を埋めるほどの付加価値をつけることが出来なかったのではないでしょうか。

DRAM等で日本メーカが陥った問題が、そのまま現在のメディアタブレット市場の日本メーカの戦略に見えます(シャープのガラパゴスはこの問題を回避するために電子書籍と組み合わせようと努力していましたが、電子書籍のほうがうまく立ち上がらなかったため成功できなかったのではないかと思います)。Appleが成功していることを見ると低価格だけが成功するファクターには見えません。

ニーズを見つけるも難しいと思いますが、存在しないニーズを見つけることはもっと難しいのでしょう。そう思うと物作りってかなり難しいものなのでしょうね。

櫻吉 清(さくらきち きよし)

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