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ARMからMali-T604に関して説明会(ARM、GPU戦略と今後のロードマップを紹介)があったようです。そこでMali-T604の可能性に関して考えてみます。

ARM系チップに付属するGPUは、ARMから提供しているMaliシリーズ、PowerVR系、NVIDIAやQualcomm(AMDから買収したGPU)の独自GPU等が有名です。2012年にはWindows 8のARM版出荷時にはリッチなGPUも必要になります。Mali-T604はそのときに重要なパーツとなります。

Mali-T604のカタログスペックは68GFLOPSです。デスクトップPCのローエンドGPUであるRadeon HD 6450が200GFLOPSで、BobcatのGPU(Mobility Radeon HD 5430並)で88GFLOPSと言われています。

このため、2012年に登場予定のMali-T604の性能は手のひらに納まるデバイスに搭載されるとはいえ、PCから比べるとそれほど高性能ではありません。とは言え、モバイルデバイスには消費電力あたりの性能が必要なため、性能だけ比較しても意味がありませんが(Mali-T604の消費電力がでていないため比較できない)。

ですが、Mali-T604がモバイルデバイスだけに限定すべきでしょうか。Mali-T604はARM版Windows 8が普及する上では非常に重要な役割を果たすでしょうが、他の用途もあるのではないかと思います。

NVIDIAがエクサスケールのスパコンを作るうえで一番の問題は消費電力と言っています。現在の技術でエクサフロップ級を作ろうと消費電力が600MWを超えるそうです。スパコン業界は消費電力の壁に苦しんでいます。

モバイルも消費電力の壁に苦しみながら開発が進んでいます。実はお互いスケールは違っても同じ問題に取り組んでいます(現在の半導体の限界が関係していますが...)。モバイルデバイスのほうが消費電力あたりの性能に関しては、取り組み期間が長かったように見えるため一日の長があるように見えます。

Mali-T604のロードマップを見るかぎり、縦軸のスケールがいまいちわかりませんが性能アップを目指すように見えます。GPUはスケールアップしやすい製品の一つです(命令が並列化しやすいため)。NVIDIAやAMDはデュアルGPUの製品を作っていたり、PowerVRやMali-T604が1~4コアとなっているのもその証拠です。

このため、バス問題等をクリアになれば、Mali-T604をベースに非常に高性能なGPUを作ることができるのではないかと予想できます。それこそNVIDIAやAMDが作っている高性能なGPU並のものが。当然、ダイサイズが大きくなったりするため消費電力は決して少ないものではないでしょうが、ライバル(NVIDIAやAMD)よりも消費電力あたりの性能が効率的ならば売れる可能性は十分にあると思われますし、消費電力に悩まされているスパコン市場でも受け入れられる可能性もあると思っています。

ARMのターゲットがモバイルデバイスであり続けるとは到底思えません(そっちのほうが数が売れるためIPを販売しているメーカとしては効率的ですが)し、Cortex-A15でモバイルデバイスのチョイ上あたりにもターゲットになっているように見えます。

このため、Maliのシリーズが外付けGPUやスパコン向けの製品を出してきても驚くことはないでしょう。

櫻吉 清(さくらきち きよし)

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