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MicrosoftがARM版Windows(たぶんメディアタブレット系)を作るのではないかと噂が流れています。ここでは、Windows Embedded CE系(Windows Phoneもカーネルはこれに属するらしい)ではなくWindows 7系が属するとWindows NT系のARM版を考えます。

過去にWindows NTはx86だけではなくAlpha、MIPS、PowerPCをサポートしていました。また、Windows Embedded CE系は、一応はMIPS、ARM、SuperH、x86をサポートしています。LinuxやSolarisが複数のCPUをサポートしているのと同じです。

このため、Windows NT系ファミリーで再度複数CPUアーキテクチャをサポートしても不思議ではありません。初期のWindows NTはそれを目指していましたが、x86以外は商業規模が小さいため打ち切りました。

今回の噂は、Windowsがx86以外にも進むのでしょうか?最近のMicrosoftとARM系のニュースは以下がありました。

MicrosoftがARM社のアーキテクチャライセンスを取得
ARMの次世代GPUのMali T604がDirectX 11をサポート

もし、MicrosoftがWindows CE系を発展させるためだけならば、ARMのアーキテクチャのライセンスは必要とは思えません。Microsoftは、Appleと違ってハードメーカではないため必ずしもARMチップの設計製造を行う必要はないためです。

AppleはOSメーカでもありますが、ハードメーカでもあります。iOSの進化をマイクロコントロールしたいと思えばARM系の設計・製造に手を出すのはわかります。ですが、Microsoftはゲームコンソールこそハードに手を出していますが、それ以外はハードメーカに任せています。高いシェアを持つためにはハードメーカとの協業と収益をシェアしたほうがエコシステムは大きくなります。

また、Microsoftは2010年1月に行われたCESでSlate PCを年内に発売を計画しているとアナウンスしていましたが、それは実現されませんでした(似たような製品が出ていないわけではないですが)。原因はわかりませんが、一番考えられるのはメディアタブレット用の省電力Atom(Oak Trail)が2011年にならなければ出荷されないためではないかと思われます(それ以外にもiPadを見て方針を変更した可能性もありますが)。

2010年中のx86はメディアタブレット以下のデバイスに入れるのは消費電力は高すぎました。

もし、スレートPCの出荷がCPUに引きづられたのであれば、Microsoftの選択はARM系への移行もある意味納得ができます。また、"Gartner、2010年のPC出荷台数を3.52億台に下方修正"にも書きましたが、PCがスマートフォン・メディアタブレットに2011年には抜かれると予想されます。Microsoftとしては、早急にスマートフォン・メディアタブレットの少なくないシェアを持つOSメーカにいなければ、本丸のPCでも危うくなる可能性があります。

Microsoftが、盟友のIntelが出してくれるOak Trailの発売後にiPadへの逆襲を始めるとのんき考えているとは思えません。IT業界は、待ちの姿勢でトップの地位を確保できるほど甘い業界ではあります。

さらに、将来的にIntelがメディアタブレット以下のカテゴリにおいてARM系のCPUより消費電力あたりの性能が高いCPUを製造できる保障はないでしょうし、Oak Trailの開発が後回しになった様な戦略的ミスを今後も犯さないとは言えません。世界最大の半導体メーカでも隙がないとは言えません。

Microsoftの立場ならば保険のためにARM系にも投資しておくことは無駄とは思えませんし、スマートフォン最大の勢力になろうとしているAndroid陣営を牽制するためにも必要です。

このため、ARMと契約、ARM系のDirecX 11対応GPUコア、スマートフォン&メディアタブレットの出荷台数増、将来におけるx86とARMの消費電力あたりの性能予測を考えるとARM版Windowsを出すと考えるのはあながちおかしいとは思えません。

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櫻吉 清(さくらきち きよし)

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