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私は、AcerのCEOが2011年にHPからPC出荷台数のトップの座を奪い取りたいと発言の記事を読んで非常に驚きました。その理由は、"無理じゃない?"と考えたためです。

まずはGartnerが発表している3Q'10までのPC出荷台数のシェアを推移を見てみましょう。

確かにHPは以前ほど強力なPCメーカではなくなりましたが、それはAcerにも当てはまります。AcerがDellを抜いたときにはHPを抜くのも時間の問題かと思ったのですが、それ以降Acerもゆっくりとシェアを落としています。

ASUSのシェアを伸ばしていることを考えるとシェアを落としたのは不況のあおりでより安価なPCに移行したためだと思われます。こればかりは仕方がありません。逆にAcerは、Dellに抜き返されることとLenovoに追いつかれる可能性さえ見せています。

また、PCの主戦はデスクトップよりもモバイルに移行は確かにそうなるでしょう。デスクトップPCのメリットは多くはなくなってきています。ノートPCは、十分な性能が手ごろな価格で手に入り、場所もとりません。良いことずくめです。

とはいえ、HPもノートPCを販売していないわけではありませんし、さらにノートPCのブランドとしてはAcerよりもLenovoのほうがあります。最近は、Lenovo、東芝、ASUSあたりのノートPCメインのメーカの方がより台頭しているほどなのですから、Acerが強気になれる要素が思いつきません。

私はPCシェアのグラフを見て2~4位が2011年もそのまま維持されるのかさえ疑問に思うほどでAcerがHPを抜けるとは到底思えません。このため、AcerのCEOの発言はそうとう難しいのではないかと思います。

ですが、HPを抜くための秘策がないわけではありません。

それは、東芝もしくはASUSを買収することです。Acerの3Q'10のシェアは13.1%です。これにASUSの5.4%もしくは、東芝の5.3%を足せば、HPの17.5%を超えます。また、ASUSと東芝はノートPCを主戦としているため今後もシェアを継続的に伸ばすことができます。

東芝は、2009年のASUSにノートPC部門を買収の話があがりました。また、東芝は携帯電話部門を富士通と統合させています。コア部署以外を切り離すのは正しい判断です。2008年末から始まった大型不況は二度とこないとは断言できないのですから。ただし2009年末から大幅にPC出荷台数は回復しているため、東芝のPC部門の売却の可能性は相当低いと思いますが。

このため、Gateway以上の大型買収を成立させない限り、AcerがHPを短期間(2011年内)に抜くのは非常に難しいと思います。何かまだ噂にでもなっていない秘策でもあるのでしょうか。

【出荷台数】
Gartner、2010年のPC出荷台数を3.52億台に下方修正~スマートフォンに抜かれのは2011年は確定?~
スマートフォンの出荷台数はいつPCを抜くのか
スマートフォン市場(3Q'10)~前年同期比90%以上の増加~
メディアタブレットの繁栄とネットブックの衰退
PC出荷台数(3Q'10)

櫻吉 清(さくらきち きよし)

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