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マルコム・グラッドウェル氏の"天才!成功する人々の法則"は、最高に面白い本です。私の読書経験はそれほど豊富ではありませんが、"天才!成功する人々の法則"は唯一人に押し付けてでも読ませたいと思った1冊です(勧めるのではなくて、強引にでも読ませたい)。

このため、マルコム・グラッドウェル氏のTHE NEW YORKER傑作選が出たときは飛び上がらんばかりに喜んで買いましたが、1巻目は著者の欄を何度も見直したほど面白くありませんでした。

3巻目の"採用は2秒で決まる!"はTHE NEW YORKER傑作選の中で一番面白いと聞いたため手にとってみましたが、マルコム・グラッドウェル氏らしく面白かったです。

第14章の"大器晩成"のギャレソンの逸話は、"天才!成功する人々の法則"の元になっているような話です。天才を作るのに1万時間かかることを示唆しています。

また、遅咲きの人間は「人生の後半になってから世間によって見出された人たちだ」と言う認識は間違っていて「遅咲きの花の"開花"が遅れたのは、単に彼らがその道を極めるに至ったのがキャリアの後半だったからだ」という認識が正しいようです。

ただし、遅咲きの人間にはサポートが必要でポール・セザンヌやベン・ファウンテンなどは親もしくは妻のおかげで遅い花を咲かすことができたようです。そう思うと、天才を作るにもコストは決して安くないように思えます。

エンロンの崩壊を扱った第17章の「"才能"と言う神話」は、本書の中で一番面白い話です。

ある実験(思春期前の児童のクラスで)で難問のテストを受けさせて努力を褒めたグループと、知能(才能?)を褒めたグループでは、後者の方がより点数が悪くなり、且つ他の学校の児童に自分の成績を知らせる手紙を書かせると、後者はうそをつき始めるそうです。

エンロンが破綻した行動と似た行動が起こったようです。これは、持って生まれた"能力"によってのみ褒められる環境に置かれた時の人間の行動のようです。

能力至上主義が行き過ぎると人間はおかしな行動をとり始めます。このため、組織こそが人材の働きを高める方法を選択のほうがより結果が出すことができるそうです。

これは、第二次世界対戦のアメリカの第10艦隊の設置やウォルマートのCEOの返り咲き、P&Gのの企業スタイル等の例を挙げています(グラッドウェル氏は説得力ある例を良く挙げる)。

組織こそ人材の働きを高める方法に関しては、興味深い内容ですがまだグラッドウェル氏の本(長めの本)の中で取り上げられていない話です。これはもっと話を膨らませることができるのではないかとさえ思えます。"大器晩成"は、"天才!成功する人々の法則"の元になっているように見受けられます。ならば、「"才能"と言う神話」を元にした本をグラッドウェル氏がもっと調査して書き上げればどれだけの良いものができるのかと思ってしまいます。

第18章の"採用は2秒で決まる"は、「第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」のベースになっているのではないかと思います。この本も面白い本です。

THE NEW YORKER傑作選の1巻目は失望し、3巻目で面白かったです。これで2巻目を手に取ってみようと思います。

【本】
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Google クラウドの核心の感想
ビジョナリーカンパニー3~衰退の五段階~の感想
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櫻吉 清(さくらきち きよし)

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