« 2010年6月9日

2010年6月10日の投稿

2010年6月11日 »

Top500が公開されました。そこでTop500が公開しているCPUアーキテクチャ毎にRMaxの合計シェアの推移をグラフ化しました。

■Top500ランキングCPUアーキテクチャ毎のRMax合計シェア(2003.6~2010.6)

Top500は、一気にランクインするためグラフは急に伸びたりしますが、おおむねXeon系に集約されていっています。このあたりはPCとあまり変わりありません。特にNehalem系(Nehalem-EP/EX&Westmere-EP)が非常に伸びています。メモリIFを内蔵してメモリ転送量が増えたからでしょうか。今後はXeon以外の選択は経済的ではなそうです。

このようの状況でGPUを搭載したNebulaeが2位にランクインしています。ハイブリッドスパコンは、3位のRoadrunnerや7位のTianhe-1等がありました。PowerXCell 8iで果たせなかったハイブリッド型興隆の時代が来るのでしょうか?

現状Top500には、異なる種類のCPU(もしくはGPU)を搭載しているシステムは、8システムしかありません。また、x86系で周波数が違うCPUを2種類以上搭載しているシステムは11システム存在します。さらに、3種類以上のCPUを当しているユニークなシステムは、東工大のTSUBAMEの1システムしかありません。

2010.6の時点でスパコン市場では、ハイブリッド型は主流とは言えません。

ですが、NVIDIAのTeslaは相当パワフルのようです。真偽のほどはわかりませんが"GeForce 400シリーズの今後は?"に、GF100は一部disableにはしていますが、それ以上に相当性能を殺しているようです。本気を出すことができない理由(ビックサイズや製造元)があるかも知れませんが、アーキテクチャ的には性能がドラゴンボールの主人公の様にまだまだあがる可能性があります。

また、IntelがHPC向けのKights Cornerを発表しました。Larrabeeや昨年から多コアの製品を一部に提供を開始していましたが、ようやく離陸させるようです。

IntelがGPUよりHPCを先にターゲットにするのは、なぜでしょうか。スパコン市場は、Core MAやNehalemアーキテクチャで念願のOpteronを抑えることはできましたし、POWER系もシェア的にはIntelが気にするほどではありません。

私の予想ですが、IntelはNVIDIAのTeslaをつぶしたいのだと思います。

少し前には、Intelの最優先の標的にはNVIDIAだと言われていました(AMDの凋落が激しかったので)。NVIDIAは、GPUをHPC向けプッシュしてきました。この活動とアーキテクチャをよりHPC向けにシフトしたのが功を奏して、FermiアーキテクチャでNebulaeでTop500の2位にランクインしましたし、TSUBAME 2.0でもTeslaは採用されます。現時点ではFermiは、GPUを使用するゲームとHPCにしか興味がもたれていませんが、HPC向けの技術が将来的に一般ユーザに降りてくる可能性もあります。

パラノイアぶりを発揮したIntelは、自分の領域に入り込もうとしたNVIDIAをTeslaがスタンダードになる前につぶすことを決めたのではないでしょうか。このためGPUよりもHPCを先に注力したのではないでしょうか。

ただし、HPC向けにGPUが普及するのか、CPUに戻るのか私にはまだ微妙だと考えています。その理由は、AMDのFusionがあるためです。

AMDは、2011年にAPUを内蔵した製品を出します。2011年時点では、現在のRadeon HD 5xxxxシリーズのコアが入ります(ミドルレンジのコアが入るのか、それともローエンドのコアが入るのか分からない)。もしRadeon HD 5570クラスが入るのであれば、APU箇所だけで倍精度浮動小数点演算で104GFLOPS出ます(注:AMDのページにはRadeon HD 5570の倍精度浮動小数点演算の性能の記載はありません。Radeon HD 58xxはあるのに。)。

FusionのCPU部分がK10で4コア&3.0GHzならば48GFLOPSになり、APU部分を足すと152GFLOPSになります。

現在x86最高の性能を持つXeon X7560(Nehalem-EX)は8コア&2.26GHzです。カタログスペックの倍精度浮動小数点演算は、72.32GFLOPSになります。ただしHyper-Threadingが効かすと1.3倍の性能が出るかも知れません(Sandraの結果を見ると浮動小数点演算がやはり1.3倍出ていた)。1.3倍されれば94GFLOPSです。

カタログスペックだけならばFusionの方が上になります。また、FusionはCPUとAPUの間は、PCI-Expressほど低速ではありません。このため、外付けGPUよりもFusionの効率はもしかすると悪くないかも知れません。

将来的なスパコンの構成は、GPU採用を採用したハイブリッド型に向かうのか、Kights Cornerの様なスパコン仕様のCPUに向かうのか、それともAPU/GPUを搭載したCPUに向かうのかわかりません。

ただし、PowerXCell 8iが最終的に収束に向かったこととPowerPC 4xxのシェアが大きくならないことを考えるとより汎用的なAPU/GPU混在CPUの方が経済的に成功するのではないかと思います。

【CPU/GPU関連】
IBMのTeslaサーバの将来性
ARMのサーバの可能性
GPU競争の行方
CPUの進化に関して

櫻吉 清(さくらきち きよし)

« 2010年6月9日

2010年6月10日の投稿

2010年6月11日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

櫻吉 清

櫻吉 清

IT業界ウオッチを趣味としている。知的好奇心の趣くままに何でもチャレンジして、とりあえず壁にぶつかってみる。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
カレンダー
2013年4月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
kichi
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ