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IDEO本です。私は"発想する会社!h"や"イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材"を読んでいるので、その延長線上のつもりで読んだのですが、違ったイメージがわきました。

その理由は、現在IDEOは製品のデザインを行う会社ではなくコンサルタント業務がメインに移行したためでしょう。確かに、売れる製品は作るのはデザインだけで快活するわけではなく、環境を含めてトータルで行うほうが効果的です。また、売れない理由が製品のデザインにないケースもあるでしょう。このためコンサルタント業務をついでに行っていたのが最終的にはそちらがメインになったようです。

IDEOの最近のニュースでは、地下鉄の自販機の売り上げをアップさせるのに自販機の上に時計を置いて実現した話が有名です。電車を待つのに時間が有無によって購入決定するところをついて、その判断を短時間でできるように時計を配置するIDEOらしい思考方法です。売り上げが上がる製品の配置や場所などを変更するのではなく購入者の行動を調査して行うところがIDEO流とも言えるデザイン思考です。

そのようなIDEOの現CEOのティム・ブラウン氏が、デザイン思考に関して書いたのがこの本です。

本書ではデザイン思考に関する特徴的な記述があります。

・失敗が成功の早道
・プロトタイプを作って繰り返しチャレンジする
・よいアイデアを手に入れる最良の方法は、多くのアイデアを手に入れることだ
・失敗を促進?もしくは失敗の糧の上に成功がある
・過つは人の常、許すは神の業
・IDEOのデザインチャレンジは、いずれも"どうすれば***"で始まる。
・デザイン思考とは、「人間中心」のイノベーション・アプローチ
・優秀なデザイン思考家は観察するが、偉大なデザイン思考家は「普通」を観察する。
・いかなる個人よりも全員の方が賢い

プロタイプを作って選択肢を増やしてゴールに進んだり、観察したり、ブレインストーミングして多くのアイデアを出したりとよくあるツールにもう少し手を加えています。

このあたりは統計データをもとに行動を決める某コンサルタント会社と違っています。創業時の精神がそのまま残りながら、時代にマッチして進化している感じがします。

一番面白かったの逸話を抜粋します。

ヒューレット・パッカードから東アフリカのマイクロファイナンスの調査依頼を受けたとき、IDEOのヒューマン・ファクターの専門家達は、どんなことに足を踏み入れようとしているのか、まったく想像がつかなかった。私達は、アフリカで経験がなかったし、マイクロファイナンスの専門家を名乗れるほどではなかった。したがって、もちろんその依頼を引き受けた。

本書では"したがって"には強調用の点がふってありました(点をふれないので、赤字のboldで代替)。文の前後を考えると"したがって"は、おかしいですがIDEOのデザイン思考を考えると妥当なつながりになります。

率先してリスクをとることができるのはデザイン思考なところもありますが、失敗しても経験値が溜まるメリットの方が大きいと判断できる体制ができているように思えます(失敗しないと考えているのか、それともリスクを低減できる契約の可能性もありますが)。

以前のIDEO本はどちらかと言えば、このような方法でデザインしています的でしたが、本書はどのような方法で問題を解決しているかの方法論に関して記述されています。それだけIDEOが変わったという証でしょう。

【本関連】
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櫻吉 清(さくらきち きよし)

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