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マルコム・グラッドウェル氏の著書である"天才!成功する人々の法則"を読みましたがあまりの面白さに感想を書いてみます。訳者が、ビジネス本で有名な勝間さんのため読みやすくすばらしい本になっています。

成功する人々の傾向として、成功しているアイスホッケー選手の生まれた月の分布、Unixを作ったビル・ジョイ氏、Microsoftを創業者ビル・ゲイツ氏、ザ・ビートルズの例にとっています。

共通点はなさそうに思えますが、成功しているのには似たような理由があります。それは環境です。アイスホッケー選手は、年明け生まれの断然多くなっているそうです。これは、アイスホッケーが、強化選手を選ぶときに1月の区切りにしているため、幼少のころは成長の差が顕著なため、どうしても1月に近い生まれが有利になります。一度強化選手に選ばれれば、さらに経験をつめるため(特にアイスホッケーのように練習する環境が限定されるスポーツはより顕著)、さらに同世代との差が広がり、どうしても生まれつきのアドバンテージが大きくなります。

ビル・ジョイ、ビル・ゲイツ、ザ・ビートルズも、同様に練習する環境が整ったため、才能を発揮する準備期間を多くとることができたのです(注:当然、ここでは個人の努力が前提です)。

また、文化による影響も無視できないとあります。大韓航空が一時期多くの事故を起こしていたそうですが、その理由は文化のためだそうです。

航空会社の国別、権力格差指標があり、韓国は以前は2番目に高い数値が出ていたそうです。権力格差指標と聞きなれない単語ですが、これはヒエラルキーに対する態度になります。権力格差指標が高ければ高いほど、副操縦士や航空機関士が意見を言いづらくなることをさします。

たとえば、グアムでの墜落で、機長が操縦している空港に着陸しようとしたときに、天候が非常に悪く注意をする必要がある場合でも、航空機関士は「機長、気象レーダー大いに役立っています」と、非常にあいまいな言葉で注意をしています。これでは、機長が判断を誤った場合に止める手立てはありません。文化的弊害があるそうです。

また、数字の発音のし易さで数学の得手不得手が決まる傾向があるそうです。英語は、11~19からとたんに発音数が多くなります、ですが、中国語では短いそうです。この影響が、数字の発音期間と記憶できる数とは相関関係があり、アジア系と欧米の数学力の差になっているそうです。

このように、環境や文化の違いにより成功が決まってしまい、持たないものは成功できないのかと暗澹たる気持ちにさせられますが、本書では最後にちゃんとフォローしています。

それは、KIPP(Knowledge Is Power Program)で挽回できる可能性を示唆しています。KIPPとは、中学校のあるシステムで、授業は午前7:25から、午後5:00か7:00に終了し、従来の公立よりも50%以上も学習時間が長いそうです。

そこの生徒はあるクラスでは、6時前に起床しているのが3/4で、5時半前が半分もいるそうです。また、ある生徒は、5:45におきて23:15に就寝しているそうです。ついでにこの生徒は、12歳以下です。

このプログラムのおかげで、生徒の90%が奨学金を受け取り、良い高校に進むそうです。ついでに、例と出ていたKIPPの学校は、決して裕福な生徒がくるのではなくニューヨークでも貧しいサウスブロンクスにある中学校です(生徒も大半は貧しい家庭)。

努力も必要だが、努力できる環境を必要だと著者は、一つずつ例を出して説明してくれています。そのどれもが論理的に破綻していません。

環境が整っているにも関わらず、努力していないのは反省すべきだと痛感したほどです。

本書は、私が2009年上半期で読んだ中では、もっとも面白かった本です(ずっと前に読んでここまで感想書いていなかった)。勝間さんが著者に対して嫉妬したと巻末に書いてありますが、私の程度の本読みでさえマルコム・グラッドウェル氏はすごいと思わされました。

私は、読み終わってすぐに、著者の他の作品である”急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則”と”第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい(これは面白かった)”をすぐさまAmazonで注文したほどです。

私は、ブラックスワンや”ハチはなぜ大量死したのか(これも面白かった)”よりもこちらをお勧めしたいほどです。

櫻吉 清(さくらきち きよし)

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