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米国のFreeWheelから、オンラインビデオ視聴率に関する興味深いレポートが公開された。今回は、このレポートから読み取ることができるオンラインビデオ広告とスマートデバイスの未来について考えてみたい。

※ FreeWheelからの調査レポート「FreeWheel Video Monetization Report」 


【1】 ユーザはオンラインビデオ広告を受け入れている

下のグラフは、2010年第1Qから2011年第3Qまでの、オンラインビデオの視聴回数とオンラインビデオ広告の視聴回数それぞれの推移を表わしたものである。ここで興味深いのは、両者の成長率だ。この1年間の視聴回数だけを見ると、オンラインビデオ全体の視聴回数が60億~118億で、一方のオンラインビデオ広告の視聴回数が30億~72億と、オンラインビデオ全体の視聴回数がオンラインビデオ広告の視聴回数を圧倒している。

しかし、この1年間の成長率だけを見ると、オンラインビデオ全体の視聴回数が97%だったのに対し、オンラインビデオ広告の視聴回数は128%と、オンラインビデオ広告の視聴回数の方が、オンラインビデオ全体の視聴回数よりも急速に成長していることがわかる。

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この数字は、私たちに重要なことを示唆してくれている。ユーザは、映画、テレビドラマ、音楽、アニメ、スポーツといったエンターティンメント中心のコンテンツを視聴することを目的としてオンラインビデオサービスを利用している。よって、コンテンツを視聴することを目的としているユーザであれば、広告を視聴することを嫌がるのではないかと考えるのが普通だ。ところが、今回のレポートによれば、ユーザはオンラインビデオ広告を視聴することに対して抵抗感を持っていないということになる。

ここに、ユーザがオンラインビデオ広告に対して拒否反応を持っていないということを証明する面白い統計がある。下のグラフは、オンラインビデオ広告の長さによって、最後まで視聴する完了率を4半期別に表わしたものである。左からロング・フォーム、ミッド・フォーム、ショート・フォームとなっており、ミッド・フォームとショート・フォームに関して言えば、正直この3期で比較してみても大して差がないことがわかる。

注目したいのは、一番左のロング・フォーム、つまり長いオンラインビデオ広告の完了率がこの3Qに跳ね上がっていることだ。また、1Qのオンラインビデオ広告の完了率も、ロング・フォームは82%と、ミッド・フォームの70%、ショート・フォームの56%を大きく上回っていることがわかる。

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つまり、オンラインビデオのユーザは、オンラインビデオ広告の時間が長くなったり量が増えたりしても、それを嫌がることなく最後まで視聴しているということになる。むしろ、時間が長ければ長いほど、接触する時間が増えているという点が興味深い。この事実は、オンラインビデオ広告がマネタイズに成功していることを意味している。


【2】 スマートデバイスがオンラインビデオの視聴率を加速させている

テレビの世界にはゴールデン・タイムなるものが存在する。時間帯で言うと、夜の8時~11時の間。この3時間は、最もテレビの視聴率が高い時間帯とされており、広告予算の潤沢な企業になればなるほど、このゴールデン・タイムに広告を集中させることになる。フジテレビの「月9」ドラマもそこから来ている。では、オンラインビデオの世界にもゴールデン・タイムなるものは存在するのであろうか。また、あるとしたらその時間帯は。

下のグラフは、ショート・タイム・ビデオとミッド・タイム・ビデオの視聴回数の推移を時間帯別に集計したものである。3つの中では、一番視聴時間の短いショート・タイム・ビデオの視聴回数が断トツだということがわかる。また、このグラフから、ショート・タイム・ビデオのピークが午後の1時~4時であることも見て取ることができる。これは、ショート・タイム・ビデオが、仕事の休憩時間中に多く視聴されていることを意味していると理解していいだろう。

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ミッド・タイム・ビデオのピークも、このグラフからはわかりづらいが、ショート・タイム・ビデオと同じ午後の1時~4時となっている。つまり、ショート・タイム・ビデオとミッド・タイム・ビデオは同じような傾向を持っているということになる。問題は、このグラフだと詳細がわからないロング・タイム・ビデオのピークだ。そこで、ロング・タイム・ビデオだけを抜き出してみたのが下のグラフになる。

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このグラフから、ロング・タイム・ビデオのピークが、テレビと同じ夜の8時~11時の間であることがわかる。12時頃からかなり高い数字は出しているものの、厳密なゴールデン・タイムという意味では、夜の8時~11時までと言っていいだろう。この結果は、ロング・タイム・ビデオが、ショート・タイム・ビデオやミッド・タイム・ビデオのように、仕事の休憩時間の合間をぬって視聴されるのではなく、帰宅してから自宅で視聴されることを意味している。

次に、デバイス別のゴールデン・タイムを見てみよう。下のグラフは、有線で接続されたPC、ワイヤレスで接続されたスマートフォン、iPadそれぞれの時間帯別のピークを表わしたものである。ここで注目したいのは、有線で接続されているPCよりも、ワイヤレスで接続されているスマートフォンとiPadの方が多く視聴されているということ。

また、PCのピークは12時~14時までとなっており、これはショート・タイム・ビデオとミッド・タイム・ビデオのピークとほぼ一致している。つまり、ショート・タイム・ビデオとミッド・タイム・ビデオは、オフィスのPCで視聴するケースが多いということだ。一方、ワイヤレスで接続されているスマートフォンとiPadのピークは夜の8時~10時までとなっており、こちらはロング・タイム・ビデオのピークとほぼ一致している。ロング・タイム・ビデオは、自宅でスマートフォンとiPadを使って視聴されるケースが多いということを意味している。

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ワイヤレスでインターネットに接続されるスマートデバイスの出現は、オンラインビデオの視聴環境に大きな影響を与えている。以下のグラフは、iPhone、iPod、iPad、Androidの各デバイスからのオンラインビデオの視聴回数を、2011年2Qと3Qとで比較したものである。グラフを見ればすぐにわかる通り、iPodは大きくシェアを下げている。代わりに大きくシェアを伸ばしているのがiPadだ。

iPhoneもシェアを下げているとは言え、それほど大きく落ち込んでいるわけではないし、AndroidはiPadに次ぐ成長率見せている。iPadを中心としたタブレットが、今後のオンラインビデオ視聴デバイスの中心となることは間違いないだろう。

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【3】 今回のまとめ

① オンラインビデオ広告が急成長している

オンラインビデオ全体の視聴率よりも、オンラインビデオ広告の視聴率がそれを上回る勢いで伸びている事実に注目したい。米国では、早くからNetflixやHuluなどがオンラインビデオサービスの市場に参入して成功を収めてきたわけだが、コンテンツの有料配信以外に、ビデオ広告が立派な収入源になっていることが今回の調査レポートによりわかった。
しかも、広告の量や時間は増える一方なのにももかかわらず、ユーザがその広告を受け入れているという事実は、予想を大きく裏切るものであった。オンラインビデオを視聴するユーザは、テレビの視聴者よりも広告に対して寛容だということなのだろうか。いずれにしても、オンラインビデオ広告が、アマゾン、アップル、グーグル、マイクロソフトなどのビックネームにとって、無視することができない魅力的な市場であることは間違いない。

② タブレット、特にiPadがオンラインビデオ視聴デバイスの中心になる

ワイヤレスでインターネットに接続されるスマートデバイスの勢いには目を見張るものがある。PCを差し置いて、スマートデバイスがオンラインビデオ視聴デバイスの中心になることは、もはや時間の問題だと言っていいだろう。中でもタブレット、特にiPadはその中にあって最も重要なポジションにあると言っていいだろう。

価格、機能、使い安さの面において、オンラインビデオを視聴するためのデバイスとしてiPadを凌駕するスマートデバイスはまた現れていない。来年以降に普及することが期待されている新しいワイヤレスネットワークLETは、スマートデバイスの重要性をより高めてくれるに違いない。

③ テレビのデータがあればもっと良かった

できれば、テレビも対象とするデバイスの中に含めてほしかった。米国だけに限らず、世界的にインターネットに接続されたテレビが増えてきている。こうした現状を考えた場合、PC VS スマートデバイスといった対立の構造は、オンラインビデオの世界に限って言えばもう古い。有線で接続されているデバイスの主役が、PCからテレビに移りつつある今、テレビからのオンラインビデオ視聴率もデータに加えることで、より説得力のあるレポートになるはずだ。

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伊藤 靖

伊藤 靖

株式会社リトルウイングス代表取締役。
青森県弘前市出身。大田区蒲田在住。
企業のメディア戦略、コンテンツ戦略、モバイル戦略の構築と実行をサポートするサービスを提供しています。

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