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データセンターに於けるソフトウエア定義の電力とは--その2

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その1ではデータセンターに関する電力不足と電力料金に関して述べた。結論は消費者としては、電力の供給はコントロールできないので、需要をコントロールするしかない。供給電力が十分でないときや他のデータセンターでの電力料金が安い場合時、現在のデータセンターで負荷を削減するということだ。電力の削減は負荷削減、負荷使用時移動や負荷移動で対応できる。

ソフトウエア定義できる要素

最近ソフトウエア定義されるデータセンター(SDDC)やソフトウエア定義されるネットワーク(SDN)が脚光を浴びており、「ソフトウエアで定義できるなになに」は「なになにをサービスで提供する、software as a」の様に注目を浴びている。サーバー、ストレッジやネットワーク装置の仮想化は異なったペースで進んでいる。(DatacenterDynamics社のYevgeniy Sverdlik氏記事を参照のこと ページ52. 以前のブログでは冷却も仮想化できると述べた。(これは英語のみ、そのうち日本語化)。 

では仮想化するのに残った要素は電力だ。電力は仮想化できるのだろうか。電力の仮想化やソフトウエア定義の電力をGoogle検索して見た。Wikipediaに載っているのではないかと期待したが、代わりにPower Assure社の Clemens Pfeiffer 氏の記事や彼のコメントばかりを見つけた。こうなったら、彼をインタビューしてソフトウエア定義の電力とはなにか確かめよう。

Power Assure社が説明するソフトウエア定義の電力

以下はPfeiffer 氏との会話をまとめたものである。 (ソフトウエア定義の電力の詳細は彼の記事を参照のこと。) 

Pasdp1

Clemens Pfeiffer

データセンターでの主な要素はなんだろうか。それは、IT (サーバー、ストレッジとネットワーク機器) とファシリティ (冷却と電力装置)だ。この5つの内どれが簡単に仮想化(ソフトウエアで定義)されるだろうか。仮想化できるためには、物理的な物が比較的容易に抽象化されることである。仮想化されるとIT機器は抽象化されそのインスタンスが容易に生成、増加、移動、減少そして除去される。冷却はIT機器の様には抽象化されないが、冷却機器の運転を開始したり停止したり、ファンのスピード を調整したら、チラーの温度を調節することで抽象化することができる。

つまり、電力を除く4つの要素は抽象化できるのでソフトウエアで定義・規定できる。

電力はソフトウエアで定義できるのだろうか

Pfeiffer氏は電力はユニークな要素だと言い、以下の図を描いて(上の写真にも写っている)説明した。データセンターの存在理由はビジネスの目的を達成するためのアプリケーションを実行することである。アプリケーションを安定に実行することが一番重要なことである。アプリケーションは4つの要素に支えられている。つまり、サーバー、ストレッジ、ネットワークと冷却だ。そしてこの4つの要素は電力なしでは動作しない。次の絵でこの状況を表している。

 

     

Pasdp2

 アプリケーションはサーバー、ストレッジ、ネットワークと冷却に支えられている。そして今度は、それぞれは電力に支えられている。 (出典: Power Assure) 

こう考えると電力がデータセンターで一番重要な要素だということになる。冷却を仮想化することができるなら、電力も仮想化できるのだろうか。Pfeiffer氏は必ずしもそうではないと言う。

ソフトウエア定義の電力

ソフトウエア定義の電力 (SDP: software defined power) ITや冷却と同じようには仮想化できない。Pfeiffer氏と議論し、Power Assureの資料を精査して、以下のような結論に達した。 SDPはデータセンターで負荷を制御し、電力事情や料金を考慮して他のデータセンターに負荷を移動する方法である。この複雑な決定やプロセスをソフトウエアで行うということだ。つまり、負荷(電力)を分散をソフトウエアによって定義・規定される ということだ。

それでは、その1で述べた仮想化またはソフトウエアによる定義・規定のテストを電力に適用してみよう。つまり、なにかがソフトウエアで定義・規定できるのなら、それは容易で動的に生成、除去および移動できるはずだ。まず指摘しておきたいのは、電力に対しては直接なにもできないことだ。生成も除去も移動も必要に応じて動的には何もできない。これは、ITや冷却装置の仮想化とは大きく異なる。電力以外のリソースはそれぞれの仮想化されたインスタンスを直接生成することができる。言い換えれば、物理的なリソースは既に存在するがその仮想化されたインスタンスは活性化しなければ存在しない。活性化された後のみに、仮想化インスタンスが存在する。

これに対して、容量に上限はあるが、電力は既に仮想化された物である。常に存在し、電力エネルギーとして割り当てられている。しかし、サーバーのインスタンスとは異なり、装置の電源がオンにならなければなにもしない。装置がオンになれば、割り当てられている電力の一部が活性化されその装置の動力源となる。生成と消費を同じものとすれば、生成テストはパスする。つまり、割り当ての電力の中から、必要な量の電力インスタンスが活性化され、その装置を稼動する。その電力インスタンスは装置が稼動し続ける限り活性化されたままである。増加テストも、もっと装置が稼動されると、それに見合う電力インスタンスが活性化されると説明できる。

同様に。除去のテストもパスする。ある装置の電源を切ると、その装置の動力源となっていた電力インスタンスは除去される。量の削減も同様に問題なく説明される。しかし、移動のテストはそううまくは行かない。同じフィーダーや回路内では、移動のテストは問題ない。しかし、異なったセクションで別々のフィーダーや回路で電力を供給されている場合は、テストには失敗する。2つのセクションABを考えて見よう。セクションBで電力が不足し、セクションAには電力に余裕があっても、AからBに電力を移動できるのだろうか。これは可能ではない。それぞれののセクションでは予め電力の容量が規定されており、それ以上の電力を動的に増加はできない。 

しかし、移動をデータセンター間に応用すれば移動テストはパスする。同じデータセンター内ではあるセクションから違うセクションに電力を移動はできない。しかし、1つのデータセンターから負荷を他のデータセンターに移動するとどうなるか。負荷が削減されたため、もとのデータセンターでは電力消費量が削減され、移動先のデータセンターでは電力消費量が増加する。これは、もとのデータセンターから移動先のデータセンターに電力が移動したことと同様に考えることができる。

SDP の実装の方法はどうするのか

Power Assure が提唱しているのはデータセンターで電力需要を制御することだ。Pfeiffer氏は電力制御というのは、実際は負荷制御だと強調した。それ以外に電力制御はできない。デマンド・リスポンス(DR)は負荷を制御する方法だ。電力会社は可能な供給量の上限に需要が近づきつつある時、消費者に電力使用を削減するように依頼の信号を起こる。

現在までデータセンターにデマンド・リスポンス(DR)を適用する話は聞いたことがなかった。データセンターに DRを適用したケースを述べたレポート    によると、3つの方法で電力削減を図ることができる。それは、負荷削減、負荷時間帯の移動と負荷の移動だ。負荷削減は単純に幾つかの装置の電源を落とし電力消費を削減する方法だ。そして、負荷時間帯の移動はピーク時などの決められた時間帯に使用する装置を他の時間帯で稼動することである。その結果、決められた時間帯での電力消費が削減される。どちらの方法も電力削減の方法としては有益であり、比較的簡単な方法で手動でも可能だ。負荷移動は1つのデータセンターから別のデータセンターに負荷を移動することだ。これが以下の図の示される様にPower Assureが主張する方法だ。

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 力事情と安価な料金を利用するため、1つのデータセンターから別のデータセンターに負荷移動を行う。(出典: Power Assure)

負荷移動は電力が不足したり、ピーク時間や特別ピーク日などの、電力料金が高騰するときに適している。電力不足の場合、負荷移動は電力会社からのデマンド・レスポンスの信号がトリガーになる。高騰する電力料金に対しては、データセンターが存在する地域の電力料金情報をリアルタイムで入手できることが必要となる。これには、負荷移動には様々な決定やプロセスが必要である。Power Assureはこれをソフトウエアで行うシステムを開発した。それは、ダッシュボード、オートメーションと電力料金へのアクセスから成り立つ。

負荷移動は容易ではない。以下の条件が必要だ。

  • 基本的なインフラ
  • 相互運用可能なメカニズム 
  • オートメーション
  • 電力料金へのアクセス

基本的なインフラ

インフラに対する仮定はデータセンター運用者が地理的に異なった場所に複数個のデータセンターを運用していることだ。そして、それぞれのデータセンターがディザスター・リカバリーかそれに似たシステムを設置していることだ。負荷移動はディザスター・リカバリーのインフラを利用できる。それは、既にデータセンター間はネットワークで接続されているからだ。大手のデータセンター運用者はディザスター・リカバリーのシステムを設置しており、この仮定は無理なものではない。

相互運用可能性

負荷移動に関しては、データセンター間が相互運用可能であることが理想的だ。しかし、同じ運営者であっても、それぞれのデータセンターは技術、データ形式、プロトコルや運用方法が異なっていることが多い。Power Assure ははこの違いを吸収する方法を開発したのだ(PA SDP )。この解でサポートされているシステムや技術は以下の図で示される。

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  PA SDPでサポートされているシステムと技術 (出典: Power Assure)

オートメーション

負荷移動は多くの複雑で面倒なステップから成り立っており、なんらかのオートメーションが必要だ。通常データセンター内の運転環境はユニークで互いに異なることが多い。その場合、 PA SDP はその差異を吸収して負荷移動を容易にする。 PA SDPのダッシュボードはこの全体の流れを表示することができる。

電力料金へのアクセス

電力料金は地域毎に異なり、電力会社毎にも異なる。一日の内の異なった時間でも変動する。現時点で一番安価の電力を確保するには、全米や全世界の電力料金へのアクセスが必須である。PA SDP は電力料金へのアクセスも含んでいる。

この2回に渡るブログで電力に関する問題を議論し、その1つの解としてソフトウエア定義の電力の実装について述べた。しかし、ここでの議論はまだ詳細を省略しており、将来的にもっと詳細について発表していく予定だ。

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