シリコンバレーの電力事情をICTで改善する
日本同様、米国でも電力事情を改善しようとする動きが見られる。スマートーグリッドとか
マイクログリッドとして紹介されている。特にマイクログリッドとしては、全米で約10件のプロジェクトが知られている。その中には、NEDOが推進する日
本勢のニューメキシコ州やハワイでのスマートグリッドのプロジェクトも含まれる。
シリコンバレーでの高品質電力への開発
と
ころが、技術やイノベーションで有名なシリコンバレーでは現在までその動きはなかった。既知のように、スマートグリッドは電力、ITと通信の融合と言われ
ている。当然ながら、ITと通信の会社はシリコンバレーにはごまんとある。今までこの動きがなかったことの方が不思議である。地域を決めて、それぞれの利
益が絡む電力、ITと通信のステークホールだーをまとめて、こういったものを建設するのは容易ではない。その中心と言うか核になる団体が必要だ。
この役にぴったりなのが、Joint Venture Silicon Valley (JVSV)だ。
JVSVは1993年に創立され、シリコンバレーの地域の経済や生活の質に影響する問題を解析し問題解決のために必要な活動を行う。JVSVは広くビジネ
ス、政府、学術研究機関などの既存および新規のリーダーを結集して問題点にスポットライトをあて、革新的な解決方を目指す。JVSVの会員はそうそうたるシリコンバレーの会社を含む。例えば、AT&T、Adobe、AMD、Cisco、Google、HP、Juniper、Microsoft、NetApp、Oracle、VMwareなのだ。日本関係では三菱、NEDOとJertoが会員だ。
JVSVは2012年の夏にSmart Energy Enterprise Development Zone (SEEDZ)への構想が始まった。筆者は直接は関わらなかったが、ホワイトペーパーへ
のコメントや議論に参加した。SEEDZはシリコンバレーの電力消費者、機器ベンダー、電力事業者、シリコンバレーの市町村やその他の関係団体を結集して
未来のスマートエネルギーネット・ワークを構築するプロジェクトだ。ここでいうスマートエネルギーネット・ワークは高い信頼性、品質、安価や持続性を提供
できるものだ。
SEEDZの地域
シリコンバレーの地理に詳しくないと場所を特定しても分かりにくいかもしれないが、以下に示す。
出典: Joint Venture Silicon Valley
太
字のオレンジの枠で囲まれたのが、SEEDZの領域だ。真ん中に見える滑走路が、NASAの研究所があるNASA AMESだ。その西はMoutain
View市でここにGoogleの本社がある。NASAの東はSunnyvale市で、YahooやJuniperやNetAppがある。南の境界は高速
道路の101号線と237号線だ。当然シリコンバレーはもっと広域だが、この地域が選択されたのは理由がある。この地域は99.99%が商業および産業ビ
ルで、普通の家庭を殆ど含まない。米国の他のスマートグリッドやマイクログリッドのプロジェクトはどちらかというと、一般家庭を対象にしているものが大部
分だ。
この地域のプロファイルはどうかというと
* 地域の広さは2,140万メートル平米の中に470の建物でその所有者の総数は380で大部分はハイテックのオフィース、研究所とデータセンター
* 175-200 MW の需要
* 約13 MWが分散型発電によって生成されている。発電元は太陽光、バイオガス、燃料電池やコ・ジェネレーション
* 数百の電気自動車の充電ステーションの設置
主要な要素
このプロジェクトは複雑で多くの要素を含むため、大きく8の分野の分かれている。
1. ビルディング・システム->ビル内の冷却、照明、EMS、持続したエネルギーチューニング
2. デマンドと応答->DR/ADRおよびダイナミック‐プライシング
3. 電力系統のインフラ->電力品質、自動配電システム、自動回復
4. 技術の相互運用性->米国国立標準技術研究所(NIST)のスマートグリッド技術の相互運用性、各要素
5. モチベーションと出資->出資のためのストラクチャー
6. エネルギー貯蔵庫->各種のエネルギー貯蔵とその応用
7. 電気自動車->充電ステーション、スマート充電、電力系統への影響
8. 分散型発電->太陽光、燃料電池、バイオガス、その他
現在までに、ビルディング・システム、電力系統のインフラ、エネルギー貯蔵庫と分散型発電のワークショップが開催されている。次は電気自動車のワークショップが計画されている。
筆者は最近SEEDZの戦略的アドバイザーとして就任した。今後SEEDZの活動を時々報告したい。