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30年に渡って関わってきた米国のITの出来事、人物、技術について語る。

標準、IT、そして木を見て森を見ずの技術屋

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一般的に、技術屋はひとつの技術や現在進行中のプロジェクトにこだわるあまり全体が見えず、出世はしないとよく言われる。管理者から見ると、好きな技術をさせておけばあまりうるさいことも言わず頭を悩ますことも少ない。今の環境は「技術バカ」に厳しい。しかし場合によっては、ひとつまたは複数の木に注目することで森全体を理解できるかもしれない。ここでは木はネットワークのプロトコルで、森はビル管理という分野だ。

最近、ビルの管理システムを調査している。ICTだったらデータはIPで搬送しますで終わりなんだが、ビル管理ではいろいろとややこしい。そもそも、ビルのエネルギー効率を建設した当初のように保つには、常時監視して色々なパラメータを計測する必要がある。これを最近はやりの言葉でcontinuous commissioningという。継続的な性能検証とでも言おうか。ビルを設計して建設が終わった段階で実際に運用を開始する際は、すべてのものが新しくエネルギー効率も最高レベルだろう。でも時間が経てば、装置やそのコンポーネントは劣化し故障することもあるし、ビルを取り巻く環境も使用環境も変化する。だからシステムを検証して設計時に求めた性能を確認することが必要だというのだ。

収集されたビルのデータは統合されて解析され、その結果個々の装置、例えば、冷暖房空調設備(HVAC)、配灯システム、セキュリティ、火災報知機、保守、入館管理などに制御信号が発せられる。以前は各システムにそれぞれ独自のアクセスや監視の方式が使用され、全体の絵を見ようとすると複数の画面を見るか手で情報を統合しなければならなかった。何やら、昔むかしのICTのようだ。

この問題を解決するため、米国暖房冷房空調学会(ASHRAE)がビル管理のためのBACnetという標準プロトコルを開発した。これは複数のPHY/MAC層を利用できる。例えば、EthernetARCNETEIA-485EIA-232LonTalkだ。そうか、BACnetがビル管理の米国および世界標準プロトコルだ。まあ、ひとつくらいなら新しいプロトコルも何とかなるか、これでめでたし、めでたし、と思ったらそうならない。最近の2つの動きがBACnetに影響を与えている。その2つとは、無線と我らがIPだ。センサーが当初から配備されていないビルだと、多くの部屋や装置にセンサーを設置するだけでもかなり大変だ。しかしセンサーはネットワークに接続していなければ宝の持ち腐れだ。それだけ多くのセンサーを繋ぐには、有線では大変だ。場所によっては天井や壁に穴を開けなければならないし、ケーブル代だって馬鹿にならない。そうしたら無線しか解があるまい。

無線でセンサーをサポートするプロトコルといえばZigBeeだ。スマートグリッドではホームネットワークとメータ、メータからデータ収集ポイントまでの通信で圧倒的な強みを発揮している。ZigBeeIEEE 802.15.4PHY/MACに指定している。IEEE 802.15.4802のプロトコルのひとつで、低電力、無線、短距離通信をサポートしており、ビル管理に使用されるセンサーに最適だ。現在BACnetZigBeeを介して通信できる。

では我らがIPはどうなんだろうか。IPの地位は揺るがず、無線でIPv6をサポートする6loWPANが提案されている。BACnetはこれも取り入れている。更に、IPベースでなかったZigBeeIPを取り入れてZigBee IPを規定した。なんかややこしくなった。それではBACnetは無くなるのかと思ったら、米国国立標準研究所が指定したスマートグリッドに使用される技術の中にIPと共にBACnetもしっかりとある。これはBACnetがちょっとやそっとのことでは無くならないことを示している。それどころか、ビル管理のネットワークのプロトコルはBACnetで、必要に応じてZigBee6lowpanを取り込んでいると理解した方がよいだろう。

ちらりとネットサーフィンをした感じでは、このIPを取り込む動きはスマートグリッドから来ている。自動メータ読み取りインフラやフィールド エリア ネットワークをやっているSilver SpringCisco同様IPを標榜している。最近Cisco6loWPANベースのArch Rock社を買収したことでIPへの道筋がはっきりとしたといわれている。更に、Ciscoはスマートメータ分野のリーダーであるItron社と協業することになった。現在ZigBeeが圧倒的に多く使用されているスマートメータの通信にIPを注入しようというものだ。

さて、話はややこしい。技術屋であればたくさん技術があって面白いな、ですむが、アナリストとしては、じゃどの技術や組み合わせが最終的に市場を制覇するのか興味のあるところだ。IPはどこにでも進出するんだろうか。新築はともかく、既存のビルの監視や計測にIPを導入することは可能なんだろうか。

たまにはひとつの木に焦点を当てると、何か、全体の絵が見えてくる気がする。という言い訳をして、技術に溺れてしまう自分。。。。。

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