ベンチャーは千三つと分かってはいるが
米国の不景気は底を打ったという観測もあるが、ここシリコンバレー、少なくとも筆者の周りでは景気の良い話は聞かない。ここ1年位付き合っているベンチャー企業の人から最近電話があった。付き合っているといっても、向こうの製品のデモをみたり、こちらのコネを紹介したりの、付かず離れずの関係だ。資金導入もまだという状況。このベンチャーの詳細を書くわけにはいかないので、ぼかした表現になるのをお許し願いたい。
電話の内容は、某有名企業に勤めていた人がこのベンチャーに参加するという話だった。先方はこちらがその人を知っているとは思わなかったらしく、その人のバックラウンドを話し始めた。筆者は偶然この人のプレゼンを最近聞いていたので、直ぐにこれはかなりおおごとになるかもしれないと感じた。確かに彼の専門分野はこのベンチャーの製品と関係が深く、しかも知名度は抜群だ。
よく言われるように、ベンチャーが成功する条件は市場と人材だ。もちろん、製品が他の製品とあまり変わらない「me too」では良くはないが。彼という人材を得たことで、このベンチャーの値打ちが上がることは間違いない。単に価値が上がるだけではなくて、投資家へのネットワークも広がる。この情報を筆者に伝えることが電話の用件だったが、これには向こうの思惑がある。実はずっと前に、資金導入ができたら参加して欲しいと言われた。今回の動きを受けて、人材を確保しておこうというのだろう。
資金が無い状況で、ストック オプションがどうの、給料がどうの、なんて話はしても無駄だ。サラリーマンを辞めてこういういかがわしいベンチャーに関わり始めたときは、時間を掛けて契約書なんかを色々と用意したものだが、ベンチャーは千三つだから、かなり行けそうにならないと正式な話をしても時間の無駄だ。もちろん、最初からちゃんとしておかなくてはと主張する人もいるが、こう何回も話が途中で駄目になると、こちらも真面目にやる気がなくなる。
ともかく、先方は資金繰りに明るい兆し(本当に兆しだけ)が見えたと思っているので、次は製品を作るエンジニアリングの充実を図りたいのだろう。つまり、エンジニアリングの管理者が欲しいということだ。人材は来ては去る。すべてタイミングだ。ベンチャーをやっていて難しいのは、このタイミングだ。人材もそれぞれのチャンスを見ながら、どのベンチャーが当たりか見極める。雇う方は、知らない奴は雇いたくない。だから、知り合いの筆者に話が来ている。先方は、あまり何も動きがないと筆者が逃げるのでは、というので、繋ぎ止めておくために電話をしてきたのだろう。昔はこの手の話が結構あったが、最近はそういった所へ出向かないせいか、あまり話はない。まあこの話も千三つのひとつだろうから、期待しないで待っていよう。
確かに、先方のネタは有望だが、いまいち「これは!」という感じがしない。まだ、差別化と対象市場が絞り込めていないような気がする。資金が入れば、乗り込んで一発暴れてやろうかとも思うが。いかん、これは千三つなのに、もう先方の術中にはまっている。危ない、危ない。
サラリーマンを辞めて独立した時は、時間の配分が自由になって、面食らったものだ。もしもこのネタに乗ったら、時間的拘束が増えて好きにできなくなるなあ。いかん、また先方の術中にはまっている。ベンチャーは麻薬的な魅力があるので、要注意だ。
今週から日本だ。涼しくてカラッとしているシリコンバレーから、観測史上一番暑い9月の日本へ行くのはあまり気が進まないが。。。。。。