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就活必勝法(米国IT版) ― どうしたら採用されないか

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三十数年の間、米国のIT業界で、採用のために面接したり面接されたりしてきた。採用の面接は、する方もされる方も難しい。こうしたら絶対採用されるという方法はないが、こういうことを言ったりしたりしたら採用されないというのは比較的簡単だ。最近協業している市場調査会社で、筆者のGreen IT関連サービスを売る営業担当者を採用するための電話による面接を行ったが、今回の候補者にはこれでは採用されないという問題点がいくつもあった。その経験を中心にまとめてみる。但しこれは中途採用の場合。例によって独断と偏見に満ち溢れたコメントであるので、御了承を

  • 履歴書が怪しい:米国では一般に過去10年程度の職歴を書く。それ以前のことはあまり問題にされない。現在の職を一番詳細に書くのが定石。即戦力を期待されるからだ。この候補者は現在の職についてたった3行ほどで、何をしているのか全く分らない。全面的に怪しいのは、大手の市場調査会社に勤めた経験(15年程前)を長々と書いていること。この経験は関連があるといえばそうだが、15年以上前のことはあまり参考にはならない。営業はマーケティングとも密接に関連する。自分を売り込めない人間にサービスの売り込みができるのだろうか。また、履歴書に書いてあったテレコム(通信分野)はITと共にICTと一括りにされることが多いが、テレコムを知っているからといって必ずしもITにも通じているとは言えないので、これは要注意だ。
  • 履歴書で経験のあるシステムやOSを羅列する:これを奨励する人もいるが、Windowsの横にLinuxUnixがあっても信用できない。また開発言語にC++JavaRubyPHP、そしてアプリもやたら羅列してあるのは信用できない。これは、それぞれの分野のキーワードを知っている程度だと示しているようなものだ。こういうのを見たら履歴書はすぐにゴミ箱へ。今度の候補者は営業なので、これはあまり関係ないが。
  • 歴書で誇大広告:上とも関連するが、大きなプロジェクトの歯車として働いたことをそのチームのリーダーだったかのような書き方をする人が多い。実際に面接 をして話をすれば簡単にバレるが、ともかく面接までこぎつければという意図だろうか。今回の候補ではないが、リーダーのプレゼンテーションをまるで自分が やったかのようにプレゼンした人がいた。彼女は採用されたが、その後能力不足と経験不足が露呈して、お試し期間終了を待たずに自分から去った。日系企業に いたときには、新聞に募集広告を出すと、日本語が堪能(誰もその能力を求めてませんが)だとの触れ込みで現れる候補者が結構いた。その大部分は、日本語と いってもおはよう、ありがとう、こんにちは程度だった。
  • 容を知らない:面接する方は、相手が本当にどれだけ知っているのかを知りたい。これは難しい。中途採用の場合、候補者は海千山千の兵だ。大体、実際の面接 にたどり着くまで、問題ありと思われる候補者は書類選考や短い電話での会話で除かれている。今回の候補者は、温室効果ガスの観点からGreen ITを売り込むべきだという主張で、そればかりに拘った。こちらが書いたものを渡して、彼が推奨するチャネル用に書き直すよう要請した。こういう宿題形式は、相手が本当に何を知っているのか調べるときに役立つ。この候補者の場合、Green IT、エネルギー効率化、クラウド、SaaS 温室効果ガス制御が頭の中でごっちゃになっており、それぞれの相関関係が分らないようだった。それでそれに関して説明を求めたところ、一般論や関係のない 話ばかりで、肝心のポイントに全く触れない。これは政治家がよく使う手で、質問に対して的確な答えが返せないので、どうでもよいことを延々と話し、質問者 が「もうどうでもいいや」と思うのを待っている。この候補者は約5分間、堂々巡りのどうでもよいことを話していた。分ったことは、彼はワンイシュー候補者で、全体像も市場の成長パターンも理解していないということだった。
  • 誰に売り込むのか分っていない:今回の面接は電話を介して(先方はNYでこちらはシリコンバレー)市場調査会社のファウンダー2人と共に候補者と話をした。この候補者は既にこの2人のファウンダーと話しており、2人が自分の採用を決めることを知っている。そのためか、私が参加した2回目の面接で、この2人に売り込むことにだけ熱心で筆者を無視する。筆者の自尊心が傷つくとかいうことではなく、営業として与えられた状況で誰に何を言えば売ることができるかを全く理解していない。この候補者は話の内容に違和感があり、判断力に問題ありと筆者のデータベースに格納された。3回目の電話面接で断る口実を考え始めた。

 

では、これをひっくり返せば採用されるのだろうか。これは保証の限りではない。たった一度、短時間話したくらいだと、受け答えが滑らかでそつ無く話ができる候補者が良く見える。しかし面接は何度か行われることが多いし、最初の印象だけで決まるものでもない。人が人を選ぶということだから、感情的なものが当然含まれるし、評価を間違うこともある。米国の採用では、マネージャーのポジションであればそのポジションの上の人は当然のこと、そのマネージャーの部下に当たる人々も面接する。採用権を持つ人は、実際に面接をした人たちの意見を総合的に判断して、直属上司の同意を得て採用に至る。これだけやっても、採用は失敗することがある。能力だけではなく、周囲と馬が合わないということもあるからだ。今後も面接する立場、される立場は続く。

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