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公務員の仕事は本当に安定しているのだろうか

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竹内義晴さんが気になる2本のエントリを書いていらっしゃいます。

大学生のみなさんへ ― まだ、諦めないで下さい

「楽してもうけたい」の気持ちにも振り返りを

自分はというとなにか公益性のある仕事をしたいという思いがあり、今の会社に入りました。果たしてそんなうまくいくもんかと自分でも半信半疑でしたが、入社から昨年までは社会保険関連の情報システムで、皆様の金銭的な負担を削減する方向に力を使うという役割を、そして昨年からは金融関連の情報システムで、あるべき姿に近づけるという役割を果すことができています。ぼやっとした書き方ですみません。

もちろんお金はたくさん欲しいという思いもありました。皆さんの笑顔があれば死ぬまで働きます!なんてことは全然ありません。どれくらいたくさん欲しかったかというと、そのへんはバランス感というか、投資とリターンの関係にもよりますよね。「時給換算」なんて言われることもありますけれども。

さて公益性のある仕事というとやはり公務員が思い浮かびます。極端なところでは自らの危険を省みず働かなくてはならない消防士や警察官といった仕事もありますし、それとは違った角度から人を助ける福祉の仕事などもあります。

そういった仕事にも興味があったのですが、私が在籍していた商学部の授業で「コーポレート・ガバナンス」ということを学び、公務員は自分の目指す方向に合わないと思いました。(絶対的な善し悪しでなく、自分の性格との相性が良いか悪いか、という判断です)

株式会社は株主が動かし、ほとんどの株主は株価が上がることを望む。株主は会社の経営を経営陣に託し、経営陣は利益を上げることで株主から資金を募った恩に報いる。でなければ株主は資金を引き上げて株式会社はつぶれる。

これが株式会社の運営のごく基本的な捉え方であると思います。例えば自分が好きな仕事があるとして、それがうまくいかなくなった場合、どうなるでしょうか。不採算になった部門は整理しなくては業績が低迷してしまいますので、株主→経営陣→部長→課長という具合にしわ寄せがいって部門が消滅します。しかし自分に何らかのプランを描く力があればどうでしょうか。自分→課長→部長→経営陣→株主という具合にエスカレーションしていって「じゃぁ事業続けてもいいよ」という目が残されています。また、部門が消滅しても技術やノウハウを活用して新しい部門を立ち上げるですとか、自分たちでお金を出して会社から部門を買い取る、EBOしてしまう、そういったやり方もあります。

『ラクオリア創薬 - Wikipedia』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%A2%E5%89%B5%E8%96%AC

その一方で公務員はというと基本的には選挙で選ばれた議員が作った法律のもと、選挙で選ばれた首長や議会の指揮系統の下に入って仕事をすることになります。事業仕分けが話題になりましたが、政治が主導して「この仕事なくしましょう」となったらどうにもならないということになります。もちろん民営化であればその仕事を続けられますし、本当に仕事が消滅するとしても別の仕事に回るなどし、クビになって路頭に迷うということはないと思われます。

国や地方自治の制度には詳しくありませんが、自分の仕事が消滅してしまうということ自体に抗う手段は民間の仕事ほど多くないように思います。普段から仕事に打ち込んで有権者に必要性を感じてもらうですとか、調査統計を通じて仕事の重要性をアピールするということはできるでしょうが、株式会社と違って「利益をあげればOK」という基本ルールがないゆえの難しさがあります。また、有権者に直接的に訴える手段は、公務員の政治的行為が制限されている事情から難しいでしょう。

『政治的行為 - Wikipedia』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BF%E6%B2%BB%E7%9A%84%E8%A1%8C%E7%82%BA

更に、今後公共が担う仕事は少子化に伴なう人口減により税収が減少に向かう中で「公共の仕事として何をすべきか」という選択との付き合いになります。すごくやりがいもあって住民に喜ばれている仕事でも他の仕事との天秤の中で切り捨てられてしまうということが起こりえます。もちろん民間への開放が可能な分野の仕事であれば自分が参入してしまうという方法もありえます。刑務所の運営が民間に任されると聞いたときは「まさか」と思いましたが特に問題なく進行しているとのことです。

『美祢社会復帰促進センター - Wikipedia』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%8E%E7%A5%A2%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E5%BE%A9%E5%B8%B0%E4%BF%83%E9%80%B2%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC

公務員の仕事というのは民間ではなかなか任せてもらえないような情報を扱ったり、難しい問題に対処したりというやりがいのある仕事であると思います。その前提として手綱は有権者の手に握られており、本当に大好きな仕事が選挙の結果次第で消滅してしまう、ということが可能性としては存在します。公務員の「雇用」は安定しているかもしれませんが、「仕事」は安定しているとは言えないかもしれない。そんなことを就職活動のときに考えました。

自分が好きになった仕事が消滅してしまうのは悲しいので、「お金」という尺度をもって仕事を続けられるか、続けられないかというところで粘れる民間の企業のほうが自分に合っているだろう、そのように行動し現在に至ります。もちろん、公共周りの仕事をしているとドミノ倒しに自分の仕事が消滅する可能性はありますけれども。事業仕分けの話(の中でも「これほんとに切るの?」と個人的に感じるもの)を聞くと、あながち間違いでもなかったかなと思っています。

ちょっと歪んだ考え方かもしれませんが、そんなことを思い出しました。

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