2019年が過ぎていくけど2018年の小腸の手術の思い出
40歳になると不惑なのでそうなる前に何か惑った思い出を書いておくのが良いかと思いました。ICT支援員に受かったよという話にしようと思ったのですが、twitterでもおそろしく合格報告も不合格報告も少ないのでもう少しキャッチーな話題で小腸を10cm切り詰めた話をしてみます。
TL;DR
小腸は暗黒の臓器と言われるだけあって病気を特定しにくいのですが医師の方々の的確なアプローチにより悪いところを切って完全復活して術後も問題ないという話です。
貧血編
といっても2018年に遡りひどい貧血になったのです。やはり年齢からすると消化器にストレス性の潰瘍などあるんじゃないかというのが疑われるので尾籠な話で恐縮ですが便潜血検査と並行して血液検査などしました。明確な潜血があり、かつ恐ろしい血液の病気ではなさそうなので悪いことは悪いけど筋は良さそうということで安心です。そして血液が消化されているかどうかでまた尾籠な話が続くのですがどれくらいの位置で出血しているかもわかるとのこと。鮮血に近いと終わりの位置に近いところに出血部位があるということですね。ロジカルです。血液が消化されていたのでそこそこに上流で出血しているのが分かり胃カメラになりました。
胃カメラ編
胃カメラは胃が空っぽであればいいので前日くらいからの絶食で済みます。そしてオエオエするとよく言われますが、できるだけそうならないよう術前にまずセルフサービスで麻酔をします。片栗粉でとろみをつけたような麻酔薬でガラガラうがいを1分くらいするイメージですかね。そうすると感覚だけなくなるのかなと思いきや筋肉もうまく動かせなくなる感じでして、飲んでも安全な薬だとは事前に聞いてのですがそれが気管をふさいで溺死しそうになり咳き込みました。が、噴水みたいになるかと思いきや咳も弱いので呼吸ができなくなって本当に怖かったです。胃カメラはそれと比べると大したことありませんでしたが個人差が強いようです。点滴で鎮静もかかりますのでしばらく回復が必要でした。その当時は非常にストレスが貯まる仕事をしていたのですが、胃潰瘍の痕跡のようなものが少しありますがキレイですね、というコメントで終了しました。
大腸カメラ編
めったに小腸がおかしくなることはないですし、小腸カメラは体への負担が段違いなので大腸にアプローチしましょうということで主治医に華麗なるフラグを建てていただき、大腸カメラになりました。これは前日の晩には自宅で下剤を1リットルかそれ以上だったか飲みます。非常にさっぱりした気分になります。ふらふらした体で病院に向かい、鎮静をかけて少し恥ずかしい思いを感じることもなくいつの間にか終わります。腸内は何もしていないとしぼんだ状態になっていてヒダ状になったところが見えにくいからだったかどうか、ガスでお腹を膨らませて検査するためお腹がパンパンでつらかったです。これも何もありませんでした。
カプセル内視鏡編
光学機器メーカーのオリンパスが素晴らしい発明をしておりカプセル内視鏡を飲みました。無線通信でホルダーに画像が転送されるのですが、恐ろしいことに自分でその画像を見ることができます。何がすごいってそのホルダーを家の片隅に置いてどんどん離れていっても受信しているのですね。暗号化など十分にされていれば良いのですが、街中でホルダーを持っている人がいたら消化器を見られてしまいます。メルカリにホルダーなどが出ていたらどうしよう。自然の流れに身を任せてカプセルが流れていくため確率的には50%くらいでしか出血部位を特定できませんが、小腸内視鏡と比べると体への負担が非常に少ないので1回やっておく価値はありますというおススメのもとで実施して無事に小腸の出血点が画像に収められておりました。主治医の嬉しそうな表情よ。私も情報システム関係者として謎の不具合の特定に成功すると嬉しくなるので気持ちはわかります。絶食がつらいのと、大きめの飴をそのまま飲むような勇気がいる他は負担感のない楽な検査でした。ただそこそこ大きなものなので、もともとの狭窄のような疾患がある人がこれをやってカメラが詰まってしまうようなことがあると命に関わるそうです。尾籠な話ですが1-2日は事後にカメラを探すようにと言われました。飲むときは苦しくても最後はわからないものですね。それなりに嫌な作業ですが万一の時は入院沙汰と聞いていましたので頑張って探し出しました。無事に出ました。ラッキーな人はLEDが光っているから分かると聞いていたのですがバッテリー切れていました。
小腸カメラ編(下巻)
小腸カメラは長さが必要であることに加えて、体の中であまり固定されておらず動きやすい小腸という部位を進んでいくという難しさがあるようです。そのためカメラ自体にバルーンが複数ついており、それを腸内で膨らませてカメラを前進させてバルーンを縮めてというような尺取り虫のような動きをするので時間もかかり体への負担も大きいようです。ちょっと記憶が定かでない部分もあるのですが、小腸カメラは上からと下からと2択あり、私の場合はカプセル内視鏡の通過時間等の総合判断からちょうど真ん中のあたりということでまず負担感の小さい下からとなりました。が、深く鎮静をかけないとしんどいということで日帰りできる感じではないため2泊3日の入院となります。初日は飲食もできず下剤も飲んでヘロヘロとなり、2日目が検査でした。検査後は覚醒のための薬(と書くと危ない感じもしますが)の影響か酔っ払ったようになったような覚えがあります。食事はすぐ再開して3日目は普通に退院してきました。が、覚醒が中途半端でよく覚えていなかったのですが退院際に「また検査ですね」と告げられて出血部位が分からなかったことが判明します。
輸血編
ゴールへの道のりに若干ながら時間がかかりそうなのですが、日常生活を送るにはやや不安な程度に貧血が強いままだったために赤血球の輸血を受けました。アレルギーが出ると危険とのことでこういう場合の輸血は少量ながらも2時間や3時間ほどかけてするのですね。知りませんでした。非常に座り心地の良い椅子とテレビ付きの環境でした。
小腸カメラ編(上巻)
小腸カメラは長さが必要であることに加えて、体の中であまり固定されておらず動きやすい小腸という部位を進んでいくという難しさがあるようですがそのあたりは同じメカニズムで上から入れました。深くまで入るので上からであっても絶食&下剤だったような。そこはちょっと定かではありません。あと下からとの大きな違いは十二指腸越しに膵臓を刺激するので膵炎になる恐れがあるという点です。そのため初日はスタンバイ、2日目に検査、3日目は膵炎になっていると食事するといけないので点滴生活をしつつ血液検査の結果がよければ食事が出たような出なかったような。4日目は余裕で退院という感じでした。そしていよいよ小腸の出血点が特定されました。やっぱり主治医が嬉しそうでしたっけ。
診断
小腸に何か通常は存在しないものができていることはわかったけど切り開いてみないとわからないということでした。おそらく血管かリンパ管かの2択で症例の数からいえば血管だとフラグが立ちました。非常に珍しいそうです。外科手術に耐えられそうならやってみましょうということになりました。踏み台昇降運動と心電図を組み合わせたような検査や、肺活量や酸素飽和度の測定などしました。
手術
全身麻酔の説明や手術自体の説明を聞いて家族に同意書を書いてもらっていざ手術となりました。大きな病院だったので開始時間は前の順番が終わり次第ということでじわじわ待つ感じでした。点滴ラインを確保したままで手術室まで車いすで運ばれていきます。手術台の上で横に寝た状態で背中を丸めると背骨にゴリっとした何かが刺さるような感触が。もうあとはフワッとした感じだけであっという間に手術が終わりました。と書けると良かったのですが、手術自体は終わっていたものの痛みが非常に強いまま意識が戻ってびっくりしました。声は出なかったような気がするのですが、謎のセンサーの数値を見て起きているけど痛そうということが麻酔の人には分かるようで注射器を操作したらまたフワッとして病室に戻ってこれました。あまり回復室に長くいたような気がしないのですが、さっきお腹を切って縫ったばかりなのに4人部屋に戻ってこれるものなんだと不思議に思いました。手術は小腸を10cmくらい切り詰めたのですが、おへそを上下に2cmくらい20針くらい縫っただけで傷跡はほとんど残りませんでした。
原因
不明とのことです。切り取ったのはリンパ管だったようです。腫瘍の専門医に見ていただき、悪性の(今後増えたりする)可能性はとても低いと聞いて安心しました。それはもう今後の人生というよりも、お腹の皮膚や筋肉の痛みがというよりも、点滴の針の沁みた感じというよりも、ひとえに鼻から一晩だけとはいえ胃の中の胃液などが縫合部位に流れる量が少しでも減るように吸い出されていたときの喉の奥の痛みと、術後に覚醒が微妙だったということと、消化の具合が元に戻るまでのずっと消化不良の感じがいやだったことが大きかったです。なおお腹や筋肉の痛みは自分で量を調整する麻酔でなんとかなりました。睡眠不足気味になりましたが寝不足でも仕事があるわけじゃないしと思えばそれほどつらいものではなかったです。背中に麻酔が刺さったままなのに体重を預けて寝るのも結構嫌でしたが慣れれば気になりませんでした。あと尿のカテーテルは事前の噂ほど抜くときに死にそうになるというものではなかったです。
事後
あっというまに貧血が回復しました。消化の調子も良いです。それなりに運動してもツレたりする感じもありません。関係者の方には本当にありがとうございましたと思いつつ、関係者の方には何度も「珍しいんですよー」と言われたことを時々思い出します。
ただそれは小腸が上記の通りアクセスが難しい臓器であることが原因であり、実は発見されていない程度に小腸に問題がある人はいるのかもしれないですね、と世間話的には教えていただきました。これからはまた変わるのかもしれません。
病名の遍歴は「貧血」「消化管出血」「小腸出血」「小腸血管腫」「小腸リンパ管腫大」だったかと思います。なんでもネットで見つかる時代なのでいつの日か自分も1/nになった論文に出会うかもしれません。
検索すると「小腸良性腫瘍は比較的まれなものであるが,その中でもリンパ管腫はきわめてまれなものである」なんて文章が出てきます。ほっとけ。
手元にはオリンパスのカプセル内視鏡が残されました。
教訓
貧血は徐々に進行すると鈍感な人はわかりません。私は階段での息切れや顔色の悪化を加齢によるものと思い込んでおり40歳も近づくとやっぱり階段がきついなーなんて思っていました。
自動で流れるトイレは良くありません。尾籠な話ですが、よく見るとやはりトイレで自覚できるタイミングはあったように思います。文字の通りに自分へのお便りであるなんていいますが、その通りだと思いました。
ありがちな話ですが消化管周辺はしっかりと調べてもらえたので、他に悪いところはなさそうという安心感があります。がせっかく手に入れた健康なので長続きするよう意識は高く生きたいです。
Qiitaみたいなフォーマットになってしまいましたが以上がご報告でした。