辻さんの本「愚直に積め!」の感想
辻さんから「愚直に積め!」を頂きました。ベンチャースピリットを中心に、働き方、働かせ方など仕事に関する様々なアドバイスが書かれています。
ベンチャー起業家はもとより、ベンチャー企業で働く人、中小企業の経営者、大企業で働く人にも、ベンチャースピリットを学ぶ意味で読んで頂ければ、と思っています。
キャピタリストの視点 > 愚直に積め!(辻俊彦著、東洋経済新報社)
辻さんのサイトにある通り、ベンチャー企業を経営していく上で必要なものについておもしろく学ぶ事ができました。キャピタリストでも経営者でもない、SEの視点を意識して感想をまとめてみました。
真剣さは集中力であり、笑いの息抜きがあってこそ、真剣度を高める事ができる。仕事を楽しんでいるか、挑戦を楽しんでいるか、失敗を楽しんでいるか、すべてを笑い飛ばせるかどうか、で判断できる。笑いがあれば、心の充足感は保たれる。(笑顔のある会社はいい会社である:61ページ)
開発をしていると、やはり疲れます。管理にしろコーディングにしろ頭を使いますし、不測の事態によって大変な思いをすることも少なくありません。システム業界にはチャレンジングな人が多いですので、そういった苦しい場面でも笑っていられる人が多いように思います。私自身も確かに苦しい時ほど大きな充実感を感じます。(できれば回避しますけど。)
全力投球できないのは、徹底的に考え抜かれていない証拠である。自信や確信は、事実の集積でしか獲得できないものである。(自信満々ほど危険なものはない:94ページ)
情報システムの開発でも、設計に不安や未決事項があるとプログラミング工程でのモチベーションに影響が出ます。また、お客様に新システムの提案をするにあたり、類似システムの成功事例に自分自身が携わっていれば全力投球で薦めることができます。セミナーや事例分析でどれだけ理解を深めても、自分がその事実に関わっていなければやはり迷いが生じるように思います。(私に営業センスが無いのかもしれません)
「判断」とは、存在する正しい答えを探すこと。論理的な解決が可能である。「決断」とは、正解が無い場合に決めること。正否は現場で検証する。(正解がないときに決めるのが「決断」である:107ページ)
システム開発においては、お客様に対して「決断」を迫る事は避けたいと思っています。お客様のスキルを鑑みて、ハードウェアの選定やセキュリティ対策などの難しい部分で「ご判断」をいただけるような資料を揃えられるようになりたいです。「このままでは間に合いません。どうか開発着手の御聖断を。」とはできるだけ言いたくないものです。
経営意識の低い企業は予算をなかなか作らない。予算を予想と勘違いしていて、予算は的中率を競うものだと思い込んでいる。また、予算ができても実績との比較をなかなかしない。的中率を上げたいがために、実績に合わせて予算を変える。大事な事は、予算と実績のズレを認識し、今後に生かしていくことである。(予算とのズレがあるから成長する:116ページ)
予算もスケジュールも当初の予定に完璧に合わせられるほど優秀であるという考えの人は少なくないように思います。ズレが発生したら、そのズレの要因を分析することはプロジェクト管理の基本です。そのズレを解消するか、リスケジュールを行うかは要因がはっきりしていなければ判断できません。可能であれば、予算やスケジュールを作成する時点で発生しそうなズレを想定しておく事が望ましいです。なぜならば、ズレが想定されれば、そのズレを検出するにはどのようなベンチマークを用いるかが決まり、それを実行すればズレをいち早く察知することができるからです。
目標未達の状況においてすべき事は、失敗から学ぶ事であり、仮説検証をきちんと行うことである。きちんとした検証こそが、責任をとる方法であり、未熟さの克服につながる。(失敗した時にどうするかで明暗が分かれる:140ページ)
今日ちょうど森崎さんのブログを読んだときに同じような事を考えていました。失敗が判明したところで壮大な責任の押し付け合いや非難合戦が始まってしまうことほど非生産的な事はありません。森崎さんのエントリには
誰かを責めるような計測によって敵を作ってしまうと計測自体が無駄な活動になってしまう。まずは、コミュニケーションのきっかけの1手段というレベルにとどめておくという使い方になるだろうし、メトリクス収集が洗練された段階で、意思決定の材料、根本原因の発見、工数配分、プロセス改善につなげることができるようになるだろう。
というようにあります。そのような場面で、改善に向けて「透明性のある意思決定」をプロセス化できたらきっと強い組織が作れるのでしょう。
森崎修司の「どうやってはかるの?」 > 敵を作らない計測
http://blogs.itmedia.co.jp/morisaki/2008/02/post-19b8.html
森崎修司の「どうやってはかるの?」 > ガラス張りの意思決定とでもいうのだろうかhttp://blogs.itmedia.co.jp/morisaki/2007/09/post_3bcb.html
ビジネスは決して劇的なものではなく、淡々としたものだと思っている。ニュースを追い求めるマスコミでは、すべてが劇的に表現され、成功したビジネスは「プロジェクトX」として扱われる。(ビジネスは淡々と急ぐべし:174ページ)
プロジェクトは波乱を前もって回避して波風立たない凪の海を滑るように進むのが一番良いと思っています。そういった意味ではプロジェクトXのプロジェクトは追い込まれた状況になった時点で一度負けていると思います。もちろん、そこからのリカバリは素晴らしいものばかりです。プロジェクトXはDVDが発売されてしまっているので再放送は期待できないでしょうね……。
自己顕示欲が強い人は、言われたとおりに実行するのを嫌がるが、いいアドバイスは、そのまま実行するほうが賢明な選択である。(幸せな企業には共通項がある:193ページ)
気をつけます……。手始めに辻さんのブログを真似て感想を書いてみました。
たとえばITビジネスの場合、顧客がITで何を実現したいかに心を配る必要がある。顧客にとっては、仕様どおり動く事ではなく、所期の目的を達成できるか否かが重要である。システム開発で苦戦すると、開発完了が自己目的化してしまい、顧客が所期の目的を達成するためのサポートがおろそかになりやすい。(あなたは誰に何を売っているのか:229ページ)
ノーコメントで。