セルフプロデュースで一生食べていけますか?
先日「個人出版が活況を呈するかも…というこの時期に、日経さんが「名言」、「迷言」どちらとしてこれを取り上げているのかが気になるところ」というエントリを書かせてもらいました。
中身としては日経の「名言・迷言~日経ビジネス語録」の宮部みゆきさんの言葉で、そこには「出版社」という言葉があったのですが、昨日さまざまな方面に衝撃を与えたiPad/iPhone電子書籍「AiR」には「出版社」はありませんでした。
詳しくは、オルタナブロガーでこのお二方が取り上げているこちらのエントリをご覧ください。
出版社、レコード会社がなくても出版や音楽をリリースすることは技術的には可能になりました。
ただ、大規模なセールスを狙うパッケージにおいては、大手書店でのセールスプロモーションだったり、音楽ではツアーを行うには地元のプロモーターの方々などの協力が不可欠ですから、ビジネススキームの中で、完全に出版社、レコード会社が無くなる事は無いと思いますが、わたしが最近背筋がむずむずするのは、こういう版元さんが異様にコンテンツ制作者を大切にする姿勢(あるいはあくまでポーズ?)を各メディアで披露している事。
20年以上前、こういった出版社やレコード会社の力は絶大で、バブル時代においては、ディレクターの思いつき企画で、馬鹿売れした企画もあれば、無駄金企画も沢山あった訳ですが、企画モノにおいてはディレクターなりプロデューサーがGOするかどうかの判断をするかどうかだけで、そこで使われるタレント・アーティストは使い捨てであった時代も当然あった訳で(←多分ここは現在進行形で書くべき箇所ですね…)なんか急に皆さん善人になってるような、なんとな~~く座りが悪い感じなんですよね(苦笑)
こんな時代ですから、出版・レコード会社は作家・アーティストを大切にします…という姿勢を打ち出さなければ、すでに一財産を築いたアーティストからは「そんな待遇では今回はセルフリリースで行くから」と言われ兼ねず、大御所に対してはこれまでの気の使い方とはまた別の気苦労が増えそうですよね(苦笑)
ただ、アーティスト側もあまり自分勝手が過ぎると、資金が必要なプロモーションなどをすべて自分の手でやるには苦労も大きいでしょうから、ここはやはり微妙なビジネスの力関係の維持ってことが必要でしょう。
さらに、一定レベルの作品を、予算、制作スケジュールを守ってリリースすることを経験しているプロであれば、出版における編集者・校閲・デザイナの方々の存在、音楽における、ミキシングエンジニア・マスタリグエンジニア・デザイナの方々の存在の意義は理解していると思いますので、長きにわたる創作活動の一環において作品の一部を完全セルフで制作・リリースするかもしれませんが、こういった協力者の有り難みを忘れている人はいないでしょう。
レコードからカセット、CDからダウンロード販売という音楽の歴史をなぞりながら、出版社が必要ないとか、レコード会社が必要ない…紙の本も必要ないというのはその可能性において嘘ではないのですが、もう少し踏み込んでみると、創作物のアイデアを具現化し、パッケージとしてまとめ、それを多くの人に知ってもらう各プロセスにおいてパソコンなりネットが代用できない部分はやはり人間の仕事であるということ。
2010年以降、出版、音楽などのコンテンツ流通は新時代を迎え、そこから出版社やレコード会社がやってきた「魅力あるコンテンツとしてのパッケージ化」の部分をアイデアを形にしたいけど良く分からない…という方のお手伝いだったり、各プロセスにおいて人間しか出来ない部分の仕事がとっても重要で、出来ればそこに自分も仕事として関わることが出来たらな…と思うのでした。