認知行動療法 その2(自動思考とスキーマー)
さて前回に続き、認知行動療法の重要なポイントとなる "自動思考" と "スキーマー" について説明して行きます。
普段あまり耳慣れない言葉かも知れませんが、そんなに難しいことではありません。ただし頭で理解できていても、実際に自分の自動思考を捉えるのは非常に難しくて、少し練習が必要です。
まず "自動思考" とはなんでしょうか?
これは字の通り、自分の中で自動的に考えていることで、人間は生活のなかで日々起こる様々な出来事(状況)に対して、色々な感情(怒り、悲しみ、喜び、など)を抱きます。しかしこの感情が湧き起こる前に実は、自動的に自分の中で状況に対する自分なりの思考が自動的に行われています。
例えば、親しい友人にメールをして、返信が帰ってこないとき(状況)に、自動思考として、「返信が来ないのは嫌われているからだ」と思うか、「きっと忙しくメールを見れていないのだろう」と思うかで、実際に湧いてくる感情が違ってきます。
前者の「嫌われているから」と言う自動思考からは、"不安"や"悲しみ"、"惨めさ"など悲観的な感情が湧き出ます。
しかし、後者の「忙しいから」と自動思考した場合は、"心配"(相手に対する)や、"諦め"(しゃーない)と言う、相手を気遣う感情や忙しいんじゃ仕方ないかなと言う、比較的平穏な感情になるでしょう。
何を言いたいかと言うと、"状況が感情を作っている訳ではない" と言うことです。
上記の例での状況は、"友人にメールしたが返信がまだ来ていない" と言う事実だけです。事実はこれ以上でもこれ以下でもないのですが、人間はこの状況に対して、事実だけで感情を抱く訳ではなく、状況と感情の間に、"自動思考" が介在します。
まったく根拠のない、自分の中で作り出した推測に基づき、「嫌われているのではないか」と考えたり、「怒っているのではないか」と思ったり、「忙しいのかな」と考えたりします。この考えに対する根拠・証拠はあまりないことがほとんどです。
ではなぜ人はこの様に考えてしまうのか?これは自分の中にある "スキーマー" と言うものに影響されています。
"スキーマー" とは、その人が生まれてから成長する中で培ってきた、"人生観"や""人間観"、"価値観"の様なもので、「こころのクセ」の様なものです。これは個人それぞれ自分の中にあり、今まで生きてきた中で、環境や体験を通じて形成されて来たもので、その人にとっては"確信的"であり、無意識にその"スキーマー"に基づき、"自動思考"を生み出しています。
この様に、 "スキーマー" や "自動思考" は自分にとってはごく当たり前のことで、自然に受け入れているものですので、普段意識せずに気づくことなく、色々な感情を抱いています。
中にはこの「こころのクセ」によって、物事をネガティブに捉えがちになってしまったり、些細な失敗でも絶望的な気持ちになってしまったりして、その繰り返しにより精神疾患になってしまうこともあります。
認知行動療法では、この自分の「こころのクセ」を改めて把握し、生活の中で起る様々な出来事に対して、その瞬間に自分がどの様な"自動思考"をしたのか?を捉えて"認知の偏りを修正する"ことで問題を解決して行きます。
冒頭に説明した通り、この "自動思考を捉える" と言うことが、思っている以上に難しいことです。これは普段無意識に考えていることですので、意識的に自分の自動思考を捉えることを習慣化していくことが重要になって来ます。
これは練習が必要です。次回この "自動思考を捉える" ための練習について説明して行きたいと思います。