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阿里巴巴(アリババ)その8(誠信通とは?)

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CEOである馬雲のプレゼンテーション能力が非常に優れていたこともあり、阿里巴巴は凄まじい速度で発展した。2001年にはそのユーザー数は100万を超えていた。ユーザーは中国各地の田舎の小企業にまで及んでいた。地方の小企業にとっては、やはり阿里巴巴のようなBtoBプラットホームなくして、海外企業との取引は難しかったためである。もっともユーザー数はこのように急速に拡大した阿里巴巴ではあったが、売上は「中国供応商」のサービスがメインで、その収益力はまだ十分ではなかった。

その収益力の低さを改善するため、馬雲は阿里巴巴の全ての会員の有料化を実現したかったようであるが、その道のりは簡単ではなかった。当時(そして今でも)、中国の主要ポータルサイトのサービスは、そのほとんどが無料である。ポータルサイトもメールボックスなどの有料化をしたかったようであるが、やはりユーザー減少を恐れてできなかったのだ。ちなみ、インターネットカフェからアクセスするネットユーザーが多い中国では、日本と比較してポータルサイトが提供する無料のWebメールを使っているユーザーが桁違いに多い。

話はそれるが、ポータルサイトでも有料化が行われているサービスもある。例えば、出会い系サービスである。出会い系サービスは、携帯電話課金、あるいはプリペイドカードによる課金が行われており、ユーザーは毎月10元程度の基本料金を払う仕組みとなっている。出会い系サービスが課金をしやすいのは、どこの国も同じということなのだろう。

話を戻すと、阿里巴巴の全ユーザー対する課金が難しいとなると、やはり新規会員は無料サービスによって引き付け、その引き寄せたユーザーに対して付加価値サービスを提供して、そこからお金を取るしかない。付加価値サービスとしては既にユーザーにコンサルサービスなどを提供する「中国供応商」があるが、これだけでは不十分である。「中国供応商」に続く第二の有料サービスとして開発されたのが、「誠信通」サービスである。

仮に、我々が日本人のバイヤーとして、阿里巴巴を使って中国の地方の小企業から商品を仕入れを行うとしよう。その時の心配ごとは何だろうか?もちろんキリなくあると思うのだが、その会社が本当に存在するか?あるいは存在するとして、我々は連絡を取る相手が本当にその会社で売買を行う権利がある従業員か?という2つの問題が自然に頭に浮かぶだろう。こういった容易の思いつくリスクを軽減するのが「誠信通」のサービスである。
「誠信通」の有料ユーザーは、自分の会社が本当に存在し、コンタクト先の人間が本当に会社を代表する(つまり商売をする権利がある)人間であることを阿里巴巴によって認証してもらえるのである。この認証を得ることにより、その小企業はバイヤーに対してかなりの信用力を保持することが可能になる。

また同じく「誠信通」の有料ユーザーは、取引先の過去の取引履歴及びその結果を閲覧することができる。いわゆるYahooオークションなどの取引評価と同じようなものだろう。これにより各ユーザーの信用力は更に増すことになる。

それ以外にも、例えば「誠信通」サービスのユーザーが増えてからは、「誠信通」サービスに加入していないユーザーは、メール及び伝言板の2つでしか相手に連絡を取れなくなってしまった。これにより「誠信通」サービスに加入していないユーザーの取引はかなり不便を強いられることになった。

しかし、阿里巴巴のBtoBプラットホームの便利さに慣れてしまった数多くのユーザーは阿里巴巴のサービスをいまさら止めることもできなかった。「誠信通」サービスはこうして大成功をみることになった。サービス開始後3年目の2005年には、有料サービスを使っているユーザは十数万人にまで増加した。

「誠信通」サービスは毎年2300元(約4万円)である。この金額はバイヤー、サプライヤー双方にとって1回の取引の利益で十分に回収が可能な金額である。このような顧客が安いと思うようなドル箱サービスを阿里巴巴はまたも獲得したわけである。

以下、続く!

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