阿里巴巴(アリババ)その10(淘宝網の登場)
こうした中、孫正義、馬雲は、阿里巴巴が運営するCtoCサイトしてのネットオークションを立ち上げた。淘宝網の登場である。
この淘宝網であるが、当初は易趣網がCtoCマーケットからBtoBマーケットへの進出を防ぐために阿里巴巴もCtoCサイトを立ち上げたようだ。最大の防御は攻撃である、とはよく言ったもので、攻め込まれる前に、相手をとりあえず攻めておいて、戦場を相手の領土にする、という戦法は、過去にも企業対企業の戦争においては良く使われていると思う。
かつて私が在籍したオラクルでは、Network Computerという製品を販売していた。いわゆるシンクライアントのことで、現在これだけSaaSという概念が普及していることを考えると、その発想は間違っていなかったと思う。しかし、実際に当時はNetwork Computerは売れなかった。また当時のNetwork Computerの提唱が、現在のSaaSのマーケットを切り開いた、とは思えない。思えるのは、Network Computerのオラクルへの最大の功績は、MSにNetPCというものを考えさせ、戦場をデータベースからシンクライアントへ移した、ことだ。
もしNetwork Computerが存在しなかったら、MSのNetPCの発表もなかっただろうし、となるとMSにとってのオラクル対策は当然データベース分野がメインとなる。つまり戦場がデータベースとなる。しかし、Network ComputerとNetPCの激突(と言われるほどのものはなかったと思うが)のおかげで、一時的にせよメインの戦場がシンクライアントの領域となり、MSのデータベース分野でのオラクル攻撃のタイミングが遅れた、のは確かだと思う。それが半年か1年か2年かは分からないが、その時間はオラクルにとっては非常に貴重なものだったと思う。
話がそれてしまったが、阿里巴巴がネットオークションサイトである淘宝網を立ち上げた目的は、当時のオラクルのNetwork Computerに非常に似ていた、と思う。しかし中国において予想外にネットオークションマーケットが立ち上がり、また阿里巴巴が運営する淘宝網も成長してしまったのである。
そもそも、中国においてネットオークションは当初は若い女性が主な顧客だった。顧客というのは、売り手、買い手ともにである。若い女性が小遣い稼ぎに、雑貨や化粧品などの売買をしていたのだが、これが予想外に広まってしまい、またマーケットも拡大して、一部の顧客は本来の仕事をを辞め、ネットオークションの売買を自分のメインの仕事としてしまうまでになってしまった。ある意味、デイトレーダーと似ている面があるのかもしれない、
淘宝網の取引は基本無料であった。繰り返しになるが、中国では個人相手のネットサイトは無料であることが非常に受ける。淘宝網はあっという間にシェアをあげ、そのユーザ数は600万まで達した。
以下、続く!