オルタナティブ・ブログ > 元ベンチャーキャピタリストが語る中国ビジネス&More! >

最新の中国ITビジネスを中心に、国内外の金融、モバイルなど幅広いテーマを論じます

年収に相当する歯科治療代とは?

»

かつて中国の薬売買のBtoBサイトへ投資を行ったことがある。製薬メーカーと病院の間を取り持つBtoBサイトであったが、結局投資後数年経っても事業は立ち上がらず、敢え無く撤退という憂き目を見たあまり思い出したくはない経験である。

実際に、”病院と薬”というのは、どこの国でも利権の温床なのであろう。当時、社長の説明を聞いていても、いつも南京市政府がどうだとか、江蘇省政府がああだとか、結局利権に絡んでいるとしか思えない話をしていた。今考えると、こういった案件への出資は、投資というよりは投機と呼ぶべきものなのかもしれない。

そもそも投資と投機の相違だって非常に不明瞭なものだし、ベンチャーキャピタルとして投機で儲けてもいいのか?という問題もある。この点は、各人みな違う意見を持っているようで、儲ければいい、という人と、投機で儲けても意味がない、という人がいて、これまたよく分からない。まあ自分が信じる道を進めばよいのだとは思う。

ところで薬の話題が出たのでちょっと改めて最近思ったことを書いてみたい。最近北京の知人から連絡があり、歯科の手術をするので治療費が68,000人民元(=日本円でだいたい100万円)かかるので、非常に痛いとのことであった。彼女は外資系の携帯コンテンツ会社で中国語-英語間の翻訳などをやっているようで、だいたい月収ベースで5,000元程度と以前聞いていたので、68,000元というとほぼ1年間の給与収入に相当するのだと思う。

彼女によると、歯科方面の保険に加入していなかったので、こういった事態が発生したのだそうだ。結局、今すぐに自分だけで68,000元は支払えないので、上司(上司は創業者で億万長者)にお金を借りて手術をする、とのことである。

中国の健康保険には以前から興味はあったが、あまり詳しいことを自分は知らない。一度、知人に聞いたことがあるが、サラリーマンは一応皆保険らしく本人1割負担、子供が病気の時は5割負担。専業主婦が病気になった場合には全額自己負担(つまり日本と異なり、専業主婦を優遇する、という措置が全くないのである。私見であるが、これは正しいと思う。)という話を言っていた。

彼女は、独身で自分が働いているので、基本会社が医療費の9割負担をしてくれるハズなのだと思うが、どもそうではないらしい。小さな外資系ベンチャー企業だと会社が9割負担という制度がないためなのか、それとも歯科の難しい手術なので、保険の適用外なのか、のどちらかだと思うが、多分後者のような気がする。

ただ、歯の治療くらいで年収相当分の治療代がかかるというのは、実際にはそうなのかもしれないが、ちょっと経済的に国家に対して大きな損失なのではないだろうか?よく中国で言われるのは、「外出するときには必ずパスポートを持参するように。もし持参してなくて、自分が意識不明で日本人だと証明できないと、万一の交通事故などの時に、医者が不払いを恐れて、治療を拒否することがある。」という発言である。どこまで本当かは分からないが、Web上には農民が(治療代を持っていないので)治療拒否される話がいくらでも載っているので、あながちウソでもないのかもしれない。

彼女自身も今の中国の健康保険の問題を認識しているようであるが、「問題があるのは分かっているけど、いかんともし難い」という諦めの態度である。北京のサラリーマンでこんな感じであるから、地方都市は言わずもがな、だと思う。前にも書いた思うが、国家による保険システムのようなソフトインフラの構築は本当に難しい。それに比べると、リニアモーターカーの建設や世界一の高さのビルを建築することは、如何に簡単なのであろうか?

Comment(0)