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阿里巴巴(アリババ)その11(ネットオークション成功の条件)

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買い手としてYahooオークションを何度か利用したことがある自分も売り手として参加をしたことはない。また中国の各種ネットサービスをなるべく利用しようとしている自分であるが、淘宝網を利用したことはまだない。そもそも中国国内に住所を持ってないしね。中国で意外というか、かなりの程度普及しているネットオークションであるが、インフラ設備はそこまで整っているものだろうか?

よく言われるのは、ハード的なインフラは資金を投入すれば急速に発展させられるが、ソフト的なインフラはそれなりの時間をかけないとなかなか普及しない、というポイントがある。例えばハードインフラの典型的なものに建物がある。上海の浦東の高層ビル群は過去10年内に建築されたものだが、あのようなハード的なインフラは資金さえあれば急速に発展させることが可能なのである。浦東空港と市内(といっても駅はかなりはずれに位置するが)を結ぶリニアモーターカーも然りである。ただし、リニアモーターカーの運用となると、これはソフト的な問題になってくる。例えば技術的に可能かどうか自分は知らないが、リニアモーターカーを5分間隔で運転する、となると、これはソフト面の充実がないと実現は不可能である。これには多大な時間と経験が必要になる。日本の東海道新幹線の運転間隔がまさしくこれにあたるのだろう。

単純に考えてみよう。もし我々が淘宝網で買い手として参加するとした場合、心配になる点を洗い出してみる。真っ先に考えるのが、お金を払って本当に商品が届くか?という点が心配になるかと思う。日本では(いわゆるテレビや雑誌の)通販は(代引きを含めて)後払いが主流であるが、ネットオークションは先払いが主流である。では中国で個人の売り手相手に先払いをするかとなると、これはちょっと無理がある。まず送金インフラを整備しないとなかなか中国においてネットオークションの成功はないと思える。

私はかつてはしばしば中国へ出張したが、一度も中国に住んだことはなく、一貫して日本在住であるが、中国のネットサービスを利用したことは何度かある。そのさいに利用した支払い方法は、自分が保有している中国のプリペイド携帯電話に課金する方法と、QQのプリペイドカードそのものを使って支払う方法の2通りであった。自分は中国の銀行カードを持っていないので、銀行を利用した課金方法は一度も経験したことはない。またクレジットカードも一度も使ったことはない。

どちらにせよ、個人相手の支払いにクレジットカードを使うのは無理があるし、銀行を使った方法も基本的には先払いになってしまう。この矛盾を解決する方法として阿里巴巴が提供を開始したサービスが支付宝である。

支付宝はある意味ではeBayのペイパルに非常に似ている。銀行振り込みやクレジットカードから離れて、ネットの世界で課金を完了することができる。ペイパルの場合には、メールアドレスとクレジットカードをリンクさせて、支払い時にはメールアドレスのみを相手に伝え、クレジッドカードは相手に伝わらないことによりユーザの心配を軽減している。
これに対して、支付宝は支付宝の番号とネットサービス登録した銀行口座をリンクすることにより、ネット上で容易に支払いが可能な仕組みを提供している。ただしこれではまだ先払いの問題を解決してはいない。先払いの問題を解決するために、支付宝ではさらにエスクローのような機能を付加している。買い手は売り手から実際に商品が届くまで、支払いを止めることができるのだ。一方の売り手にしてみれば、支付宝により買い手が確実に支払い代金を持っていることが確認できる。まさしく売り手、買い手にやさしいシステムである。

Baidu(百度)のQAコーナー(日本でいうところのYahoo知恵袋みたいなサービス)とかにも支付宝に関する質問などもよく掲載されており、その利便性が見て取れる。現金決済を求める売り手には詐欺が多い、とまで書いてある。残念ながら私は一度も支付宝を使ったことがないので、どのタイミングでエスクロー上にある買い手側のお金を売り手側に引き渡すかは分からない。やはり一度は使ってみないとダメだと思う。百聞は一見に如かずである。

支付宝の普及により、淘宝網(ネットオークション)が普及する最低限のインフラは整ったとみてよいだろう。

以下、続く!

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